介護のお役立ちコラム
介護や老後に対する不安は様々なものがあります。その一番大きなものは、やはり「お金」ではないでしょうか?
一体どのくらいの予算があれば、老後を安心して暮らしていけるのか?
老人ホームなどの施設に入る際の毎月の費用は?
そんな気になる「老人ホームとお金」の悩みを、「失敗しない老人ホームの選び方」にも登場いただいき「高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本」の著者でもある介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子(おおた さえこ)さんにお聞きしました。
太田 差惠子(おおた さえこ) 20年以上にわたる取材活動より得た豊富な事例を基に、「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」等の視点で新聞、テレビなどのメディアを通して情報を発信する。企業、組合、行政での講演実績も多数。ファイナンシャルプランナーの資格も持つ。一方、1996年、親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げ、2005年5月法人化した。現理事長。2012年3月立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修士課程修了(社会デザイン学修士)。 ●主な著書 「親の介護で自滅しない選択」(日本経済新聞出版社)/「親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと」「高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本」(共に翔泳社)/「マンガで知る! 初めての介護」(文、監修:集英社)/「老親介護とお金」(アスキー新書)/「遠距離介護」(岩波書店)など |
まずは資金をシビアに確認すること
--老後の資金、特に介護や施設にどのくらいの費用がかかるのか?という点は、誰もが気になる問題だと思っております。今回は「老人ホームとお金」についてお聞きしたいと思っています。
太田差惠子さん(以下、敬称略)「お悩みの方が多いですが、最初に必ず行っていただきたいのが『資金の確認』です。自身にしろ、親御さんにしろ預貯金がいくらあるのか?月々の収入はどのくらいになるのか?これをしっかりと把握することです」
--多くの方がしっかりと確認しているかと思います。
太田「いいえ、様々なケースを考慮する必要があり、多くの人が"現時点"での状況だけを考えがちなのです」
--"現時点"とはどういうことでしょうか?
太田「例えば、ご両親がいて、父親が亡くなった後、母親には施設に入ってもらおうと考えているとします。男性が先に亡くなるケースが多く、その場合、その後、残された母親の受給できる遺族年金は、思いのほか少ないケースもあります」
--確かに施設に入る際に、ご両親が顕在であれば、2人分の受給額で検討を始めてしまいますね。
太田「シビアな話ではありますが、どちらかが先立ってしまった際に毎月の収入はいくらになるのか?というケースも考慮しておく必要があります。1人になったら収入はどう変化するのか。遺族年金はどのくらい貰うことができるのか?ということを予め調べておくことは必要です。最初の計算・計画から大きくずれてしまうようなケースも珍しくありません」
--せっかくの安心が根底から崩れてしまいますね。
太田「こんな方がおられました。公務員だったシングルの女性です。60歳で定年され、90歳までの30年計画で資金計画をして有料老人ホームに入居。しかし、90歳を過ぎてもお元気で、資金繰りが上手く行かなくなり、入居していた施設を退去しなくてはいけなくなりました。当時に30年で計画を立てていたのは、とても計画性のある方だと思います。さらに長生きすることは本来は良いことなのですが、こういう結果が生まれることもあるのです」
「いくらかかるか?」ではなく「いくらかけられるか?」
--様々な想定をした収入を把握した後は、どのようなことを考えるとよいでしょうか?
太田「人生100年時代です。例えば、65歳でしたら35年、いや40年の計画を立てる必要があります。預貯金が1000万でしたら、40で割ると年で25万円になります。つまりこの金額が老後の収入の他に使えるお金になるのです」
--年で25万円ですと、月で約2万円ですね......。
太田「老人ホームに入居することで、元気がなくなってしまうケースもありますが、すごく元気になり長生きされるケースも多くあるのです。これからさらに平均寿命が伸びることを考えると、105歳までの計算をしておくのが良いと思います」
<厚生労働省「日本人の簡易生命表の概況」より作成>
--預貯金と月額の収入でおおよその資金の状況がわかります。
太田「公的年金、個人年金の他、働いている方なら給与収入なども計算しましょう。また不動産やローンなども細かく計算にしておくことが必要です。月額の収入だけで老人ホームの毎月の費用をまかないながら、預貯金は予備費として残しておくなど考える必要があります。"いくらかかるか?"というより"いくらかけることが出来るか?"という現実的な判断が必要です」
太田さんからのアドバイス①
- 年金・給与・不動産などの資産を把握する
- 預貯金を把握する
- 夫に先立たれる場合などあらゆる想定をする
老人ホームの費用の仕組みを知る
--まず様々な想定をして、計画を立てる。その後は、老人ホームを選ぶことになります。
太田「その通りです。ご自身や親御さんの収入を把握したら、次に老人ホームにかかる費用の仕組みを知る必要があります」
--入居一時金や月額の利用料など高齢者福祉施設の種類、自治体、運営母体など費用は各施設によって一様ではありません。
太田「上記のような表はあくまで目安で、逆に誤解を生むこともあります。特養、老健、療養病床など介護保険施設では、入居一時金がなく、月額の費用のみとなります」
--しかし、当初想定していた費用より高くなったという例もあとを絶ちません。
太田「基本的な内訳は、居住費と食費に加え、施設のサービス費用、日常の生活費になります。医療費や日用雑貨や理美容代は固定ではありませんので、その月ごとに変動します。住宅型の施設だと、介護費は別途かかるケースもありますし、オプション料金がかさんでいくケースもあります」
可能な限り親の収入内で納まるように考えるのが鉄則
--収入と支出を計算してマイナスになる場合は、お子さんが支援する場合がほとんどですね。
太田「いいえ、支援するかどうかは、慎重に考えてください。あくまで親の人生です」
--そういうケースが多いような気がするのですが......。
太田「子が親を支援するのが普通だと思っていると非常に危険です。それこそ計画が崩れてしまう例を多く見てきました。思い返してください。いまは人生100年時代なのです。70歳の親が施設に入るタイミングであなたは何歳ですか?40歳だとして、30年間施設に入っていると、あなたが施設に入るタイミングと重なってしまうのです」
--とは言え、「国民年金だけじゃ施設に入れないかも......」と考える方もいます。
太田「元々、介護保険施設は弱者救済の意味合いもある施設ですので、所得に応じた軽減制度があります。ご入居される方の所得等に応じて、軽減されます。国民年金だけでも特養であれば入居は可能です。逆にお金が限られている場合は、選択肢が少なくなる分、悩みは少なくなるかもしれません」
太田さんからのアドバイス②
- 老人ホームの費用の仕組みを知る
- 親の資金だけでまかなえるように考える
- 軽減制度を利用する
有料老人ホームのメリット・デメリット
--多少、予算に余裕があるほど、その分だけ選択肢も増えてきます。
太田「住宅型有料老人ホームや介護付き有料老人ホームでも、月々10万円程度から非常に高額な老人ホームまで様々です。運営母体によって、施設の考え方やサービスも様々です。基本料金にどこまでサービスが含まれているか、の確認が必要です」
--重要事項説明書等の確認が必須ということですね。
太田「例えば、お風呂が大好きだったお母さんが週に2回しかお風呂に入れない。3度目からは別途費用がかかる。通院介助にいくらかかるのか?オムツ代は一回いくらなのか?その点をしっかりと確認していただきたいですね」
--国民相談センターでは「契約・解約」のときの相談がもっとも多くなっています。オプション料金の確認はしっかりしておきたいですね。
太田「もう1点忘れないでいてほしいのは、クーリングオフ制度です。老人福祉法で90日以内の退去や死亡した場合は、入居一時金から実際に居住した日数と原状回復費を除いた金額が戻ってきます。必ず、契約前に確認してください」
太田さんからのアドバイス③
- 重要事項説明書を確認する
- クーリングオフ制度を忘れない
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