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親が老人ホームへの入居を拒否した時の対処法|同意なしの入居は可能?

親が老人ホームへの入居を拒否した時の対処法|同意なしの入居は可能?

更新日:2025.04.09
老人ホームの入居を拒否した時の対処法ついて解説

親の在宅介護に限界を感じている方にとって、老人ホームへの入居は有効な選択肢の一つとなります。しかし、親御さんが入居を頑なに拒否するケースは少なくありません。「このまま在宅介護を続けていいのだろうか」「親の同意なしでも入居できるのだろうか」と悩まれている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、親が老人ホームへの入居を拒否している場合の対処法や、在宅介護を続けるリスクについて詳しく解説していきます。



本人の同意なしに入居が可能かは老人ホームによる

老人ホームへの入居には、原則として本人の同意が必要です。これは入居者の人権や自己決定権を尊重するための重要な原則となっています。しかし、施設によっては本人の同意がなくても入居できる場合があります。

例えば認知症の症状が進行している場合や、医療的なケアが必要な状況では、本人の判断能力が低下していることを考慮して、家族による代理判断が認められることがあります。

ただし、これはあくまでも例外的なケースであり、可能な限り本人の意思を尊重することが望ましいとされています。

また、たとえ施設側が同意なしの入居を受け入れたとしても、その後の生活や介護がスムーズに進まない可能性が高くなります。本人が不本意な入居を強いられたという感情を持ち続けることで、施設のスタッフとの関係が悪化したり、家族との信頼関係が損なわれたりするリスクがあります。

本人が老人ホームの入居に同意しない理由

高齢者が老人ホームへの入居を拒否する背景には、さまざまな理由が存在します。それぞれの理由を理解することで、より適切な対応が可能になります。以下、主な理由について詳しく見ていきましょう。

  • ・入居する必要がないと思っているから
  • ・慣れ親しんだ環境で暮らしたいから
  • ・家族が介護するものだという価値観を持っているから
  • ・老人ホームにネガティブなイメージを持っているから
  • ・他人に介護されるのが嫌だから

入居する必要がないと思っているから

多くの高齢者は、「自分にはまだ施設入居の必要がない」と考えています。特に、日常生活の一部が自力でできている場合、その思いは強くなります。「まだ自分で炊事はできる」「歩くことはできる」といった部分的な自立を根拠に、入居の必要性を否定することがあります。

しかし、認知症の初期症状として、自身の状態を適切に判断できない場合もあります。また、できることとできないことの区別が曖昧になっていることも少なくありません。このような場合、家族が客観的に状況を判断し、専門家の意見も交えながら入居の必要性を検討することが重要です。

慣れ親しんだ環境で暮らしたいから

長年住み慣れた自宅を離れることへの不安は、入居拒否の大きな要因となっています。自宅には思い出の品々があり、近所付き合いも長く、買い物などの生活動線も確立されています。そのため、突然見知らぬ環境で生活を始めることに強い抵抗を感じるのは自然なことです。

特に高齢者にとって、新しい環境への適応は大きなストレスとなります。「自分の好きな時間に好きなことができなくなる」「知らない人ばかりの中で生活するのは寂しい」といった不安を抱えています。このような場合、まずはデイサービスやショートステイを利用して、徐々に施設での生活に慣れていくアプローチが効果的です。


家族が介護するものだという価値観を持っているから

特に昔ながらの価値観を持つ高齢者の中には、「親の介護は子どもの務めである」という強い信念を持っている方が少なくありません。この場合、老人ホームへの入居を提案されると、「見捨てられる」「子どもに見放される」といった感情を抱きやすくなります。

また、「世間体が悪い」「親戚に何と言われるか」といった社会的な体裁を気にする場合もあります。このような価値観の違いは、単純な説得だけでは解決が難しく、家族間での丁寧な対話と、専門家のサポートが必要となることがあります。

老人ホームにネガティブなイメージを持っているから

介護施設での事故や虐待に関する報道を見聞きすることで、老人ホームに対して「暗い」「不自由」「寂しい」といったネガティブなイメージを持ってしまっている方も多くいます。「食事がおいしくない」「外出が制限される」「プライバシーが守られない」といった懸念を抱いている場合もあります。

このような先入観を払拭するためには、実際の施設見学が効果的です。現代の老人ホームの多くは、明るく快適な環境で、さまざまなアクティビティも用意されています。ただし、施設見学の際は、本人の好みや生活スタイルに合った施設を慎重に選ぶことが重要です。事前に複数の施設を家族で見学し、本人の性格や趣味に合った施設を提案することで、入居への抵抗感を軽減できる可能性があります。

【施設見学に関連する記事はこちら】
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他人に介護されるのが嫌だから

多くの高齢者にとって、見知らぬ人に身の回りの世話をしてもらうことには大きな抵抗があります。特に入浴や排せつの介助など、プライバシーに関わる部分で強い不安を感じます。「家族なら安心だが、他人には任せたくない」という気持ちは、尊厳に関わる重要な感情です。

また、長年培ってきた生活習慣や価値観を他人に理解してもらえるか不安に感じる方も多くいます。このような場合、まずは訪問介護サービスを利用して、少しずつ専門的な介護に慣れていくことが有効です。介護スタッフとの信頼関係を築くことで、施設入居への心理的なハードルを下げることができます。

【訪問介護に関連する記事はこちら】
離れていても安心できる、「訪問介護」のメリットや利用方法は?|介護のコラム

在宅介護を続けるリスク

在宅介護を続けるリスク

在宅介護には様々なリスクが伴います。在宅介護を継続するにあたっては、以下のようなリスクが生じる可能性があります。

  • ・介護者の収入減による生活の困窮
  • ・介護者の精神的負担の増加
  • ・被介護者の精神的負担の増加
  • ・家族関係の悪化

それぞれ解説していきます。

収入の減少による生活の困窮

在宅介護を続けることで、介護者の就労状況に大きな影響が出る可能性があります。介護のために勤務時間を短縮したり、最悪の場合は退職を余儀なくされたりすることで、家計収入が大幅に減少するリスクがあります。

特に50代以降の介護離職は、その後の再就職が困難になりやすく、長期的に経済的影響を及ぼす可能性があります。また、介護費用や医療費などの支出は増加傾向にあるため、収入が減少する中で家計の圧迫は深刻化していきます。結果として、老後の資産形成にも影響を与え、介護者自身の将来設計にも支障をきたす可能性があります。

介護者の精神的負担の増加

24時間体制の在宅介護は、介護者に大きな精神的負担をもたらします。食事、入浴、排せつの介助など、日常的なケアに加えて、夜間の見守りや緊急時の対応も必要となります。十分な休息や睡眠が取れない状態が続くことで、強いストレスや不安を感じやすくなります。

また、仕事と介護の両立を図ろうとすることで、さらなる精神的プレッシャーがかかります。「これでいいのか」という自責の念や、将来への不安を抱え続けることで、うつ状態に陥るリスクも高まります。介護者の心身の健康を損なうことは、結果として介護の質の低下につながりかねません。

被介護者の精神的負担の増加

被介護者側も、「家族に負担をかけてしまっている」という申し訳なさを感じ続けることで、強い精神的ストレスを抱えることがあります。自分の状況を悲観的に捉えたり、自己否定的な感情を抱いたりすることもあり、これは介護者側にとっても大きな精神的負担となります。

また、介護者との密接な関係が続くことで、些細な行き違いやストレスが重なり、両者の関係が悪化するリスクもあります。「被介護者が自分の要求を十分に伝えられない」あるいは「介護者がその要求に応えきれない」といった状況が続くと、お互いの精神的な疲弊は加速度的に蓄積されていきます。このような状況が続くと、被介護者の心身の健康状態に悪影響が及ぶ可能性もあります。

家族関係の悪化

在宅介護の長期化は、家族関係を悪化させるリスクをはらんでいます。介護の負担が特定の家族メンバーに集中することで、家族間の不公平感や軋轢が生じやすくなります。また、介護疲れによるイライラが、思わぬ暴言や粗雑な介護につながることもあります。

特に認知症の場合、被介護者の言動が予測不可能になるため、家族の対応も難しくなります。介護者の疲労やストレスが限界に達すると、虐待などの深刻な問題に発展するリスクもあります。このような事態を防ぐためにも、適切な時期に施設入居を検討することが重要です。

【在宅介護に関連する記事はこちら】
在宅介護のサービス内容や種類を紹介。そのメリットを考える|介護のコラム

本人が老人ホームの入居に同意してくれない場合の対処法

老人ホーム入居を拒む本人と話し合う

施設入居への同意を親から得るために、以下のようなアプローチ方法があります。

  • ・本人との丁寧な対話を重ねる
  • ・希望や生活スタイルに合った施設を探す
  • ・デイサービスなどで段階的に施設に慣れていく
  • ・専門家のアドバイスを活用する

一つひとつの方法を組み合わせながら、本人の気持ちに寄り添って進めていくことが大切です。以下では、それぞれの対処法について詳しく解説していきます。

本人と話し合う

まず最優先すべきは、本人との丁寧な対話です。「なぜ施設入居をすすめているのか」という家族の思いを、具体的な事例を交えながら説明することが重要です。例えば、「先月転んで怪我をした時のように、1人でいると危険な場合がある」といった具体的な出来事を挙げながら話すと、より伝わりやすくなります。

同時に、本人が入居を拒む理由にもしっかりと耳を傾けましょう。「どのような点が不安なのか」「どのような条件なら受け入れられるのか」といった本音を引き出すことで、解決の糸口が見えてくることがあります。一方的な説得ではなく、お互いの気持ちを理解し合うための対話を心がけましょう。

本人が入居を納得する施設を探す

本人の希望や生活スタイルに合った施設を探すことも重要です。例えば、趣味の継続が可能な施設や、自由度の高い生活が送れる施設など、本人の価値観に沿った選択肢を提示することで、入居への抵抗感を軽減できる可能性があります。

施設見学の際は、実際の入居者の様子や、提供されているサービス、日々のスケジュールなどを具体的に確認します。「ここなら楽しく過ごせそう」と感じてもらえる施設に出合えれば、入居への前向きな気持ちを育むことができます。

介護施設に徐々に慣らしていく

いきなり施設に入居するのではなく、デイサービスやショートステイなど、段階的なアプローチを取ることも効果的です。まずは日帰りのデイサービスを利用して施設の雰囲気に慣れ、その後短期間の宿泊を試してみるなど、徐々にステップアップしていくことで、施設での生活に対する不安を和らげることができます。

また、これらのサービスを利用する中で同世代の利用者や職員との関係が築けると、施設入居への心理的なハードルも下がっていきます。家族の負担軽減にもつながり、より冷静に今後の方針を検討できるようになります。


専門家に相談する

老人ホーム入居を拒む本人と話し合う

ケアマネージャーや医療ソーシャルワーカー、介護施設の相談員など、専門家にアドバイスを求めることも有効です。専門家は豊富な経験と知識を持っており、それぞれの状況に応じた適切なアプローチ方法を提案してくれます。

また、第三者の立場から客観的な意見を述べることで、家族間の感情的な対立を和らげる効果も期待できます。特に医療的な観点から施設入居が必要な場合は、医師からの説明が本人の理解を促すきっかけとなることもあります。

【「専門家に相談」に関連する記事はこちら】
【不安解消】老人ホームの入居相談に最適な機関とは

まとめ

老人ホームへの入居は、本人と家族の双方にとって大きな決断となります。入居を拒否されても、一方的な説得や強制は避け、丁寧な対話を重ねることが重要です。

同時に、在宅介護の限界を見極め、適切なタイミングで施設入居を検討することも必要です。本人の意思を尊重しながら、家族全体の幸せを考えた最適な選択ができるよう、専門家のサポートも活用しながら慎重に進めていきましょう。


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