介護のお役立ちコラム
一人暮らし、または同居する家族の力だけでは介護を担いきれない高齢者は、現在、介護保険法によって、さまざまな介護サービスを受けることができます。ただし、原則65歳以上の高齢者でなければ、介護保険のサービスを受けることはできないという規定があります。 では、若い年齢で介護が必要になってしまった場合はすべて全額負担となってしまうのでしょうか? いいえ、そうではありません。そういった方のために、障害福祉サービスという制度があるのです。今回は、障害福祉サービスの中から特に、「重度訪問介護」の仕組みや費用についてご説明していきます。
障害者区分4以上なら65歳未満でも利用できる、「重度訪問介護」
重度訪問介護とは、重度の肢体不自由または知的・精神障害によって、常に介護や見守りが必要な人が受けられる介護サービスを指します。 通常、高齢者に提供する介護サービスは老人福祉法に基づくものですが、重度訪問介護は障害者福祉に該当するもので、介護保険とは別の枠組み(障害福祉サービス)になります。 厚生労働省が定める重度訪問介護の対象者は、以下のとおりとなっています。
上記の条件を満たす人は、65歳以上の高齢者でなくとも重度訪問介護のサービスが受けられます。 具体的には、交通事故などで四肢を欠損、または脊椎損傷によって全身まひになった人や、筋萎縮性側索硬化症(ALS)・パーキンソン病・リウマチなどの難病に罹患して寝返りを打つことも難しいような重度の病気の人、そして重度の知的障害・精神障害を持っている人が対象です。
利用者1割負担、24時間体制の訪問介護サービス
重度訪問介護では、食事、排せつ、入浴介助から、調理、清掃、移動時の付き添いなど、生活上のあらゆる動作に対してヘルパーが介助をおこないます。 その大きな特徴は、24時間体制で介護サービスが受けられるということ。 通常の訪問介護では、ヘルパーはタイムテーブルにしたがって各家庭を巡回するため、サービスを受けられる時間は1日1時間程度の場合が一般的です。
しかし重度訪問介護では、体位変換(寝返りの補助)も含めた手厚い介護が必須となるため、ヘルパー3人による8時間ずつの交代制で介護にあたります。 ただし、同居する家族がいる場合、昼間はヘルパーに来てもらい、夜間は家族で介護にあたる家庭も多いようです。
このような手厚い介護システムによって、重度の病気で寝たきりになっても、ヘルパーのサポートを受けながら一人暮らしをしている人もいます。 サービスを利用できる時間は、1時間未満から最大24時間まで。1回の利用料金は1時間未満で1,810円、最大24時間利用した場合は34,910円ほどになります。このうち1割の3,491円が利用者の自己負担となります。また、ヘルパーを2人つける場合や、より重度の障害がある場合は、この金額に加算されることとなっています。
介護保険との併用は条件次第では可能に
冒頭で述べたとおり、重度訪問介護は障害福祉サービスに該当するため、介護保険の適用はできません。 前々から重度訪問介護をサービス受けていた人が65歳の誕生日を迎えた場合、これまでと同等のレベルの介護サービスが可能であれば、障害福祉サービスから介護保険サービスへと切り替わるのが一般的です。
しかし、介護保険のサービスでは補えないような支援や介護が必要な場合は、障害福祉サービスと介護保険の併用が認められています。また、65歳を過ぎた高齢者が、重度の要介護状態になった場合は、病気の種類、状態、要介護度などによって、重度訪問介護の適用が認められる場合もあります。
障害福祉サービス適用の可否や、両サービスの併用については、担当するケアマネジャーが作成するケアプランに基づき、住まいのある市町村が判定をします。ただし高齢による介護の必要と、病気による介護の必要との線引きが難しいこと、また担当するケアマネジャーの障害福祉への理解・知識も判定に左右してくるため、よほど深刻な要介護状態でないかぎり、認定に個人差が生まれているようです。
終わりに
重度訪問介護は、若くして重い障害を患ってしまった人々の家での生活を少しでも楽にするサービスですが、65歳以上の方でも条件次第では介護保険適用サービスとの併用も可能です。 介護する家族が重い障害を患っている場合は、「障害福祉サービスでできること」と「介護保険適用サービスでできること」について知識を身につけたうえで、ケアマネジャーと話してみましょう。
参考文献 障害福祉サービスの内容(厚生労働省) 重度訪問介護で暮らす‐難病ALS-(全国障害者介護保障協議会HP) 重度訪問介護利用料金表
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