介護のお役立ちコラム
認知症や寝たきりなど、高齢となった親の介護で重くのしかかるのが費用の問題。在宅介護でも介護施設の利用でもまとまった金額が必要となります。年金支給額や貯金残高に余裕がない場合は、期間が読めない介護に大きな不安を感じることでしょう。
そこで、この記事では在宅介護にかかる費用を算出し、介護施設を利用した場合を比較。現在、介護をされている方に経済的な視点から在宅介護と老人ホームの2択検討材料をご紹介します。これから介護をするうえでお金について気がかりな方は、ぜひ参考にしてください。
在宅介護にかかる費用は、月平均5万円
在宅介護にかかる費用は、2種類に分けられます。デイケア・デイサービスやホームヘルパー利用にかかる「介護サービス利用料」と、オムツ代や介護リフォームなどにかかる「介護サービス以外の費用」です。
家計経済研究所が2017年6月に発表した「在宅介護のお金と負担」によると、月々に在宅介護にかかる費用は平均5万円。うち、「介護サービス利用料」は1万6千円、「介護サービス以外の費用」は3万4千円でした。
しかし、この利用料を要介護度別で示すと、以下のようになります。
要介護度が高くなるにつれて、費用が高くなる傾向にあります。興味深いのは、要介護3から要介護4になると全体の費用はほぼ変わらないものの、「介護サービス以外の支出」の割合が高くなっていることです。
では、それぞれの項目をさらに詳しく見ていきましょう。まずは「介護サービス」の内訳を要介護度別に見ていきます。
介護保険は、介護保険法により要介護度別に月額の支給限度額が決められています。限度額の範囲内なら、介護サービスの自己負担分は1割(本人に一定以上の収入がある場合は2割)となります。しかし、限度額を超えた場合は、全額自己負担となります。
グラフ上には表れていませんが、多くの世帯が限度額の範囲内であった一方で、限度額を超える少数の世帯が大幅に支出していたことが分かりました。
次に「介護サービス以外の支出」の内訳を見てみましょう。こちらのデータでは、大きく4つの項目に大別されています。おむつや介護食などの「介護用品」と「医療費」「税・社会保険」と「その他」です。
要介護度4・5になると大きく支出が増えていることがわかります。特に「介護用品」と「税・社会保険」の割合は大きくなっています。なお、介護用品に関しては助成・還付を行っている自治体もあり、実際にはデータより低い負担で済んでいることが想定されます。
また「公益財団法人 生命保険文化センター」が2018年度に行った調査によると、月額平均7.8万円と算出されています。ただし、これは在宅介護に限ったデータではないので注意しましょう。
介護期間は平均して5〜10年
前述の「公益財団法人 生命保険文化センター」の調査では、介護期間の平均は54.5カ月(4年7カ月)です。前述の在宅介護にかかる費用の月平均額5万円を、あくまで要介護度や認知症の有無などを考慮しない「全体的な平均」として考えると、
5万円×54.5カ月=272.5万円
と算出できます。しかし、この調査は現在も介護を継続している人のデータも含まれるため、この数字はもっと高くなるでしょう。
さらに現在は平均寿命が伸びているものの、健康寿命は緩やかな変化しか見られません。現実的な計算方法として、目安として平均寿命と健康寿命(健康に問題がなく過ごせる期間)の差から導くという方法があります。厚生労働省の発表で明らかとなった2016年度の健康寿命と、同「2019年簡易生命表」による平均寿命で差を導いてみましょう。
男性は約9年間、女性は約13年間の差があります。期間が長くなるほど、介護費用はかかるため、仮に10年在宅介護を続けた場合は、600万円以上かかる計算となります。
老人ホームと比較すると、どちらがお得?
在宅介護にかかる費用についてご説明してきましたが、ここでは比較のために、在宅介護と高齢者福祉施設の費用の差についても紹介しましょう。
老人ホームは月々にかかる費用とは別に、入居の際に入居一時金という費用が発生する施設が多いため、留意しておきましょう。
有料老人ホーム
有料老人ホームには「介護付き」「住宅型」「健康型」の3種類があります。 入居一時金は、有料老人ホームの設備によって数十万円から数百万円かかる場合が多く、高級有料老人ホームともなると数千万円〜数億円かかることもあります。しかし、最近は入居金0円の施設も増えています。月額料金は、家賃や食費を含めると、平均して20〜25万円ほどとなっています。
有料老人ホーム | ||
入居一時金:0円〜数百万 | ||
---|---|---|
月額料金:平均20〜25万円 |
仮に、入居一時金が50万円、月額料金が20万円とすると、10年間で2450万円かかる試算となります。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは有料老人ホームよりも安価で利用できることで高い人気を誇っています。そのため入居には一定の条件(原則として「要介護3」以上)が設けられ、入居待ちの方も多くいます。 入居一時金はなし。月額は7〜15万円ほどと、有料老人ホームよりも安価となっています。
特別用語老人ホーム | ||
入居一時金:0円 | ||
---|---|---|
月額料金:平均7〜15万円 |
仮に月額10万円とすると、10年間で1200万円の試算となります。
サービス付き高齢者向け住宅
高齢者に向けてバリアフリーなどに対応し、高齢者が住みやすい賃貸住宅が、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)です。 入居一時金は0円〜数百万円と、施設によって大きく差があります。 月額料金は家賃や管理費を含めて15万円〜20万円ほどです。ただし外部の介護サービスを利用することになるため、要介護度が上がると退去を迫られるケースもあるので、注意してください。
サービス付き高齢者向け住宅 | ||
入居一時金:0円〜数百万 | ||
---|---|---|
月額料金:平均15〜20万円 |
仮に、入居一時金なし、月額18万円とすると、10年間で2160万円かかる試算となります。
経済的なコストだけを考えないこと
介護費用は状況により大きく変化するため、今回は要介護度や認知症の有無を検討せずに平均値で在宅介護と老人ホームを比較しました。
この数字だけ見ると、在宅介護のほうが圧倒的に費用を抑えられると感じられるかもしれません。しかし、 数年〜10年以上にも渡って家族の介護を続ける場合は、夜間や休日などの時間的拘束やストレスも大きなものとなります。
耐え切れなくなって、親子共倒れ、夫婦共倒れという事態は一番防がなければいけないことです。そのため、在宅介護について考えるときは、金銭的コストだけにこだわらず時間的・精神的コストも考えて判断するのも大切です。
要介護者の貯金や年金を切り崩す踏ん切りを
介護にかかるお金は、要介護者の貯金や年金から捻出されるケースが多いようです。介護者は、足りない場合に援助しましょう。親の口座に手をつけることに罪悪感を覚える方もいるかもしれません。
ただし、「介護にかかる費用」も踏まえての貯金や年金のはずです。 介護者が時間的にも経済的にも過度な負担を感じてしまうと、必ず苦しくなります。無理のない介護を続けるために、少しでも経済面での負担を減らすよう、意識するとよいでしょう。
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