介護のお役立ちコラム
老人ホームに入居する場合、施設側と入居契約を取り交わす前にしっかりと内容をチェックしておくべきなのが「重要事項説明書(略称:重説)」です。
特別養護老人ホームなどの公的施設か、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの民間施設かに関係なく、重要事項説明書は入居契約を希望する利用者に向けて必ず作成され、施設職員による説明も行われます。
実際に重要事項説明書をチェックする際、「重要事項説明書とは何か」を事前にきちんと理解しておくと、施設職員からの説明がよりしっかりと頭に入り、内容の確認もスムーズに行えるでしょう。
そこで今回は、重要事項説明書の記載内容や契約書との違い、見るべきポイントについて詳しく解説します。
重要事項説明書とは
重要事項説明書とは、何らかの売買契約を結ぶにあたって、契約上の重要な事項を売り手側が買い手側に説明するための書類のことです。
売り手と買い手が契約を締結する場合、その内容を証明するものとして「契約書」を取り交わします。しかし、契約書に書かれている内容は法律の専門用語が多用されており文字量も多いため、慣れていない人が正確に読み取るのは大変です。
そこで作成されるのが重要事項説明書です。
重要事項説明書には、契約書の内容における大事なポイント、チェックすべき点が一般の人でもわかるようにまとめられています。基本的に文章は平易に書かれているので、決して難しい内容ではありません。
不動産の売買や保険サービスなど、重要事項説明書は契約を伴う取引の場で広く作成されています。そのなかには、老人ホームの入居契約も含まれています。つまり、老人ホーム側が作成し、説明を行う重要事項説明書には、入居希望者が契約において確認すべき重要なポイントがわかりやすくまとめられているというわけです。
老人ホームの入居契約においては、利用者が契約内容をきちんと理解できるように、施設側による重要事項説明書の作成とその説明が法律により義務付けられています。
実際の書面を見てみたい方は、下記の厚生労働省のページにひな形が掲載されているので、チェックしてみると良いでしょう。
- ▼参考資料はコチラ
- 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について
重要事項説明書で見るべきポイント
重要事項説明書に記載されている内容・項目は、どの老人ホームにおいても基本的に同じです。各項目で確認すべきポイントを事前に知っておけば、実際に契約する際、内容をチェックしやすいでしょう。
1.事業主体概要
老人ホームの運営元に関する情報が書かれています。まずは、内容が最新か確かめるために、記入年月日が1年以内になっているかどうかを見ましょう。
こちらには事業所名や住所、ホームページのURLなどの基本情報が記されていますが、なかでも注目すべきなのは、「老人ホームの運営以外に、どのような事業を行っているのか」という点です。
ほかに高齢者福祉関連の事業や病院運営などを行っている事業者であれば、介護・医療面での連携による質の高いサービスが期待できるかもしれません。入居生活の安心・安全につながる情報があるかチェックしましょう。
2.有料老人ホーム事業の概要
運営会社ではなく、施設そのものの情報です。入居先となる老人ホームの名称や住所、交通アクセス、連絡先、施設の種類、管理者などが書かれています。事前に集めていた情報と相違がないか確かめましょう。
建物の竣工日と施設の開設日も書かれているので、築何年の建物になるのか、事業開始からどのくらいの年数になるのか確認することも可能です。
また、類型の欄には、「住宅型」や「介護付き」などの種類が記載されます。
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3.建物概要
老人ホームがある土地の敷地面積、所有関係、館内の構造などに関する項目です。居室に関しては個室・相部屋の数と部屋の面積が記載され、共用施設についてはトイレの数、食堂の有無、利用者とその家族が使えるキッチン設備の有無などが書かれています。また、居室区分が「介護居室」となっていれば、要介護者向けの施設だと判断可能です。
さらにこちらの項目では、エレベーターと消防用設備の現状についてチェックできます。エレベーターについては、車いすやストレッチャーでも利用できるのかは要チェックです。消防用設備に関しては、自動火災報知設備や火災通報設備、スプリンクラーなどの有無が記載されています。
4.サービスの内容
施設内で提供されている各種サービスに関する情報が一通り紹介されています。入浴・排泄・食事・洗濯・掃除・健康管理・安否確認・生活相談などのサービスについて、施設で行っているのか、外部の事業者に委託しているのかが見られます。
さらに、協力医療機関の名前、夜間看護や看取りの有無、居室を変えるときに発生する追加費用の有無なども書かれているので確かめておきましょう。
ほか、「その他」の欄には、フィットネスルーム、アトリエ、テラス、茶室など独自の設備が記載されることもあります。
5.職員体制
老人ホームの運営に関わる職員数とその内訳が書かれています。管理者、生活相談員、直接処遇職員(介護職員、看護職員)、機能訓練指導員、計画作成担当者、栄養士、調理師、事務員などの職員数が確認可能です。
また、資格を保有している介護職員や機能訓練指導員の数、夜勤を行う看護・介護職員の数、昨年の採用人数や退職者数などもチェックしておきましょう。
6.利用料金
入居時に支払う費用、および入居後に毎月支払っていく利用料金に関する項目です。
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅のような民間施設の場合、居住の権利形態(利用権方式、建物賃貸借方式、終身建物賃貸借方式)や利用料金の支払い方式・料金プランなども書かれています。入居一時金についても、具体的な金額が書かれているので要チェックです。
利用料金については、算定根拠として費用の内訳も書かれています。お金のことは入居後にトラブルを生みやすいので、疑問点がある場合は、遠慮なく施設の職員に質問しましょう。
とくに、入居一時金を支払う場合は注意が必要です。償却前に退去する場合や、償却前に施設が倒産した場合の返金に関する取り決め内容は、重要事項説明書のなかでも最重要のチェックポイントと言えます。
7.入居者の状況
老人ホームに入居している利用者の人数、性別、年齢、入居期間、要介護度などを確認できます。
この項目ではとくに、前年度における退去者の状況を確認しておきましょう。利用者が退去するのは亡くなった場合に加えて、ほかの施設への転居や長期入院を理由とする場合も含まれています。生前の退去者がいる場合、重要事項説明書にはその退去理由も書かれているので、内容を確かめておきましょう。
8.苦情・事故等に関する体制
入居者の相談窓口の名称や電話番号、対応時間帯などが記されています。入居中に起こった事故に備えての保険加入の有無、事故予防への取り組み状況なども書かれています。
9.入居希望者への事前の情報開示
施設の管理規定や会計情報が書かれた財務諸表が公開されているのかどうかを確認できます。情報開示されている内容が多ければ、それだけオープンな施設運営を行っていると言えます。
10.その他
こちらの項目では、住宅型有料老人ホームなど自立もしくはそれに近い状態の方が入居できる施設の場合、入居後に要介護状態となったとき、介護体制が整った提携ホームに住み替えができるかどうかが書かれています。該当する場合はチェックしておきましょう。
別添1.事業主体が当該都道府県、指定都市、中核市内で実施するほかの介護サービス
老人ホームの運営事業者が、同じ自治体内でほかの介護サービス事業を行っているかどうかをチェックできます。
別添2.有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅が提供するサービスの一覧表
入居先が有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の場合、その施設が提供しているサービスが一覧で記載されています。
有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅は、施設によってサービス内容の違いが大きいので、入居後に受けたいサービスがある場合は必ずチェックしておきましょう。
重要事項説明書の内容は時間をかけて確認を
重要事項説明書は老人ホームの種類に関係なく、施設側が用意することを厚生労働省の管轄下で義務付けられています。しかしチェックすべき項目が多く、ボリュームもあるため、瞬時にすべての内容をチェックすることは難しいでしょう。
重要事項説明書の内容を確認する場合、焦る必要はありません。十分に内容を理解せず、不安を抱えたまま入居することは、のちのち施設側とのトラブルに発展する恐れがあるためです。
項目ごとの意味を理解してじっくりと目を通し、不明点や疑問点があれば、施設の職員に質問しましょう。
また、さがしっくす入居相談室でも相談員が重要事項説明書の見方を説明します。さらに詳しい内容が知りたい方はプロに相談してみましょう。
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