介護のお役立ちコラム
少子高齢化によって空き家問題が深刻になってきています。人の手が行き届かなくなった建物には多くの危険が潜むばかりか、場合によっては犯罪の温床になる可能性もあります。今回は、放置された空き家の問題点のほか、解決に向けた自治体の方針、そしてちょっとしたアイデアで空き家を有効活用できる、個人での解決方法などに触れてみたいと思います。
日本では年々空き家数が増加傾向にある
空き家問題は、その家に住んでいた人の転居や死亡などによって空き家となり、長い間、人の手によって管理されない状態に置かれることによって起こります。また、所有者はいるものの、遠く離れた場所に住んでいるため日常的な管理が行き届かず、建物と敷地内が荒廃した場合も同様です。
総務省が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」によると、2018年時点で全国の空き家数は848万9,000戸にのぼります。このうち賃貸用住戸、売却用住戸、別荘などの二次的住戸を除いた348万7,000戸が、長期にわたる住人不在や取り壊し予定の"空き家"に該当し、この数字は調査を開始してから年々増え続けています。
空き家問題はなぜ起きるのか?
空き家が増加の一途をたどる第一の理由は少子高齢化です。住人の高齢化によって、病院での生活を余儀なくされたり、老人ホームなどへの住み替えによって住む人がいなくなったりします。老人ホームなどへの転居をきっかけに、うまく自宅を売却できればよいのですが、資産価値が乏しいために買い手が付かず、査定価格も二束三文にしかならないこともよくある話です。
子息が住めば解決できるのですが、すでに独立して別の地域で暮らしている子どもを呼び戻すのは現実的ではありません。子どもが同居している場合でも、その子どもが経済的に独立していないことも考えられ、家の管理や修繕が滞りなくできる保証はありません。
仮に子どもが引き継ぐ条件が整ったとしても相続税が発生します。高額の税金を納めてまで、住み慣れた町や仕事を離れてまで、不便な場所に戻りたいのか。そう考えると、易々と子どもも家を引き継ぐメリットは多くないことがわかります。
続いて、都心部でみられるマンションの建設ラッシュも将来的な空き家問題を引き起こすと考えられています。核家族化が進み、オフィス街のある都心部ヘ通いやすいという理由で大都市圏や隣接するベッドタウンでマンションが林立するようになりましたが、このまま少子高齢化が進むと、やがてマンションにも空室が目立つようになります。
また、都心部のマンションは投資目的で購入する人も多く、空室のまま長期間放置されることもありがちです。マンションの修繕は住人の管理費から捻出されるため、十分な管理費が集まらず、数少ない住人でその分を補填しなくてはならないケースも考えられます。
空き家が放置されると起こりうるトラブル
空き家が長期間放置されるとどのような問題が起こるのでしょうか。まずは老朽化にともなう家屋倒壊の危険性です。建物の倒壊によって、近隣住人にケガをさせたり所有物に瑕疵を与えてしまったりする恐れがあります。
家屋の老朽化は景観を損ねるばかりか、木造住宅では放火の対象になることも考えられます。人が住んでいないがゆえ誰でも建物に近寄りやすいもので、いざ火元となれば隣接する家屋にも大きな被害が出ることは言うに及びません。
荒廃した空き家を放置すると治安の悪化を招く可能性も否定できません。「割れ窓理論(※)」によって、そのエリア一体の雰囲気が悪くなり犯罪の温床となる可能性も十分に考えられます。地域に住まう人は日夜不安に駆られながら生活しなくてはいけなくなるのです。
※割れ窓理論:アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが提唱した理論で、1枚の割られた窓ガラスをそのまま放置しておくと、さらに割られるガラスが増え、やがて町全体に荒廃が広がるという規則性を指摘したもの。
空き家問題解決に向けた自治体の取り組み
空き家問題解決に向けて、2014年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が国会で成立されました。これにより、従来は所有者の許可なくして敷地内に立ち入ることができませんでしたが、「特定空家」に指定されることで、調査などの目的で行政が敷地や建物内に入ることが認められるようになりました。
これにより自治体は、空き家が適切に管理されていないと判断した場合、その所有者に対して行政指導(助言・指導・勧告・命令)できることになりました。度重なる指導や勧告が無視され、命令にも従わなかった場合は、自治体の判断により建物の撤去や解体といった最終手段が取られることもあります。所有者不明物件の場合も同様の手段が取られます。
埼玉県所沢市を皮切りに、現在は全国の自治体で空き家条例が制定されるようになりました。基本的には助言・指導・勧告・命令を明文化したものですが、従わなかった場合にさまざまな罰則も設けています。対象となる物件は自治体の広報やホームページなどで開示されます。
シェアハウスや民泊への期待
持ち家がなかなか売却できない。子どもに託すにも相続税がかかる......。そのような場合、大胆にリフォームを施してシェアハウスや民泊といったビジネスに参入するのも一つの解決方法です。
新型コロナウイルスの感染拡大から、海外からも含め観光客が激減している日本ですが、収束後を見据え今から民泊事業に着手するという選択肢もあります。同様にシェアハウス仕様に改修して住人を募集し、より長期的な収入増を目指すのも手です。たとえ過疎化している地方部でも、近くに観光スポットや大学、工場など人が集まる場所がある場合、宿泊や住まいに対する需要は少なからずあるはずです。
その地域を離れる住人が増えると、交通網の縮小やスーパー、銀行、病院といったインフラが撤退するようになります。過疎化に拍車がかかると、ますます住みづらい場所となり地域一帯の活力が失われてしまいます。民泊やシェアハウスの経営にはノウハウが必要ですが、民間サービスやNPOなどの力を借りながら、その地域を訪れ、地域に住まう人を少しでも増やすことができれば、愛着ある地域に恩返しができるのです。
シニア世代を対象とした制度を活用する
民泊やシェアハウスが難しい場合は、シンプルに第三者へ転貸することも視野に入れておきたいところ。一般社団法人移住・住みかえ支援機構が展開する「マイホーム借上げ制度」では、一軒家や分譲マンションといった持ち家を保有する50歳以上の人を対象に、同機構がその不動産を借り上げ転貸します。
一般的な不動産業者を通じて貸し出す条件が整わない人や、不動産の知識に疎い人でも安心してマイホームを託すことができます。また、不動産を担保に融資が受けられる「リバースモーゲージ」では、所有者の死後、不動産は業者の手に渡るため適切に売買などがなされることになります。これらシニア世代を対象とした不動産サービスをうまく活用したいところです。
【関連記事】
老人ホームへの費用に充てられる「マイホーム借上げ制度」とは?
自宅を残しながら老人ホーム費用を借りられる「リバースモーゲージ」とは?
終わりに
社会的な課題となっている空き家問題ですが、まずは近隣の人たちに迷惑が及ばないよう、住まう本人たちはもちろん、その子どもたちも含めて今後どのように住まいを維持、管理していくのか、早急に考えなければなりません。愛着ある住まいであるがゆえ、誰もが納得のいく答えで我が家の行く末を決めてあげてください。
こちらもオススメ!
不動産の売却や購入、資産活用をサポートする情報サイト「HOME4U(ホームフォーユー)」
【関連記事】
入居者同士で支え合いながら暮らせる、高齢者向けシェアハウスとは?|老人ホームのコラム
医療・介護などで問題が噴出する「2025年問題」に迫る|介護のコラム
コロナ禍でも
面会できる施設特集
老人ホーム・高齢者住宅
運営事業者の方へ
老人ホーム検索サイト「さがしっくす」では、事業者様のご入居募集のニーズに合わせて、2つのご掲載プランからお選びいただけます。