介護のお役立ちコラム
年老いた家族と離れて暮らす人は何かと心配事も多いことかと思いますが、新型コロナウイルスの影響で、これまでおこなってきた介護にも障害が出ています。今後しばらく続きそうなコロナ禍の状況下で、お互い安心して生活していくためにできることはあるのでしょうか?
核家族化により、世帯の数が40年間で約2.8倍に増加
かつて日本では複数世代が一つ屋根の下で暮らす大家族が当たり前でした。年老いた祖父母の世話は嫁いだ女性(主婦)が見るのが一般的で、その姿を見て育ってきた子どもも、やがて大きくなり自然と年長者の介護にあたるという習わしが定着していました。
ところが、高度経済成長期あたりから、女性の社会進出や晩婚化が目立つようになり、都心部を中心に親とその子どもだけで世帯を構成する核家族が急増していきました。内閣府がおこなった調査によると、65歳以上の単独世帯または夫婦のみが占める世帯の割合は、1980年(昭和55)当時、全世帯数の30%弱程度でしたが、2015年には56.9%まで増加しています。また、世帯数自体もこの40年間で約2.8倍に増えています。この数字も大家族が減り、少人数の核家族が増えた証左と言えるでしょう。
遠距離介護と独居の現状
社会人となった子どもがその親と暮らす家庭は減少し、介護が必要な際は、年老いた親のもとへ通うか、老人ホームなど高齢者が集団生活する施設に預けることが一般的になりました。
要介護になったときのことを見据えて、自宅を二世帯住宅に改築したり、同じマンション内に部屋を借りるなど、同居または同居に近い環境で介護にあたる家庭も多くあります。しかし、仕事や出稼ぎで地方から都心部へ移住する人の流れは依然多く、再び田舎に戻るという選択肢はあまり現実的ではないようです。
逆に、年老いた親を自分たちの住む地域に呼び寄せるケースも考えられますが、住み慣れた土地を離れることは、高齢者にとって非常に大きなストレスとなるばかりか、住環境の変化によって認知症の進行が早まる悪影響があることもわかっています。
介護を理由に仕事を辞めるわけにもいかず、その子どもたちも学校を転校しなくてはいけなくなります。新たに人間関係を築いていくのも大きな負担になり、遠距離介護には問題が山積しています。
遠距離介護におけるさまざまな問題点
次に、遠距離介護で起こりうるトラブルについて触れてみます。
体調不良や病気の発見が遅れる
定期的にしか会えないため、ちょっとした体調の変化には気づきにくいものです。また、掃除や洗濯、食事の用意などの生活支援を毎日受けられないことで、栄養失調や不潔な環境下で暮らす人も増えてきます。
移動時間と費用面での負担増
生活援助や介護にかかる時間のほか、実家までの往復時間もその距離が長いほど自由に使える時間が減ってきます。当然、電車賃や高速料金、ガソリン代なども距離が離れるほどコストが増えてきます。
きょうだい間での介護の分担
きょうだいがいる場合、介護を分担すれば一人あたりの負担は減ります。これを一人に押し付けた場合、不公平感からきょうだいの仲がギクシャクしてしまうことはよくある話です。介護はどのように分担するのか、有事の際は誰が一番に対応するのかなど事前に話し合っておく必要があります。
振り込め詐欺などに対する防止策
ここ数年、振り込め詐欺など高齢者を狙った犯罪が急増しています。怪しげな電話がかかってきたとき、同居ならばすぐに察知して犯罪を未然に防ぐことは可能ですが、判断力が落ちた高齢者に対し、周囲の人が事前に気づき、諭してあげることはなかなか難しいことです。
新型コロナウイルスによって新たに発生した問題
新型コロナウイルスの感染拡大も、介護が必要な高齢者とその家族に対し、確かな悪影響を及ぼしました。
まずは緊急事態宣言の発令にともなう外出自粛要請から、都道府県をまたいでの移動が難しくなりました。法的な規制はないものの"外出しにくい"風潮はぬぐえず、さらには県外ナンバーを付けた自動車に対する嫌がらせなどの被害も発生し、遠距離介護に対する足かせとなっています。
同様に通所介護(デイサービス)や訪問介護も規制され、今まで通りのサービスが受けられない地域も多くあります。高齢者と職員が一堂に会す通所型の介護は、集団感染の原因になりかねないため、規制が厳しくなるのは当然のことです。
男性(夫)が家にいる時間が増えたこともひそかに問題視されています。外出自粛により毎日昼食を用意しなくてはならず、世話が増えたことに対する妻のストレスも溜まりがちです。一緒に過ごす時間が増えたことで、言い争いが絶えないなど夫婦の関係が悪化し、近い将来、離婚が増えるのではないかと指摘する専門家もいます。現時点では表立った問題は見られませんが、"コロナ離婚"によって、今後独居高齢者が増えることが予想されます。高齢者世帯が増えれば、それだけ孤独死につながる可能性も高まっていくのです。
遠距離介護への対応策
ビデオ通話アプリでコミュニケーションをとる
テレワークや在宅勤務では、ZOOMやSkypeなどのビデオ通話アプリが一役買っています。これらツールは当然安否確認にも有効で、介護事業者の間でも積極的に導入しようとする機運が高まっています。
パソコンのほか、携帯タブレットやスマートフォンを介しても通信できるため、使わない手はありません。IT機器は高齢者にとってなじみの薄いツールですが、家族がいったん実家に出向き、すぐに使えるようセッティングするだけでだいぶ利便性を向上できます。最近はタブレットやスマートフォンでも、文字やアイコンを大きくして機能を極力シンプルなものに抑えた高齢者向けの機種も登場しています。
さらには、画面のアイコンをタッチするだけで、緊急事態を家族やサービス提供会社のオペレーターに知らせてくれる機能があるため、緊急時でも安心です。
既存の介護サービスを活用する
コロナ禍で満足のいく介護サービスが提供されにくいご時世ですが、介護事業者との連携は必須です。ちょっとした体調や生活習慣の変化なども逐次報告してもらうようにしたいところ。ただし、介護支援専門員(ケアマネジャー)やホームヘルパーも決して一人の利用者に付きっきりというわけにはいきません。難しい要求はできるだけしないように心がけましょう。
民間企業などによる安否確認サービスを利用する
自治体や地元密着の企業による見守り(安否確認)サービスが定着しつつあります。警備会社や飲食事業者による配食サービス、宅配便や新聞、牛乳配達など定期的に自宅を訪れる人たちから支援を受けることも選択肢に加えておくべき内容です。
近所の人たちと友好関係を築いておく
安否確認は近所の人にお願いするのも手です。地方部では近隣同士の結び付きが強い場所が多く、「お互いさま」の精神が根付いています。実家に帰った際、近所の人と道ですれ違ったときにきちんとあいさつをするなど、家族ぐるみで良好な関係を築いていこうとする姿勢が大切です。
最後に
世界規模で感染者の拡大が見られる新型コロナウイルスの影響はしばらく続きそうです。遠距離介護に対する完全な対応策はなく、そこから生じる不安は多大なものです。しかし今回の騒動で、私たちはITの力を介して"人とのつながり"の重要性を再認識できたはずです。電話1本かけるだけでも、親は喜んで安心してくれることだと思います。離れて暮らす家族に思いを馳せて、できることから一つずつ始めていきましょう。
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