介護のお役立ちコラム
自宅に居ながら医療サービスが提供される「訪問看護」。住み慣れた場所から移動することなく処置が受けられる訪問看護に対するニーズは増えています。今回は、訪問看護で受けられる内容や注意点、「訪問介護」で受けられるサービスとの違いなどについて解説していきます。
地域に住まい、暮らすことの重要性とマッチした医療体制
訪問看護とは、自宅や高齢者向けの入居施設に居ながら医療などを受けられるサービスです。病院または訪問看護ステーションに所属する看護師などの医療従事者が定期的に自宅を訪問し、問診、傷の処置や医療行為で使う装置・器具の設置交換、メンテナンスなどを実施します。
「地域包括ケアシステム」が提唱されるようになってから、住み慣れた場所で自分らしく最期まで暮らそうという機運が高まってきました。日本人の長寿命化、核家族化に伴う独居高齢者の増加といった社会問題に加えて、慢性的な病院(病床)の混雑といった問題もあり、全国各地の医療機関が看護師などの専門職を派遣する体制づくりに努めてきました。
訪問看護の主なサービス内容
訪問看護で受けられるサービスは以下のとおりです。
●健康状態の確認(体温、血圧、脈拍などのバイタルチェック)
●点滴、吸引、注射、心臓カテーテルなどの処置
●人工呼吸器など医療機器の管理、点検、交換
●服薬指導
●褥瘡(床ずれ)予防のための体位変換
●食事、排せつなどの介助ケア
●リハビリテーション指導
●ターミナル(終末期)ケアの実施
●その他、日常生活における相談
訪問看護は看護師だけでなく、保健師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士といったエキスパートが関与しています。そのため、単純に医療行為だけにとどまらず、闘病生活を終えたあとのリハビリなど社会復帰までを視野に入れた包括的なケアが提供されているのです。
要介護の高齢者は1割負担で訪問看護サービスを受けられる
訪問看護は病気、ケガや何らかの障害がある人ならば誰でも受けられますが、主治医による「訪問看護指示書」が必要となります。派遣される看護師などはこの指示書に基づいて医療サービスなどを提供します。
受診料に関しては、一般の通院時と同じように国民健康保険や社会保険などの「医療保険」が適用されます。そのため、3割の患者負担で済みますが、要介護または要支援認定されている高齢者の場合、「介護保険」からの給付の対象となり医療保険より優先される仕組みです。そのため、介護保険適用の場合は原則1割(ただし、高所得者については2~3割)の患者負担となります。
訪問看護を希望する場合は、まずは主治医に相談して訪問看護指示書を作成してもらいましょう。合わせて介護保険適用の条件を満たしている場合はケアマネジャーに相談し、ケアプラン(介護サービス計画書)に組み入れてもらう必要があります。特に高齢者の場合、長期に及ぶリハビリを必要とする方も多いことから、介護保険を利用しながらリハビリの名目で訪問看護サービスを受ける方もいます。
「訪問看護」と「訪問介護」の大きな違い
ここまでの説明では訪問看護と訪問介護の境目がわかりにくいことかと思いますが、両者の違いに着目してみます。
訪問介護のサービス内容は、大きく以下の2つに分かれます。
①食事、入浴、排せつ、移動(移乗)などの身体介助
②買い物、部屋の掃除、調理、通院への付き添いなどの生活援助
訪問看護では、①の身体介助はサービスの提供範囲となりますが、②の生活援助は医療行為に該当しないため訪問看護サービスでは提供されません。もっとも、リハビリや体位変換も正確には医療行為には該当しませんが、身体機能が正しく回復することで、将来的に療養生活から脱出する(=医療を必要としない健康状態を取り戻す)見込みがあることから、これらは訪問看護サービスの領域に含まれています。
翻って、訪問介護は介護福祉士や介護職員初任者研修の修了者といった福祉系の有資格者がおこなうことが多いのですが、痰の吸引や胃ろうなどの一部を除いた医療行為に携わることは禁止されています。ここ最近、「医療」と「介護」の垣根を取り払った包括的なケアが推奨されていますが、思わぬ事故につながる恐れがあるため、ケアプランに記されていないサービスや医療行為をホームヘルパーなどに依頼することは慎むようにしてください。
利用料金の目安
「介護保険」の適用が認められ、かつ利用者1割負担の場合、支払う自己負担額は概ね以下のとおりとなります。一般的に、病院などの医療機関が提供する訪問看護と比べ、独自に訪問看護ステーションを運営する事業者の方がやや割高となります。また、利用料金については自治体やサービス提供事業者によって異なるので、金額はあくまで目安となります。
基本料金
・20分未満 ... 337円
・30分未満 ... 506円
・30分以上60分未満 ... 885円
・60分以上90分未満 ... 1,212円
時間外料金
・早朝および夜間(18時以降) ... 上記の金額×25%増し
・深夜(22時以降) ... 上記の金額×50%増し
特別管理加算(Ⅰ、Ⅱ)
難しい処置が必要な場合に加算される料金です。Ⅰは悪性腫瘍に罹患しているケースや留置カテーテルがあるなどの患者への対応。Ⅱはストーマ(人工肛門、人工膀胱)や重度の褥瘡がみられるなどの患者への対応となります。
・特別管理加算Ⅰ ... 542円
・特別管理加算Ⅱ ... 271円
複数名訪問加算
看護師などを2人派遣した際にプラスしてかかる料金です。
・複数名訪問加算 ... (30分未満)275円、(30分以上)435円
ターミナルケア加算
死期が近い患者におこなう看取りのケアです。
・ターミナルケア加算 ... 2,168円
このほか、訪問料金(交通費)が発生する場合もあります。特に地方部では、1つの病院や訪問看護ステーションがカバーするエリアも広大になるため、交通費を請求するケースが多いようです。
その他、訪問看護利用時の注意点
自宅療養を希望する患者にとってメリットが多い訪問看護ですが、いくつか注意しなければならない点もあります。
早朝深夜や土日対応がNGな事業所もある
事業所によっては24時間体制でなく、土日祝日や早朝・深夜帯の訪問を受け付けていない場合もあります。訪問看護専門のステーションでは比較的24時間365日対応の所が多いようですが、病院などの医療機関系では人員確保が難しい面もあって、時間や曜日に制限を設けている所もあります。緊急時のことを考えると、入院に比べ在宅療養には不安が残る点は否めません。
介護保険適用の場合は利用限度額に上限がある
介護保険適用時の自己負担額は最小で1割ですが、そもそも介護保険には、利用者の要介護度によって利用限度額が定められているため、これをオーバーする場合は全額自己負担となってしまいます。また、ほかの介護サービスも合わせて利用している場合、そちらとの兼ね合いもあります。訪問看護を利用する日数や時間については、必ず主治医やケアマネジャーと相談して、不必要なケアまで受けないよう綿密に計画を立ててください。
考え方によっては外出の機会を奪ってしまう
自宅に居ながら医療やリハビリを受けられるメリットは多いですが、考え方によっては貴重な外出の機会を奪ってしまうことになります。病院への行き帰りだけでも十分なロコモティブシンドローム(運動器の機能不全)予防につながりますし、待合室でほかの患者とおしゃべりするのを楽しみにしている高齢者もいます。自宅に居る時間が長くなることによって、さまざまな面で意欲が失われることのないように、家族は配慮する必要があります。
終わりに
各医療機関や専門の事業者も訪問看護のサービス拡充に力を入れています。そして、新型コロナウイルスが猛威を振るう現在、外部との非接触により感染リスクを軽減できるメリットも注目されています。高齢者が住み慣れた家で安心して家族と暮らし続けることに寄与する訪問看護にさらなる期待が高まります。
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