介護のお役立ちコラム
【最終更新日:2022年9月13日】
高齢化に伴い、終末期医療の必要性が増しています。
医療機関などでの終末期で病状の回復が見込めない場合、ご本人やご家族は命をつなぐための「延命治療」をするかどうかの選択を迫られます。ご本人の意思表示ができなくなる前に、終末期の対応を話し合っておくことが重要です。
今回の記事では、具体的な延命治療の種類や費用、メリット・デメリットなどについて解説します。
延命治療とは? そのあり方が議論される時代に
延命治療とは、老化に伴う心身の衰弱や重度の病気などで生命の維持が難しい人に対して、医療措置を施し、一時的に命をつなぐ行為です。
医療技術の進歩によって延命治療が可能になりましたが、一方で患者さまの意思に添わないケースもあり、終末期の対応については議論や取り組みが進められています。
尊重されるべきは患者さま本人の意思
最近では、無理な延命治療を行わず、苦痛(痛みや不快など)を取り除きながら自然な形で人生の最期を迎えるという選択が認められるようになってきました。現在は、病院や介護施設でも「終末期医療(ターミナルケア)」を行い、患者さま本人に寄り添う治療や介護を提供するところが増えています。
延命治療の内容と費用
では、延命治療では具体的にどういった処置が行われるのでしょうか?主な内容と費用は以下の通りです。
1.人工呼吸
人工呼吸とは、自発的に呼吸ができない患者さまに対して行われる処置で、人工呼吸器を用いて酸素を肺に送ります。人工呼吸器をつないでいる間は生命を維持できますが、外すとそれが難しくなります。
2.人工栄養
人工栄養は、口から食事ができない(栄養が摂取できない)患者さまに対して行われる処置です。チューブを介して流動食を直接胃に注入する「胃ろう」と、血管に栄養剤を点滴で注入する方法があります。
3.人工透析
人工透析は、主に慢性腎不全の患者さまに行われる処置です。腎機能が低下して正常に働かなくなると血液中の老廃物の除去ができなくなります。 そうした場合に、人工透析によって血液中の老廃物の除去や電解質の維持、水分量の維持を図り、尿毒症を予防します。
延命治療でかかる入院費
⽇本慢性期医療協会の資料によると、終末期の⼊院患者さまの医療費は日額28,500円(医療療養病床の場合)。社団法人日本医師会の資料では、後期高齢者の終末期の日額入院単価は平均で31,800円と示されています。
もちろん、必要なケアや入院日数によっても金額は大きく変わります。医療費3割負担の患者さまの場合、ざっくり見積もると月額で30〜50万円になると考えられます。
高額療養費制度の活用を選択肢に
医療費が一定の額を超えた場合には、その超過分を国が補填する「高額療養費制度」という制度が利用できます。病院の窓口で一旦自己負担額を全額支払い、月単位での「自己負担限度額」を超えた分については、後日保険者から還付されます。自己負担限度額は収入に応じて変わり、高額所得者ほど高めに設定されています。
たとえば、一般的な所得がある後期高齢者(75歳以上)の場合でみてみましょう。この場合、外来における月単位の上限額は18,000円、外来と入院をあわせた月単位の上限額は57,600円となっています。延命治療が高額になった場合でも、最大でこの金額になるので覚えておくと良いでしょう。
延命治療のメリットとデメリット
次に、延命治療のメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
・家族が身体的な負担、時間的な制約から解放される
多くの場合、延命治療は病院などの医療機関で行われます。そのため、在宅介護と異なり、見守りや服薬管理、通院の付き添い、食事の提供といった家族による日常生活のサポートが必要なくなります。
・終活を行う猶予ができる
延命治療は、言い換えれば死期をコントロールする処置でもあります。延命治療によって財産や所有物の処分、相続などに時間をかけることが可能になります。
デメリット
・本人の意思に反して行われることがある
延命治療が必要になったとき、すでに患者本人が意思決定できない状態にある場合も考えられます。この場合、本人の意思とは無関係に延命治療が実施されてしまうのです。
・医療費の負担が大きくなる
高度な医療管理下に置かれるため、入院費用も高額になる可能性があります。高額療養費制度も適用されますが、それでも大きな出費であることに変わりありません。そして、いつ終わりが来るか予想ができないのも、大きな不安要素になり得るでしょう。
・家族に与える精神的苦痛
本人の意識がないまま生かされている状態は、家族の精神的苦痛につながるケースもあります。また、家族の判断で延命治療を途中で止めた場合、その意思決定をした本人が長きにわたって自責の念にかられることもあるでしょう。
延命治療を拒否する方法とは?
内閣府が発表した『平成25年版 高齢社会白書』によると、65歳以上の高齢者のうち91.1%の人が「延命のみを目的とした医療は行わず、自然に任せてほしい」と回答していたことがわかりました。では、延命治療を希望しない場合、どう対処すれば良いのでしょうか。
拒否する方法1|リビング・ウィルを作成しておく
「リビング・ウィル」とは、生前に自分の意思を示しておく、いわば事前指示書のことです。日本では、公益財団法人日本尊厳死協会が公式な書面を発行しています。この書面を記載しておくと、本人が意思決定できない場合の終末期医療における選択について事前に意思表明をしたものと見なされます。
リビング・ウィルの内容は、家族や医師、看護師、ケアマネジャーなども含めて、どのようなケアが望ましいかを話し合いながら決めていくことが重要です。
また、リビング・ウィルに付随する「私の希望表明書」という書式もあります。こちらでは、リビング・ウィルを補完する形で「最期を迎えたい場所」や「して欲しくない処置」などをあらかじめ意思表示できます。
拒否する方法2|「尊厳死宣言公正証書」を作成しておく
延命措置を拒否し、人間としての尊厳を保ちながら死を迎える「尊厳死」を希望することを宣言する公正証書です。公証役場で作成しておくと、延命治療の選択を迫られた際に効力をもちます。
作成時に必要な費用や書類は、管轄する公証役場によって異なることもあります。事前に確認しておくようにしましょう。
拒否する方法3|「人生会議」を行う
東京都医師会と東京都が提唱する「人生会議」(別称:ACP・アドバンス・ケア・プランニング)とは、終末期医療を迎えた患者さまの意思決定を支援するプロセスです。
リビング・ウィルや尊厳死宣言公正証書のような正式な書式ではなく、家族や医師、ケアマネジャーなどと話し合いながら、日々の健康状態や将来の見通しなどを踏まえて、どのような終末期を迎えたいかを決めておきます。
「看取り」に力を入れる老人ホームも増えてきた
延命治療を行わずに生活を続ける場合、多くの人が緩和ケアを受けることになります。緩和ケアとは、本人や家族の苦痛を取り除きながら、穏やかな人生の最期を迎えられるように生活の質(QOL)を維持するための対処法です。
最近では、看取りに力を入れる老人ホームなども増えてきました。さがしっくすでも多くの施設をご紹介しています。
- ▼全国のターミナルケア対応可能な施設特集はこちら
- https://www.sagasix.jp/theme/terminal
人生の最期に備えて早めの意思確認を
「できる限り長く生きたい」と考える人がいる一方で、延命治療をせずに「自然に最期を迎えたい」と考える人も尊重されるべきです。いずれの場合も、元気なうちから自分の終末期をどのように迎えたいか明確な意思表示をしておきましょう。家族やかかりつけ医、ケアマネジャーなどとの間で共通の認識をもっておくことが重要です。
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