介護のお役立ちコラム
糖尿病のインスリン注射や人工透析など、定期的に医療機関を受診している高齢者が老人ホームへの入居を希望する場合、必要な医療行為への対応が可能かどうかを事前に確認する必要があります。たとえば「中心静脈栄養」もその一つです。
今回は、中心静脈栄養について詳しく知りたい方に向けて、具体的な処置の内容から懸念されるリスク、施設探しの注意点などを解説します。
【監修者】
木村 眞樹子医師
医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。
中心静脈栄養とは?
中心静脈栄養(Intravenous Hyperalimentation/IVH)とは、胸の周囲、鎖骨の下あたりにある中心静脈にカテーテルを刺し、栄養輸液を注入して栄養摂取する方法を指します。嚥下機能の低下などで食事を口から摂取できない方や体力低下が見られる重症の患者さまなどに施す処置です。
口以外での高齢者の栄養補給と言えば、胃ろうや腸ろう、経鼻胃管といった方法がありますが、中心静脈栄養は消化器に負担をかけないため、比較的安全と言われています。医師は胃ろうなどよりも中心静脈栄養を選択するケースが多いようです。
かつては入院による処置や経過観察が必要でしたが、現在では医療の進歩によってカテーテルさえ付けてしまえば、自宅にいながら栄養摂取することが可能となっています。
中心静脈栄養を必要とする代表的な病気
中心静脈栄養の処置が必要となった要因を見ると、筋力の低下などによる嚥下障害以外では以下のような病気が多くなっています。
- 腸閉塞
- 慢性腎不全
- 消化器がん
- 脳血管障害
- パーキンソン病
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS) など
感染症や血栓などのリスクに注意
中心静脈栄養の処置には、以下のような様々なリスクも伴います。
- ・カテーテルの挿入口(CVポート)からの感染症
- ・心臓に近い場所に針を刺すことに起因する空気塞栓などの合併症
- ・血液の逆流による血栓
また、栄養度の高い輸液を注入するため、容量を誤ると栄養過多になってしまい、血糖値の調節が難しくなることも考えられます。
入院中や施設に入居している高齢者の場合は、担当の医師や看護師がカテーテルの挿入・除去・輸液の交換を行います。自宅療養している人の場合は、輸液の交換を本人もしくは家族が行わなくてはなりません。その際、感染症などのリスクを少しでも軽減させるために、器材に触れる前の手洗いと消毒の励行が重要です。
受け入れ可能な施設を確認しておくことが大事
中心静脈栄養の高齢者が入居可能な施設は、事業者のホームページやポータルサイトなどで確認できます。それでも不明な場合は、施設や事業者に電話で直接確認してみても良いでしょう。医療機関との提携を強みにしていたり、24時間体制で医師または看護師が常駐したりしている施設だとより安心です。
なお、「さがしっくす」でも中心静脈栄養の受け入れが可能な施設を検索することが可能です。
中心静脈栄養の高齢者の受け入れが規定上可能とされていても、本人の健康状態を理由に断られるケースもあります。認知症などで本人が勝手にカテーテルを引き抜いてしまうような場合も受け入れNGの可能性が高くなるでしょう。
老人ホームの多い都心部には比較的多く存在しますが、地方部になるにつれて対応できる施設数は少なくなるため、早めに備えておくのがおすすめです。
老人ホームの多い都心部には比較的多く存在しますが、地方部になるにつれその数が少なくなってくるのが現状です。
理想の施設を見つけるために
中心静脈栄養の高齢者の受け入れが可能な施設は、ある程度限られています。しかし、医療と介護の連携は国の課題であり、今後の規制緩和などで受け皿が広がる可能性も考えられるでしょう。介護支援専門員(ケアマネジャー)などにも相談しながら、条件に合った施設を粘り強く探すことが大切です。
■参考文献
経管栄養と中心静脈栄養:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
在宅中心静脈栄養法(HPN)の手引き | 株式会社大塚製薬工場
静脈栄養の適応と管理 _ 健康長寿ネット
■参考記事
希望に合った有料老人ホーム選びを~老人ホーム・高齢者向け住宅選び方セミナーレポート
コロナ禍でも面会ができる施設特集はこちら
コロナ禍でも
面会できる施設特集
老人ホーム・高齢者住宅
運営事業者の方へ
老人ホーム検索サイト「さがしっくす」では、事業者様のご入居募集のニーズに合わせて、2つのご掲載プランからお選びいただけます。