介護のお役立ちコラム
「介護はハード」というイメージが定着していますが、その理由の一つに、介護する側の肉体的な負担が挙げられます。日本人の体格も大型化しており、特に腰への負担はプロである介護士やホームヘルパーですら危惧する問題です。そのような現状を解決すべく、テクノロジーの力で身体介助を補助する動きが活発になってきています。今回は介護者の大きな手助けとなる「介護ロボット」について、実際の導入事例を踏まえてご紹介します。
介護の現場で活躍する、介護ロボットのあれこれ
徐々に介護現場でも活躍が見られるようになった介護ロボット。重労働と言われている介護の工程を機械の力で代行するもので、介護職員の省力化や体力的な負担の軽減に寄与します。
「ロボット」と聞くと、「ドラえもん」や「鉄腕アトム」のような人間に近い形をしたものをイメージするかもしれませんが、介護の現場におけるロボットは、介護の各工程に特化した役割を担う機械・装置であって、人間と同じような一連の動作をパーフェクトに再現できるわけではありません。それでは現在、どのような介護ロボットが存在するのでしょうか。
移乗介助ロボット
ベッドからの移動や車いすへの移乗をサポートするロボットです。さまざまなタイプがありますが、もっともロボットらしいと言えるのが、介助者が身にまとう装着型パワーアシスト型でしょう。手足を動かそうとする介助者の筋肉や血流の刺激を感知して、その部分に力が加わる仕組みです。
また、移動・移乗の際に、リフト装置で被介護者の体を持ち上げ、介助者の負担を軽減する、非装着型の装置もあります。
介護の肉体的負担を軽く「着る、筋肉。」マッスルスーツ開発者・小林宏教授インタビュー
歩行介助ロボット
電動アシストやブレーキ機能が付いた歩行器です。坂道や砂利道といった悪路でも安全に使用できるように設計されているほか、機械自体が容易に移動できるよう、重量制限や折りたたんで車載できるサイズにするといった規格が定められています。
見守り支援システム
社会問題となっている認知症高齢者の徘徊を防ぐために開発されたシステムです。ベッド脇に敷かれたマットが重量を感知(人の足が着地)することでセンサーが発動し、離れた場所にいる人にその情報が伝わります。専用端末以外にもスマートフォンや携帯タブレットとも連携でき、家族間や介護職員同士など複数人で情報を共有することで、徘徊に気付かない、または発見が遅れるといったヒューマンエラーも防止できます。
排せつ支援
排せつ支援にはさまざまなタイプのものがあります。例えば、掃除機のような形状で被介護者の股間にホースの先を取り付け、排せつと同時に汚物を吸引してくれる機械があります。ほかにも、水洗機能が付いたポータブルトイレ(便器)や、腹部に装着させ、排せつの予兆があるとセンサーが知らせてくれて、速やかにトイレに誘導できるウェアラブル端末などがあります。
コミュニケーションロボット
かつて世間の注目を集めた犬型ロボット「AIBO(アイボ)」や人型の「Pepper(ペッパー)」のように、ユーザーの呼びかけに反応するコミュニケーション型のロボットです。機械学習によってマニュアルどおりにならない豊富なリアクションを有しているほか、喜怒哀楽といった表情もあります。ロボットの無機質さが苦手な人向けに、動物のぬいぐるみを被せて使用できる商品もあります。
入浴支援機器
被介護者が転倒しないよう、体を支え入浴をサポートする機器です。多くの介護の現場では導入済みですが、リフトで体を持ち上げ、浴槽などに入れるリフト型の物も含まれるため、基本的には非装着型の移乗介護ロボットと同系と考えてよいでしょう。
海外では介護ロボットの使用が当たり前に
日本と比較して、欧米など諸外国の介護の現場では介護ロボットの導入が一般的になっています。日本では、機械に頼るのは「手を抜いている」「心が伝わらない」といった精神論が優先される傾向にあることも、介護ロボットの普及の妨げになっているかもしれません。欧米では、介護者の健康と安全を保障することは当然のことなのです。
さがしっくす 腰痛ゼロを目指した「ノーリフティングケア」は日本でも定着するか?
介護ロボット導入のメリットとデメリット
非常に便利で心強い介護ロボットですが、メリットばかりでなく、少なからずデメリットもあります。
介護ロボットのメリット
腰痛防止など介護者の負担を軽減できる
冒頭でも述べたとおり、介護する側の省力化と体への負担を大きく軽減できます。特に深刻である腰痛については、慢性的な腰痛が原因で介護職を辞める人が後を絶ちません。また、職種的に女性が多いことから、体格のよい男性を独力で介護するには限界があります。加えて、人員配置の少ない夜間帯の介護を考えると、どうしても人手以外の力が必要となります。
羞恥に関する精神的な負担を軽減できる
排せつ介助は、介護する側・される側お互いにとって精神的な負担が大きいものです。排せつ介助で失敗があるようでは、場合によっては双方の人間関係も悪くなってしまいます。そのような場合でも、介護ロボットをうまく活用できれば、お互い人目を気にしなくなるため、精神的な負担は大きく改善されるはずです。
介護ロボットのデメリット
コストがかかる
介護ロボット導入に対してコストがかかることです。その種類も多岐にわたり、購入はもとよりリースでもそれなりの出費が考えられるため、経営者としては二の足を踏むところです。
前項で取り上げた介護ロボット全種類を導入するのは現実的ではありません。まずは現場の職員からヒアリングをした上で、優先順位を決めて導入することが第一でしょう。
導入事例が少なく、使い勝手に不安が残る
実際に介護ロボットを導入している施設は、全国規模ではまだまだ少ないのが現状です。コストに対してはっきりとした効果が目に見えないところが、大きな不安要素になります。
また、現場の介護職員がロボットを正しく使いこなせるかも重要な問題です。正しい使い方が守られなければ重大な事故に繋がる恐れがあるばかりでなく、場合によっては販売・リース元との訴訟問題に発展しかねません。
故障の際に、素早く修理、復旧できるかも不透明な部分です。修理やメンテナンスに時間がかかれば、その間の介護は人手で補うことになるため、結局は"ロボットを使わない方が効率的"という意見が出るようでは、これまでの努力も水の泡です。
介護ロボットの導入事例・SOMPOケア「LOVOT(ラボット)」
全国に介護事業を展開するSOMPOケア株式会社では、2021年4月より同社が運営する10か所の介護事業所で、ロボット開発ベンチャーのGROOVE X株式会社が開発したコミュニケーション型ロボット「LOVOT(ラボット)」の試験導入を開始しました。
パッチリとした瞳が特徴の二頭身型のロボットで、頭頂部に付いた360度カメラとマイクによって、部屋の状況や周囲にいる人間の情報を把握。声かけの内容など接し方によって態度が変わってくるため、人間の子どものような愛くるしさがあります。人間同士では難しいコミュニケーションでも、ロボットだと気兼ねなく心を許す人もいることだと思います。このようなロボットの存在がきっかけとなり、利用者・入居者の気持ちの変化や、人間同士のコミュニケーションの促進など、新たな可能性に期待がかかります。
終わりに
かつてぜいたく品と言われた自動車、テレビ、全自動洗濯機などは、いまや家庭では欠かせないツールとして定着しています。これら文明の利器と同様に、さらなるテクノロジーの進化と安定した量産体制が確立できれば、介護ロボットも近い将来、介護施設だけでなく自宅で活躍する日もそう遠くないことでしょう。
コロナ禍でも
面会できる施設特集
老人ホーム・高齢者住宅
運営事業者の方へ
老人ホーム検索サイト「さがしっくす」では、事業者様のご入居募集のニーズに合わせて、2つのご掲載プランからお選びいただけます。