加齢とともに発症する可能性の高まる病気の一つである「白内障」。今回は代表的な目の疾患である白内障の原因やその症状、治療における注意点について解説していきます。

【監修者】
矢島 隆二 医師

脳神経内科・認知症・総合内科などを専門としている。新潟大学医学部卒業後、地域中核病院や大学病院などでの高度急性期医療から地域の総合病院まで幅広く臨床経験を積み重ね、新潟大学附属脳研究所で認知症の研究も行い、医学博士も取得している。

現在は認知症や神経難病を中心に、リハビリテーションにも重点をおいた神経内科を主体とした医療を担っている。
神経難病やアルツハイマー病などの治験も行っているほか、講演や執筆の依頼も積極的に受けている。日本リハビリテーション医学会 認定臨床医の資格取得。

白内障の基礎知識

白内障は、眼球の中でレンズの役割を果たす水晶体が濁る病気です。主に加齢とともに、見えにくさ（視力低下）、かすみ（霧視）、まぶしさ（羞明）などのさまざまな症状が起こり、早い人で40代、遅くとも80代までには、ごく軽いものを含めればほとんどの人が発症します。

目の病気ということもあり、失明の心配をするかもしれませんが、適切な時期に手術をおこなうことで治療できるケースがほとんどです。

白内障の原因や生活における対策

白内障の原因は、加齢による水晶体タンパク質の変化です。加齢以外に影響を及ぼす要因として、糖尿病、太陽光（紫外線）、副腎皮質ステロイドをはじめとした薬物、喫煙、過度のアルコールなどが知られています。また、近年はアトピー性皮膚炎に合併して、若くして発症するケースも珍しくありません。まずは、サングラスや紫外線カット機能付きコンタクトレンズの常用、禁煙や節酒などの指導をおこないます。

白内障の根本治療は手術療法

白内障の初期段階では症状に気付きにくく、左右どちらかの目に異常を感じても、残ったもう片方の目でカバーしようとするため発見が遅れることもあります。

白内障の程度が軽度の場合は点眼薬で治療をおこないますが、点眼薬による治療の目的は、進行を遅らせることであり、いずれは手術が必要となります。病態が進行して日常生活への影響が大きくなると、手術での治療をおこないます。

罹患率が非常に高い病気ではありますが、適切な時期に適切な手術を受けることでほとんどのケースで見え方が改善されます。

ポピュラーな白内障手術は日帰りもOK

白内障の手術は、局所麻酔でおこないます。眼球の処置となるため心配は尽きないと思いますが、現在日本では年間140万件ほどの手術がおこなわれており、設備の普及によって大病院だけではなく、身近な診療所・クリニックでも手術できるところがあります。

手術の内容は、混濁した水晶体を取り除き、眼内レンズを移植することです。かつては日常生活が困難な状態に陥ってから手術をすることが多かったのですが、現在はQOV（見え方の質）の向上を目的としておこなわれるようになっており、眼内レンズの選択が非常に重要です。

医師の執刀による従来の方法のほか、現在では手術工程の一部を、レーザー照射（フェムトセカンドレーザー）によって処置できるようになりました。手術時間はわずか15～20分程度で済むので、入院せずにおこなうことが一般的になっています。

白内障手術の注意点

白内障手術における注意点として、万が一の失明のリスクを回避するため、同時に両目を手術することは不可能です。両目とも手術する必要がある場合は、通常は日を分けておこないます。

手術後は目の違和感や視界不良などを生じることが多いため、自動車の運転は控えるよう指導されることが多いです。手術当日は飲酒も避けることが望ましいでしょう。

また、白内障手術後に最も多く生じる合併症に、後発白内障があります。術後しばらくは視力が改善していたのに、徐々に視力低下やかすみが出てくる場合、必要に応じてレーザー治療をおこなうことで、症状は改善します。治療後には一時的に、目の前に浮遊物が見えるように感じる飛蚊症を生じることが多いですが、事前に説明をしてもらえると思いますので、安心してください。

終わりに

白内障治療は医療技術の発達により、より安全な手術が可能になりました。高齢になるほど発症率が高くなり、多くの方が発症する病気の一つですが、個人差もあるため、少しでも目に違和感を覚えたらまずは眼科を受診するようにしましょう。

■参考文献
白内障とは｜白内障と白内障手術
白内障 - 目の病気百科｜参天製薬
レーザー白内障手術 _ 白内障治療 - 森井眼科医院
ワンランク上のレーザー白内障手術 _ 中京眼科 _ 愛知県名古屋市