介護のお役立ちコラム

【医師監修】在宅酸素療法(HOT)の機材や医療費について|介護のコラム

【医師監修】在宅酸素療法(HOT)の機材や医療費について|介護のコラム

更新日:2021.06.09

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様々な病気を抱えながらも、自宅で療養生活を送る人は多くいます。なかでも慢性的な呼吸不全や心不全の場合、在宅酸素療法を導入するケースが多いようです。

在宅酸素療法に対して「大がかりな装置が必要?」「行動が大きく制限されるのでは?」など懸念される方もいますが、医師の指導のもと適切に処置すれば、大きく自由を阻害されるようなことはありません。今回は、在宅酸素療法の概要や種類、注意点について詳しく見ていきましょう。

【監修者】木村 眞樹子医師

医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。

木村医師_顔写真

長生きのためにも必要な酸素療法

「在宅酸素療法」とは、血液中の酸素濃度が足りない人に対して、機械や装置を用いて酸素を取り入れる治療法を指します。英語の頭文字(Home Oxygen Therapy)を取ってHOT(ホット)とも呼ばれています。

大気中の酸素が占める割合は約20%ですが、呼吸不全や心不全の人は口や鼻から空気を取り入れるだけでは酸素の供給量が足りません。そこで機械や装置を用い、鼻カニュラ(鼻の穴に通すチューブ)を通じて濃度の高い酸素を体内に取り入れます。

その場合、定期的な機材のメンテナンスや通院が必要となります。しかし、自宅に居ながらほぼ普段通りの生活を送れるため、介護で重要視されるQOL(生活の質)には大きな影響はありません。医師の指導を守って在宅酸素療法を続けることで、寿命の向上も期待できます。

酸素が欠乏すると身体にどのような異変が起こる?

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次では、体内の酸素濃度が低下した場合に体に起こる異変について見ていきましょう。

まず肺の機能は、空気中の酸素を体内に取り込むことです。しかし、肺の機能に問題がある場合、必要な量の酸素を取り込めなくなります。酸素は血液中を流れて全身の器官に運ばれますが、酸素が不足すると臓器は正常に働くのが難しくなります。

そして低酸素状態になると、初めに息苦しさを覚え、簡単な運動だけでなく徐々に日常のあらゆる動作が難しくなっていきます。そのうち全身の筋肉が衰え、日常の呼吸ですら正常にできなくなってしまうのです。

やがて血液を送る心臓の機能が弱まり、心不全などを引き起こす可能性も高まります。このように、酸素の欠乏は生死に関わる重大な危機となるのです。

在宅酸素療法の種類

次に、在宅酸素療法に用いる機械・装置の紹介をします。いずれも使用におけるメリットやデメリットがあり、どういった種類を選ぶかは医師と相談したうえで決めることになります。

酸素濃縮装置

大気中の窒素を装置内で吸着させ、高濃縮の酸素を作り出す機械です。電源があればどこでも使えて操作方法も容易なうえ、煩雑なカートリッジ交換の手間などもありません。欠点としては、大がかりな移動が難しいため、自宅や病室でしか使えず、停電など緊急時の対策も必要です。非常時の備えとしては、携帯型の酸素濃縮装置を用意しておきます。

液化酸素装置

-189℃で液化した酸素をボンベ(親容器)に充填し、体内に送る装置です。最大のメリットは、電源が不要な点です。携帯用のボンベ(子容器)に酸素を詰め替えることで、自由な外出も可能になります。デメリットとしては、液化酸素の子容器への詰め替え作業が煩雑で酸素濃縮装置に比べると保全性も劣ります。また、それなりの重量があるため、子容器の持ち運びには体力的な負担が大きくなる点も否めません。

在宅酸素療法を行ううえでの注意点

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続いて、在宅酸素療法を行う際の注意点を見ていきましょう。毎日のことであるがゆえ、使用する本人はもちろん、日々の介助や病院への付き添いをする家族も注意しておかなければならない事項です。

月1回の定期検診を受ける

在宅酸素療法を実施するにあたり、月に最低1回以上、医師の問診が必要となります。装置に不具合がないか、決められた酸素容量が守られているか、痛みや不快なく患者さまが治療に専念できているかなどを観察します。定期検診を怠ると、後述する減免措置が受けられなくなる可能性もあります。

機材の取り扱い

酸素濃縮装置、液化酸素装置の使用には、いくつか注意点があります。
酸素濃縮装置を使用している場合、停電時の対策を考えておきましょう。たとえば、非常用バッテリーを内蔵したタイプをリースしたり、液化酸素装置を予備で用意したりする方法があります。集気するフィルターにホコリが付着すると性能をフルに発揮できなくなるため、予備のものもこまめに清掃するようにしましょう。

液化酸素装置の場合、親容器への液体酸素の充填は業者が行います。常に残量をチェックして、酸素を切らさないように注意しましょう。携帯用の子容器に移し替える場合は、患者さまもしくは家族が行います。その際は、必ずマニュアルに従って進めるようにしてください。

高濃度の酸素は引火性が非常に高いことから、ボンベを火に近づけることはご法度です。キッチンや石油ストーブの近くに置かず、火器類からは2m以上離しておきましょう。当然、酸素吸入時の喫煙は危険なので止めるようにしてください。

外出時の制限(公共の場への持ち込みなど)

携帯用のボンベがあれば、行動範囲は広がります。一方で、安全上の理由から制限を受けることもあります。原則、電車やバスなどにボンベを持ち込むことは許可されていますが、飛行機の場合は別途手続きが必要になります。火を使うキャンプ場などでは入場制限の対象となる可能性もあります。必ず、来訪する施設や利用する公共交通機関のガイドラインを事前にチェックするようにしましょう。

在宅酸素療法の費用と個人負担

大がかりな装置を導入することから「在宅酸素療法はお金がかかるのでは?」と心配する方も多いでしょう。在宅酸素療法は医療保険の対象となるため、機材のリース、ボンベの交換などにかかる個人負担は1~3割です。 月額にすると、1割負担の場合は7,680円、2割負担で15,360円、3割負担で23,040円となります。

また、高額療養費制度や高額介護合算療養費制度を利用すれば、減免措置を受けることもできます。その場合、費用は後日還付されます。詳しくはかかりつけ医師や居住する市区町村の国民健康保険相談窓口、介護サービスを受けている場合は地域包括支援センターに相談しましょう。

在宅酸素療法が必要な方でも入居可能な施設もある

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呼吸不全や心不全の方でも、適切な処置を行うことで自宅で暮らし続けることが可能です。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で暮らす場合も同様で、全国の施設で在宅酸素療法が必要な患者さまの受け入れを実施しています。

なかには、提携先医療機関による医療サポートが受けられたり、看護師が常駐して24時間体制で対応してくれたりするホームもあります。希望する条件を整理して、ご自身に合った施設を探してみましょう。

 

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