介護のお役立ちコラム

【医師監修】インスリンの働きと注射の方法|介護のコラム

【医師監修】インスリンの働きと注射の方法|介護のコラム

更新日:2021.05.07

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人間の体の器官にはさまざまな役割がありますが、それらが正常な働きを維持できるよう、脳からの指令によってホルモンが分泌されています。血糖値を下げる働きのある「インスリン」もその一つ。ところが、何らかの要因でインスリンが正常に分泌されず、注射によって補わなくてはいけない人もいます。インスリン注射はどのような場合に必要になるのでしょうか?


【監修者】
木村 眞樹子医師

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医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。


食後に急上昇する血糖値を抑える働きのあるインスリン

インスリンはすい臓から分泌されるホルモンで、血糖値を下げる働きがあります。人間の体は食事をとった際に大幅に血糖値が上がりますが、このとき、すい臓から分泌されたインスリンによって、体内に取り込まれた糖分はエネルギーへと変換され、同時に血液中の糖分が一定に保たれるよう血糖値が調整されます。

ところが、ある要因によってインスリンが正常に分泌されず、食事の後も血液中の糖分が分解されず血糖値が上がったままの状態になります。このようにすい臓の機能が正常に働かない場合、注射によってインスリンを補う必要があります。

糖尿病によってインスリンが正常に分泌されなくなる

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インスリンが正常に分泌されない理由は糖尿病です。糖尿病は大きく分けて2種類(2型と1型)あります。

2型は、血糖値を下げるのに必要なインスリンが十分に分泌されない(インスリン分泌不全)、または十分に作用しない(インスリン抵抗性)タイプで、糖尿病患者の大半はこの2型に当てはまります。一方で1型は、すい臓がインスリンをまったく作り出すことができないタイプで、患者数は全糖尿病患者の1割にも満たない数字です。

発症理由について、1型は先天的要因が強く、遺伝によって幼少期に糖尿病が発症することが多くあります。2型については、40歳を境に糖尿病と診断される人が増加傾向にあることから、遺伝以外に肥満体系や生活習慣の乱れ(偏食、運動不足など)が原因とも考えられています。

改善方法としては、2型で初期の糖尿病の場合は、食事、運動など生活習慣の改善と服薬による治療を試みます。しかし、症状が悪化してくるとインスリン注射によって血糖値の低下に必要なインスリンを補わなくてはなりません。1型の場合は年齢や症状に関係なくインスリン注射が必須となります。

インスリン製剤の種類

インスリン注射には、1日1~2回決まった時間に注射するものと、食後の血糖値の急上昇を抑えるために食前に注射するものとに大別されます。詳しくは以下の6タイプに分類されますが、実際どの製剤を選ぶかは年齢や体格、糖尿病の進行具合などによって異なるため、医師の指示に従うことになります。

超即効型インスリン製剤

食前に注射。個人差はありますが、インスリンの効果が表れるまでわずか10分ほどです。インスリンの作用が持続する時間は3~5時間です。

即効型インスリン製剤

食前に注射。超即効型と比べて効果が表れるまで時間がかかりますが、インスリン作用の持続時間はやや長めです。

中間型インスリン製剤

持続型の製剤で1日のうち決まった時間に注射します。インスリン作用の持続時間は約24時間です。

持効型溶解インスリン製剤

血糖値を下げる効果がほぼ1日中継続するなど安定した効果が望める製剤です。食事前や就寝前など決まった時間に注射します。

混合型インスリン製剤

超即効型または即効型と中間型を混ぜ合わせた製剤で、両者の効果が期待できます。基本的には食事の30分前に接種することになっています。

配合溶解インスリン製剤

超即効型と持効型を配合した製剤で、両者の効果が期待できます。食前に接種しますが、回数は1日1回、多くても朝夕食前の2回が限度です。

1日数回の注射は自身でおこなうことに

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上記のとおり、インスリン接種は1日数回にわたり注射することになります。毎日のルーティンゆえ、その都度病院へ行くのではなく患者自身が注射をすることになります。インスリン注射は、初めは不慣れで危なっかしく感じるかもしれませんが、注射針はより細く、痛みを軽減できる物へと進歩しているため、大きな心配は不要です。

最近は簡単に注射できるペンタイプの物が主流です。先端にピンのような針が付いていて、本体を手のひらで握り皮膚に刺します。製剤については、あらかじめ必要分が充填されたカートリッジを交換できるようになっているため、外出先でも手軽に注射できます。針の長さは4~8mmの範囲で用意されていますが、接種する人の体系(皮下脂肪の厚さ)によって選ぶことになります。

注射する箇所ですが、両腕、腹部周辺、大腿部(ふともも)のいずれかになります。どの部分が適しているかは医師のアドバイスを受けて決めます。また注射箇所も、皮膚へのダメージを軽減するために毎回同じスポットに集中しないよう、2~3cmずつ移動させながら注射するようにします。

インスリン注射時の注意点

インスリンを過剰に接種すると、今度は一気に血糖値が下がり低血糖に見舞われます。低血糖になると、めまいや体のふらつきに始まり、重度ではけいれんや意識喪失になり最悪死に至ることも考えられます。インスリンの用量は必ず守るようにしてください。

低血糖を防ぐために患者自身で血糖値を計ることもできます。注射前に血糖値を知ることで、常に適量の製剤を確認することができるため安心です。測定には血糖測定器本体と一緒に、穿刺器、穿刺針、試験紙を含めたセットが必要となります。これらは通販などでも購入できますが、性能や品質にばらつきもあるため、医師の推奨や実際に商品を購入した人の評価を基準に選ぶようにしましょう。病院からレンタルというかたちで血糖測定器を預かり、自宅で使用するパターンもあります。

最後に注射器や針の廃棄方法ですが、血液が付着していることなどから一般ごみとして廃棄することは絶対にNGです。ガラスびんや缶のケースなどに保管して、診察時に病院に持参し廃棄してもらうようにしてください。

終わりに

加齢とともに注意が必要な糖尿病ですが、インスリン注射が欠かせない糖尿病高齢者でも安心して入居できる老人ホームもあります。看護師による問診や定期巡回を実施している施設では、看護師によるインスリン管理、注射もできるため、有事の際も安心です。重度の糖尿病の場合、インスリン注射は永遠に継続しなくてはいけないことから、安心して暮らせる施設を選ぶようにしたいところです。

全国のインシュリン(インスリン)投与受入れ可能な施設特集はこちら

https://www.sagasix.jp/theme/insulin

 

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