介護のお役立ちコラム
高齢者と一緒に暮らしていない人でも、「老人ホーム」は聞き慣れた言葉であると思います。しかし一口に「老人ホーム」と言っても、運営する母体や提供される介護サービス、かかる費用や入居の条件などによってその種類は千差万別です。
今回、高齢者福祉施設にご家族を預けている人100人を対象にアンケートを実施しました。その結果、実に半数以上を占めた「特別養護老人ホーム」と「有料老人ホーム」について、両施設の特徴、そしてそれぞれのメリット、デメリットについて入居者家族の声を交えながら紹介したいと思います。
「特別養護老人ホーム」と「有料老人ホーム」の違いとは?
特別養護老人ホーム(以下特養)は、その多くが社会福祉法人や医療法人、自治体など公的な機関によって運営されています。現在は、原則「要介護度3」以上でないと入居が認められず、重度の認知症や寝たきりなど比較的症状の重い高齢者で構成されているのが特徴です。
特養は公的な機関によって運営されていること、日常生活を送る上で最も基本となる介護サービスの提供に重きを置いているため、比較的費用が安く、入居一時金なども発生しません。
そのため入居希望者が殺到するケースが多く、特に都市部では入居希望の待機者が数百人いるなんてこともめずらしくありません。また「介護サービス」という考え方が提唱される以前、介護が「措置制度」だった時代から存在する施設も多数あるため、まるで病院の入院病棟のような大人数部屋で生活を送る施設もいまだに存在します。
◎特別養護老人ホームに入るには?「入居条件」と「入居待ちの間の過ごし方」
一方で、有料老人ホームは株式会社など一般の企業によって運営されています。「健康型」「住宅型」「介護付き」の3タイプがあり、介護付きの場合、特養と同じように24時間体制で介護士による介護サービスが受けられるため大きな安心感があります。住宅型は、介護士は常駐していないものの、外部の介護サービスを受け入れることが可能です。健康型は介護サービスを受けることを想定した施設ではないため、要介護に認定されると退去を命じられる可能性があります。
費用については、特養より高額になることがほとんどで、入居一時金が発生するケースも多いのです。しかし高額になるゆえ、食事やレクリエーション、建物内の設備に注力しているホームも多く、介護サービスを受けながら安心してゆとりのある生活を送りたいという高齢者にとって人気の高い施設でもあるのです。
それでは特養と有料老人ホームに家族を入居させた方々に、それぞれ施設探しで苦労した点、実際に入居して感じたことなどを聞いてみました。
特養の入居家族に聞いた満足した点と不満な点
●「居室の清掃が毎日行ってもらえなかった。また介護スタッフの数が少ないためか、一人一人の入居者に対して目が行き届かないことも多いと感じ不満に感じました。」(女性/53歳/神奈川県)
●「新しい施設であったので、外観も内装設備もきれいでした。徘徊センサーや暗証番号式のエレベーターなどの設備がありセキュリテイー面で安心できました。その反面、介護士は経験の浅そうな若い方が多く、家族の質問に速やかに答えられないことがあり、少し不安を覚えました」(男性/61歳/兵庫県)
●「特養で発生する料金は、入居者や同居者の収入によって段階的に異なります。まずは施設や市役所に実際の費用を確認したほうがよいでしょう。独居者の場合には、その人の年金収入で賄える範囲に設定されているので、やはり費用面から特養を選んで正解だったと思います」(男性/68歳/大阪府)
●「祖父が長期にわたり入居していたのですが、入居が長くなるほど手厚い介護が必要なるので、結局は費用もかさんできます。オムツ代やおやつ代など、細かな費用でも積もれば高額になります。それでもしっかりと看取りケアをしてくれたので、最期まで苦しまずに過ごすことができたと思います」(女性/41歳/北海道)
特養の場合、費用面でお金がかからないと油断していても、日用品や雑費など細かな経費がかさみ、結局は想定外の出費が生まれることがわかりました。また基本的に病気や家族の都合(転勤に伴う引っ越しなど)など、よほどの理由がないかぎり転居はNGであり、仮に認められたとしても、転出先ですぐに受け入れ可能な施設が見つかるとは限りません。
また要介護3以上であり、介護保険が適用されることから空きがでたら、施設を見学せずに入居した結果、介護士の人数と質に不満を抱える人もいらっしゃいました。
有料老人ホーム入居家族に聞いた、満足した点と不満な点
「スタッフの質は本当に大切だと思います。私は何度か見学をしているときに、ほかの入居者家族に会うことがあったので、彼らにどういうスタッフが働いているのかを聞き、とても親切であることを知ったので安心してその老人ホームに決めました」(女性/39歳/北海道)
「スタッフの人員不足からか常に祖父の対応をしてもらえなかったのが不満でした。月に数回、私も施設へ赴きましたが、人手が回らず私たちも祖父の世話をすることがありました。慢性的な介護士不足はどこの施設でも課題だと思います」(男性/45歳/和歌山県)
「食事がイマイチで祖母も不満をもらしていました。月30万近くする施設だったため食事はよいはずだと思っていましたが、そこは料金が反映されておらずがっかりしました。逆に満足した点は設備面で、週3回、車椅子のまま風呂に入ることができたことです。きれい好きな祖母なので喜んでいます」(女性/42歳/東京都)
「可能であればショートステイ(1日体験入居)など、実際に宿泊させてもらえる施設を選ぶと、家族と施設との相性もわかるのでよいと思います」(女性/43歳/静岡県)
有料老人ホームの場合、比較的選択肢が多いことからも、現場で働く介護士などそのホームの雰囲気を見学会などで確認するようにしたいところです。また、食事の質について指摘する意見が多く見られました。食事については、入居者の好み、出身地による味つけの嗜好や、本人の健康状態によって摂取できる栄養素やカロリーも異なるため、個人の希望ばかりを押し通すのは難しいところですが、塩分は控えめでもダシでうまみを補うなど調理への工夫は感じ取ることはできると思います。見学会で試食を用意している施設もあるため参考にするとよいでしょう。
またサービス付き高齢者向け住宅やシニア向け分譲マンションなどに入居している方は、概ね満足度が高い結果となっていました。
食事と同様、好みが分かれやすいのがレクリエーションで、これまでにおこなった実績は館内の掲示物(月別の予定表やイベント時の写真)や家族向けのお便りなどですぐに確認できると思います。検討している施設にどのようなレクリエーションがあるのか事前に家族と話し合い、判断材料にしたいところです。
終わりに
実際に家族を施設に入居させるにあたり、本人の健康状態や要介護度、支払える費用や自宅からの距離など勘案しなければいけないことはたくさんあります。また施設側が定めた入居条件もあるため、一概に本人や家族の希望がすべて受け入れられるとは限りません。
しかし、どの施設にも特徴そしてメリット・デメリットはあります。経営者の福祉に対する理念や働くスタッフの雰囲気など、パンフレットやインターネットからの情報だけでは伝わらない魅力があるはずです。入居者本人ともよく話し合い、自分たちの価値観やライフスタイルに合った老人ホームを見つけられるよう、積極的に情報収集をしていきたいものです。
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