介護のお役立ちコラム
介護が必要な人が年々増えていくなかで、問題となっているのが介護と仕事の両立。介護者が仕事をしながら介護を続けていくことは難しく、離職していくことも少なくありません
総務省(※1)によると、家族の介護・看護を理由に離職した人は1年で10万人を超えています。しかも、いったん離職してしまうと、収入がなくなったり再就職が難しくなったりと、さらなる問題を抱えてしまうこともあります。
そこで知っておきたいのが、介護を理由に休業したときにもらえる介護休業給付金。平成29年に「育児・介護企業法」が改正されたことで、有期雇用労働者や65歳以上の労働者に対する要件が緩和されるなど、うまく活用することで経済面の支えになる制度です。今回は、この介護休業給付金について解説していきます。
「介護休業給付金」ってどんな制度?
介護休業給付金とは、企業などで働いている人が介護休業制度を利用した時に賃金が著しく低下した場合に支給されるお金のこと。雇用保険の被保険者であり、要件を満たしていれば、正社員でなくても支給されます。
申請先は事業所の管轄となるハローワークですが、原則として申請手続きは事業主を通じて行います。給付を受けるにはさまざまな条件がありますので、次の項目で詳しく解説します。
介護休業給付金の支給要件について
介護休業給付金の支給を受けるには、いくつかの要件を満たす必要があります。その要件について、詳しくみていきましょう。
まずは介護休業を職場に申請しましょう
介護休業給付金の支給対象となるのは、まず大前提として職場に介護休業を申請して、認められている必要があります。以下の条件を満たす介護休業者は、介護休業給付の支給対象となります。
①怪我や病気、身体障害や精神障害で2週間以上の介護が必要な家族を介護するための休業
※この場合の家族とは、配偶者(事実婚を含む)、父母(義父母を含む)、子(養子も含む)、祖父母、兄弟姉妹、孫を指す
②介護休業を取得する人が、必要な期日を明らかにして、事業主に申請をして休業していること
職場によっては、「介護休業の制度がない」「クビなど不当な扱いを受ける可能性がある」という方もいると思います。介護休業は本来、就業規則に明記されているべきものです。また育児・介護休業法には、「労働者が介護休業を申し出た場合、事業主は介護を理由として、解雇その他不利益な取扱をしてはならない」という旨が明記されています。
万が一、介護休業の制度がなくとも事業主に申請し、要件が満たされていれば取得することができます。もし、介護休業の申請を断られたり、不当な扱いを受けた場合は、労働局に相談することをおすすめします。
正社員でなくとも大丈夫〜受給要件について〜
介護休業給付金を受給するためには、介護休業を取得する前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が12カ月以上あることが必要です。 被保険者期間とは、介護休業開始日の前日から1カ月ごとに期間を区切り、基礎賃金の支払い日数が11日以上ある月を1カ月として計算します。 被保険者期間が12カ月未満であった場合でも、労働者本人に疾病等があった場合は緩和される場合もありますので、そのようなケースの際はハローワークに確認してみましょう。 ただし、契約社員などの有期雇用労働者の場合は、さらに以下の2つの条件を満たす必要があります。
①同じ事業主のもとで1年以上働いていること
②介護休業開始日から93日を経過する日から6カ月がたつまでに、その労働契約が満了しないこと
申請は事業主を経由するのが原則基本
介護休業給付金の申請手続は、在職中の事業所を管轄するハローワークに必要書類を提出します。この申請手続は、原則として事業主を経由する必要があります。申請手続をスムーズに行うためにも、職場には自身の介護の状況を随時伝えておくと良いかもしれません。
プライベートなことで話しにくい、ということもあるかもしれませんが、法律で定められている正当な権利であり、金銭面で助けとなる制度です。まずはご自身の勤務状態と職場の就業規則を確認してみることから始めましょう。
支給額や支給期間について
支払額はどのくらい?
介護休業給付金の正式な金額は、ハローワークに提出される書類によって算定し決定されますので、事前にいくらもらえるかは正確にはわかりません。企業から休業中も賃金が支払われる場合は、その額によって給付金は減額される場合がありますし、給付額の上限もあります。
ただし、給付額の計算方法は以下のように決まっており、概算ですが給付額がどのくらいかをある程度把握することはできます。 介護休業給付金の給付額=休業開始時賃金日額×支給日数×67% なので、介護休業を取得する前の半年間の平均月収を見て、月収15万円なら給付額は約10万円、月収20万円なら給付額は約13.4万円となります。
支給対象期間について
介護が必要な家族1人につき、93日を限度に3回までとなります。
93日間(約3カ月)を限度に、3回に分けて介護休業を取得することができ、要件を満たしていれば、その日数に応じて介護休業給付金が支払われます。
例えば、
31日間✕3回=93日間 40日間+25日間+28日間=93日間
など要介護者の状態や必要に応じて、取得することができます。
同じ対象家族の要介護状態が変わるなどの変化があった場合でも、93日を越えてしまうと、再度介護休業給付金を受け取れないので、注意してください。
申請期限と支払い日は?
介護休業給付金を受給する場合、介護休業終了日の翌日から2カ月が経つ日が属する月末までに行う必要があります。
たとえば、11月18日に介護休業が終了した場合、2カ月が経過するのは1月18日。その月の月末が申請期限になるので、1月31日までに申請しなくてはなりません。
受理されると、「介護休業給付支給決定通知書」が届きます。実際に、給付金が振り込まれるのは、同書に書かれている支給決定日から1週間程度とされています。
気をつけたいポイント・注意点
介護休業給付金を受給する際、いくつか注意しておきたいことがあります。支給額に関わってくるポイントもありますので、事前にきちんと確認しておきましょう。
介護休業給付金の支給は復職後
介護休業給付金は、給与のように休業中に毎月支給されるわけではありません。
介護休業が終了した後に申請して受理されるものになります。結果として、休業した日数に応じて支援されることにはなりますが、休業中は支給されませんので、しっかりと経済的な計画を立てておきましょう。
介護休業給付金をもらえるのは職場復帰が前提
休業中に退職してしまった場合、残念ながら介護休業給付金を受給することはできません。退職しなくても大丈夫なように、ほかに家族がいる場合は交代で介護休業を取得する、休業中に復職できるよう環境を整えておくなどの工夫をする必要があるでしょう。
◎介護の対象が同じ家族である場合、93日が限度
介護休業の対象となる家族が同じである場合、介護度が変わったとしても、介護休業給付金の支給は93日が限度です。その限度を超えて支給されることはありません。
しかし、複数の被保険者がそれぞれ申請して、給付を受けることは可能です。もし、両親の介護で休業が必要な場合に兄弟がいる場合は、負担を分担することができます。
また、対象となる家族が異なる場合は、それぞれ受給資格を満たしていれば給付を受けることはできます。ただし、複数の家族の介護が同時に必要であった場合、対象とする家族をどちらかにする必要があります。給付金を重複して申請することはできないので、注意が必要です。
◎介護休業期間中に就労すると支給されない場合がある
介護休業期間中に働いた場合、その日数が1カ月のうち10日以下でなければ、介護休業給付金の支給対象とはなりません。
また、介護休業中に働いて賃金が支払われた場合、給付額の計算式である「休業開始時賃金日額×支給日数」の80%を超えた金額になると、給付額はゼロになってしまいます。80%に満たない場合であっても、賃金の額によっては減額されることがありますので、休業中の就労には注意しましょう。
まとめ
仕事を辞めてしまうのは簡単ですが、その後のことを考えると、決して容易にできる決断ではありません。介護をする時間は確保できますが、収入がなくなって経済的に困窮したり、精神的にも追い詰められたりしてしまう可能性もあります。 「育児・介護休業法」の改正により、非正規雇用や老々介護の実態に則したものになっていますので、仕事と介護の両立に困った際にきっと助けとなります。うまく活用して、仕事と介護を両立していきましょう。
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