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「9060問題」へ移行!? 経済的困窮で親子共倒れとなる「8050問題」について|介護のコラム

「9060問題」へ移行!? 経済的困窮で親子共倒れとなる「8050問題」について|介護のコラム

更新日:2020.04.15

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社会との接触を断ち、仕事もせず自分の部屋から一歩も出ない、いわゆる"ひきこもり"の若者が増えていることは周知のとおりです。ところが、2019年3月29日に内閣府が発表した「平成30年度調査」によれば、40~64歳のひきこもりが全国に61万3000人いると推計されたのです。

これは中高年を対象に行われた初めての調査。浮き彫りになったのは、15~39歳の推計54万1000人を上回って、ひきこもりが高齢化・長期化していることです。

では、その人たちの生活は誰が支えているのでしょう......。今回は、中高年ひきこもりとその親世代の高齢世帯において課題視されている「8050問題」というキーワードとともに、ひきこもりという社会問題について触れます。

終わりの見えない扶養が続く「8050問題」

「8050問題」とは、「80代」の親が「50代」の子どもと同居して経済的支援する状態をなぞらえた中高年ひきこもりを抱える世帯を象徴した言葉。コミュニティ・ソーシャルワーカーとして同現象に触れてきた大阪府豊中市社会福祉協議会の勝部麗子氏が名づけ親です。

子どもは仕事がなく収入もないため、親の年金が一家の主たる収入源になります。これまでなら、中高年が80代の高齢期を迎えるころには、仕事はすでにリタイアして年金を収入源とした生活を送り、子どもや孫に支えられながら余生を送るのが一般的だったでしょう。ところが8050問題を抱える家族の場合、定職に就かない子どもをいつまでも親が扶養しなくてはならないのです。

世の中、資産を多く抱えている裕福な家庭ばかりではありません。わずかな年金だけで老夫婦、そして子どもの生活費を賄っていくには限界があります。質素な生活を心がけていても、高齢になるほど医療や介護での支出も多くなるため、家計が破綻するのはもはや時間の問題なのです。

ひきこもりを放置し続けた結果、問題はより深刻に

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8050問題の原因は、1980~1990年代にかけて顕在化した若者の"ひきこもり"を放置したことにあると多くの専門家は指摘しています。前出の勝部麗子氏いわく「高度経済成長期に働いて年金がある親を、バブル崩壊のあおりを受けた無職の子が頼ってひきこもる。この30年間で生まれた、平成の時代を象徴するかのような問題だ」と(産経新聞2019年5月13日版より)。

つまり、昭和末期から平成黎明期にかけて当時10~20代だった若者が数十年間もひきこもり生活を続け、50代を迎えてしまったことになります。親が現役世代ならば収入もある程度は見込めるため、ひきこもりの子どもを養っていくのはそう難しくはないでしょう。しかし定年を迎え、経済的にも体力的にも衰えた状態で、昔と同じような生活レベルを子どもに提供し続けていくのは、どう考えても現実的ではありません。

子どもからしても、「(自分が)働かなくても生活していける」という現実を一度味わってしまったため、社会に出る必要性を理解し、働くことへのモチベーションをもつことはそう簡単ではありません。一緒に生活していると自分の両親が衰えていく姿には気づきにくいもので、何の危機感も感じず、この生活が未来永劫続いていくという幻想から逃れることができなくなります。

8050問題が起こる、その背景とは

8050問題の最たる原因であるひきこもりがなぜ増えてしまったのか考えてみます。

中高年の場合、もっともありがちなケースは、仕事を失ったことを機に引きこもりになるパターンです。2000年以降、非正規雇用や派遣社員が多くなり、急な雇い止めが増えてきました。また正社員で働いていても、長引く不況によりリストラや会社の倒産で職を失った人も大勢います。

「平成30年調査」では、40~64歳のひきこもり推定数のうち70%以上は男性だとされています。突然仕事が無くなってしまったショックで現実を受け入れられず、そればかりか人間不信に陥り、社会との接触を自ら断ってしまう現実が挙げられます。

次に、病気やケガ、精神疾患により社会復帰が難しくなりひきこもってしまうケースです。事故や疾患は不可抗力のため仕方ない面もありますが、今まで元気だった手前、心身が不自由になった子どもの姿を他人に見せたくないという思いから、子どもを社会から隔離しようとする親もいます。

初めはこれでいいかもしれませんが、親も子どもも高齢化していきます。親が死亡したあと、障害や病気を抱えた子どもの世話を誰が見ていくのか、その資金をどう捻出していくのかといった問題も出てきます。

とくに若い世代に多いのは、働くことや社会に出ることの必要性を初めからもてていないケースが散見されます。インターネットの普及により、部屋にパソコンかスマホさえあればチャットツールやオンラインゲームなどを介して他人と接触することが可能です。

この結果、バーチャル空間に完全に依存してしまい、部屋にこもって一日中インターネットに没頭する者が増えてきました。同時に、職や技能をもたず、それに対する習練なども一切行わない「ニート」と呼ばれる若者も増えています。

これは2004年発の日本労働研究機構による研究から耳目を集めたものです。同年、外務省は「若者自立・挑戦プラン」を発表し、OECD(2020年37ヵ国加盟の「欧州経済協力機構」)においても我が国における若年労働政策は新しい局面に至ると報告しました。

子どもの頃に受けたいじめや義務教育を終えた後も感じる社会からの疎外感といった外的要因のほかに、親の介護を機にひきこもりになるケースもあります。「介護離職」という言葉がありますが、無事に親を看取ったにもかかわらず、仕事をしていなかったブランクが影響して再就職先が見つからず、絶望感からそのままひきこもってしまうのです。介護休暇や介護離職に対する世間の理解がまだまだ低く、このあたりの意識改革も社会に求められます。

多くのケースに共通して言えることですが、何かのきっかけで自信をなくし、就業に空白期間ができると、自分は世間から必要とされていないと思い込む孤独感が、ひきこもりや8050問題に拍車をかけているのではないでしょうか。

「家庭の問題」で片づけるのではなく、周囲の助けを借りる勇気が大事

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いったんひきこもり状態になった人が、再び社会と接点をもつようになることはそう簡単ではありませんが、解決できる道はあるはずです。

まずは住まいのある市区町村の福祉課に相談してみましょう。ソーシャルワーカーが社会復帰への後押しをしてくれるはずです。また就労に関しては、ダイバーシティ(多様性)を認める社会へと変革しつつある現在、一定規模の企業は障害者雇用も積極的に行っています。

しかし、8050問題が長期化する理由に、外部はおろか家族にさえも固く心を閉ざしてしまっている人の多さがあります。こういった人たちが簡単に説得に応じてくれることは難しく、就労はおろか部屋の外に出てきてくれることさえ困難を極めるでしょう。

さらに厚生労働省では最悪のシナリオに基づき、事態が更に深刻化した「9060問題」が本格化することを確実視しています。すると、すでに起こり得ている次の事柄が挙げられます。

①全国的に孤立死、無理心中が発生
②親の死体遺棄
③親の年金・生活保護費の不正受給、自身の生活保護費の受給が増加

こういった場合、急に「仕事に就く」という目標を課すのではなく、まずは人と目を合わせて話を聞くことから始める。徐々に信頼関係を築いていき、部屋の外から一歩出て、最低限のコミュニケーションをはかれるようにもっていくことが望まれます。長きにわたりひきこもり支援を専門に行うNPO団体も数多くあります。

こういった人たちの知恵や経験を生かし、人と触れ合うことの意義や楽しさを少しずつ思い出してもらうことが重要となるでしょう。

「8050問題」を「9060問題」へ繰り越さないために

財産が底を尽き、誰にも助けを求めることができないばかりか、助けを求める意欲さえもなくしてしまう。これが8050問題の行き着く先です。挫折や失敗は長く生きていれば誰でも経験すること。親子で共倒れという最悪の事態を防ぐためにも、いつでも再チャレンジできる、生きることをあきらめない社会を形成していくことが重要です。

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