介護のお役立ちコラム
多くの老人ホームでは、入居の際に「身元保証人」が必要となります。身元保証人は、入居者の代わりにさまざまな手続きや、生活全般の支援を行う重要な役割を担います。この記事では、身元保証人が必要とされる理由、また、保証人がいない場合の対策として知っておきたい「身元保証会社」の選び方や、費用の目安をわかりやすく解説します。
■目次■
- 老人ホームへの入居に身元保証人を必要とする理由
- 経済的問題が発生した際の保証
- 病気・ケガなど医療方針などの確認
- 死亡時の対応と退去手続き
- 身元保証人がいない場合の解決策
- 身元保証会社の利用とその選び方
- その他の選択肢
- 身元保証会社の役割とメリット
- 身元保証会社が提供するサービス内容
- 費用の目安と選定時の注意点
- 高齢者のための身元保証会社の選び方
- 信頼できる身元保証会社を選ぶ基準
- トラブル防止のための確認ポイント
- まとめ
老人ホームへの入居に身元保証人を必要とする理由
総務省の調査結果※によると、病院や高齢者向け介護施設の9割以上が、入院・入所の際に身元保証人を必要としていることがわかりました。さらに、そのうちの2割以上は「身元保証人が用意できなければ、入所をお断りする」と回答しています。
なぜ、多くの老人ホームが入居時に身元保証人を求めるのでしょうか。まずはその理由と、保証人の主な役割について見ていきましょう。
※出典:『高齢者の身元保障に関する調査』(総務省)
経済的問題が発生した際の保証
入居者が何らかの理由で、月額利用料などの支払いを遅らせたり払えなかったりした場合、保証人は入居者に代わってその費用を負担する連帯保証の役割を担います。
病気・ケガなど医療方針などの確認
入居者が病気・ケガなどで治療を受ける際の手続きや治療への同意は、基本的には入居者自身が行います。しかし、高齢などの理由で本人が意思決定できない場合、保証人は入居者に代わって判断や治療に必要な手続きなどを行います。
死亡時の対応と退去手続き
看取りまでを行う老人ホームで入居者が亡くなった場合、保証人は遺体と入居者の私物の引き取り、ホーム退去時の手続きや精算処理などを行います。
ほかにも、入居者の健康状態や病状などの定期的な確認、ケアプランが変更になったときの同意、また臨時・緊急時の連絡窓口になるなど、保証人の役割は老人ホーム側が個別には対応できない範囲に及びます。そのため、たとえ家族や親族であっても「身元保証人にはなりたくない」と思う人も多いようです。
身元保証人がいない場合の解決策
少子高齢化や核家族化が進む中、さまざまな事情で身元保証人が確保できない高齢者も少なくありません。その場合の解決策として、保証人代行を務める「身元保証会社」や、成年後見人制度を利用する方法があります。
身元保証会社の利用とその選び方
老人ホームへの入居にあたり、専門的な知識をもつ「身元保証会社」のサービスを検討する人が増えています。身元保証会社では、個人に代わって入居・入院時の身元引き受けや連帯保証など、保証人の役割を代行するさまざまなサポートを行っています。
運営元によってサービス内容が異なるため、事前に保証プランや料金体系をしっかり確認し、入居者の状況に合ったものを選ぶことが大切です。
その他の選択肢
『成年後見制度』を利用することで入居できる施設もあります。成年後見制度とは、認知症や知的障害などを抱え、判断能力が不十分な方を保護・支援するための制度です。保証人の代わりとなる「後見人」を選出し、入居者の代理となって各種手続きや財産の管理を行います。
成年後見人制度には、家庭裁判所が後見人を任命する「法定後見制度」と、本人の判断能力が十分なうちに、自分の意志で後見人を選ぶ「任意後見制度」があります。
成年後見制度の詳しい内容はこちら
①【認知症患者の暮らしを支える「成年後見人」ってなに?後見人の援助内容とその探し方|認知症のコラム】
②【成年後見制度ってなに?】
身元保証会社の役割とメリット
身元保証会社では、施設に入居する際の手続きから生活全般の支援、お金の管理など、身元保証人を見つけることが難しい高齢者を支援する多様な「身元保証サービス」を提供しています。保障会社によっては死亡後のサポートも行なっており、単身世帯で身寄りがない、家族に迷惑をかけたくないなどと考える方にとって、先々の不安を軽減できるメリットがあります。
身元保証会社が提供するサービス内容
総務省の調査では、「身元保証」「日常生活支援」「死後事務」といった各種サービスを複数併用して提供している事業者が、全体の8割以上を占めました。主なサービス内容は、次のようになっています。
身元保証の基本サービス
・老人ホーム入居契約に関わる身分保証
・老人ホーム利用料の連帯保証
・緊急連絡先としての対応
・入居時・退居時の手続き
・病院の入退院手続き
・医療・介護の方針確認
など
日常生活支援サービス
・定期的な見守り
・通院・入院時の同行
・行政手続きの同行や代行
・金融機関への同行
・生活費の管理、送金
・生活に必要なものの購入
など
死後事務支援
・死亡の確認、関係者への連絡
・葬儀に関する事務、火葬手続き
・葬儀、納骨などの基本的な手続き代行
・各種行政手続き
・施設利用料等の精算手続き
・部屋の片付け
など
ー身元保証の実施サービスと事業者数ー
※出典:『身元保証等高齢者サポート事業における 消費者保護の推進に関する調査』(総務省)
費用の目安と選定時の注意点
身元保証サービスにかかる費用は事業者によって異なります。
一般的には、基本契約費用・身元保証費用など、契約の際の費用が80万円〜100万円、加えて死後事務費用としての預託金50万円〜100万円が必要となり、合計180万円〜200万円程度が利用開始時にかかる費用の目安です。中には300万円を超えるような高額プランもありますが、過剰なオプションがパッケージ化されていることもあるので注意しましょう。
また、月額5000円〜1万円程度の生活支援費用が別途発生する場合が多いようです。
身元保証サービスは、基本的には一生涯続く契約となります。月々の費用も含め、長期的な観点から必要なサービスを選定することをおすすめします。
―身元保証料金の内訳と参考価格―
入居身元保証 |
契約時費用 ●契約金(初期) 80万円〜100万円 (基本契約費用+入居身元保証費用) |
月額費用 ●月額 5000円〜1万円 (24時間365日の受付、電話連絡等の経費など) ※別途訪問費用/(時間)などがかかる場合があります |
―死後事務費用(預託金)の参考価格―
入居身元保証 |
●契約時の死後事務預託金 50万円〜100万円 (入居者の希望、葬儀の規模や納骨方法の希望などにより変動) |
高齢者のための身元保証会社の選び方
身元保証の運営会社には、弁護士事務所やNPO法人、公益社団法人などさまざまな形態があります。保証会社を選ぶときは、エリアはもちろん、組織としての実績や信頼性などを吟味し、複数の事業者を比較検討しながら慎重に決めることが大事です。
ここでは、後悔しないための保証会社の選び方について解説します。
信頼できる身元保証会社を選ぶ基準
信頼できる身元保証サービスを見極めるための、主なチェックポイントをまとめました。
1 経営基盤の安定性・・・身元保証会社の設立年数や資本金、従業員数、過去にクレームがないかなどを調べましょう。また、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家が在籍または連携している事業者であれば、より信頼性の高いサービスが期待できます。
2 丁寧な説明と誠実な対応・・・身元保証サービスは契約内容が複雑になりがちです。そのため、サポートの詳細や費用の説明がわかりやすく、高齢者の質問にも丁寧に答えてくれる事業者を選びましょう。契約時に複数回にわたってサービス内容の説明を受けられたり、ご家族など信頼できる第三者が立ち会えたり、また契約内容をまとめた重要書類が用意されているかなどもチェックポイントです。これらは、安心してサービスを利用できるかどうかの重要な判断材料といえます。
3 預託金の適切な管理・・・預託金は死後手続きに備え、事業者が入居者から預かる大切な資金です。事業者の運営資金とは別に、安全に管理されることが大前提です。たとえば、信託口座をつくるなど第三者機関による管理体制が整っているか、入出金の記録が透明化されているか、そして、解約時に全額が返還されるかなどを事前に確認してください。
その他、解約時の返金規定、緊急時の対応、ご本人の判断能力が低下した場合のサポート体制など、契約内容を総合的に判断し、納得のいく事業者を選びましょう。
トラブル防止のための確認ポイント
身元保証サービスの中には、入居者が亡くなった後、事業者に財産を寄付することを前提としているところもあるようです。そのため、ご本人やご家族の意向と契約内容が食い違ってしまうケースがあり、トラブルに発展する可能性があります。
過去には、入居者が特定の親族に財産を譲りたいと考えているにも関わらず、契約書では事業者に全額を寄付することになっていたという事例も報告されています。金銭トラブルの防止策として、契約前には以下を心がけましょう。
・契約内容を慎重に確認する:契約書に記載されている内容を、入居者やご家族がよく理解し、疑問点があれば事業者に質問しましょう。とりわけ財産の扱い方や、亡くなった後の手続きについては、慎重に確認する必要があります。
・公正証書遺言の作成:遺言書を作成することで、入居者の財産に関する意向を明確にできます。とくに公正証書遺言は法的効力が高く、トラブルを防ぐ上で有効な手段です。
・専門家への相談:弁護士や司法書士などの専門家に相談することで、契約内容や遺言の作成について、より詳しく知ることができます。
事前の対策と準備によって、死亡後の手続きに入居者ご自身の意向が尊重され、安心してサービスを利用することができます。
まとめ
老人ホームに入居する際には、基本的に身元保証人が必要になります。
しかし、さまざまな理由でご家族のサポートが受けられない方々にとって、保証人の確保は大きな負担となっています。今後、専門の事業者が提供する身元保証サービスが、身寄りのない高齢者にとって救いの手になることは間違いありません。
一方で、身元保証に関する法令や制度などがいまだにきちんと整備されていない現状があります。事業者によってサービス内容や費用が異なることも、高齢者やご家族の混乱を招く一因です。
老人ホームへの入居を考えている方やそのご家族は、不安や心配ごとを抱え込まず、まずは専門家に相談してみましょう。将来に備え、身元保証サービスについてあらかじめ理解しておくことは、先々安心して生活を送るための第一歩です。
介護のお役立ちコラム
-
2024.12.16【参考価格を掲載】老人ホームの入居に保証人がいなくても大丈夫?身元保証会社の選び方
-
2024.10.01福祉タクシーと介護タクシーの違いと利用方法
コロナ禍でも
面会できる施設特集
老人ホーム・高齢者住宅
運営事業者の方へ
老人ホーム検索サイト「さがしっくす」では、事業者様のご入居募集のニーズに合わせて、2つのご掲載プランからお選びいただけます。