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傾眠傾向には認知症のリスクも?傾眠の症状や原因、対策について解説|介護のコラム

傾眠傾向には認知症のリスクも?傾眠の症状や原因、対策について解説|介護のコラム

更新日:2022.03.08

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高齢者は加齢による体内時計の変化によって、早寝早起きをする方が多くなります。また、若い頃と比較して深く眠れている時間が変化し、眠りが浅くなる傾向にあります。そのため、高齢者が日中に眠るのはそれほど珍しいことではありません。しかし、実はそれが意識障害に陥っている可能性もあるというのをご存じでしょうか。今回の記事では、高齢者に多い意識障害の一つ、「傾眠(けいみん)」について、特徴や改善策を解説します。

傾眠とは? 症状が進行すると昏睡状態になることも

傾眠とは、肩をポンと叩いたり、声をかけたりといった低レベルな刺激で意識を取り戻す程度の軽度な意識障害です。眠不足などから来る一般的な「うたた寝」などとは異なり、高齢者に見られやすいがれっきとした意識障害なので注意が必要です。

1日中眠そうな様子が見られ、自ら動くことも少ないため、寝たきり状態につながる懸念もあります。

また、意識障害は、傾眠を含む以下の4つのレベルに分類されています。

1.意識清明(正常)

意識がはっきりしており、何の問題もなく意思疎通が図れる状態(正常)です。

2.傾眠

前述の通り、浅い眠りに落ちている状態です。声をかけるか、軽く体に触れると目を覚まします。ただし、そのままだと再び眠りに落ちてしまいます。

3.昏迷

傾眠よりさらに深い眠りに落ち、大声で呼びかけるか、体に強めの刺激を与えてようやく意識を取り戻す状態です。刺激に対して抵抗感や不快感を示すケースが多く、この段階で早めに対処するのが重要になります。

4.昏睡

最も重度な意識障害で、あらゆる外部からの刺激に対しても目を覚ますことはありません。一方で、排泄行為や脊髄反射はあるため、体の反応が見られない「脳死」とは異なる状態と言えます。

早めの対処が難しい理由として、一般の人には高齢者のうたた寝や居眠りが意識障害なのかどうか判別が付きにくいことがあげられます。

傾眠傾向になる原因

では、傾眠傾向になってしまう原因にはどういったものがあるのか、次で詳しく見ていきましょう。

認知症

認知症の初期症状の一つであるアパシー(無気力状態)が続くと、脳の興奮が少なくなり傾眠傾向になります。また、周辺症状(睡眠障害・興奮など、認知症の症状群)により昼夜逆転した生活が続く場合、夜間の睡眠不足に起因して傾眠傾向が見られるケースもあるようです。

慢性硬膜下血腫

転倒による頭の打撲などが原因で、脳と硬膜の間に血腫ができて、脳を圧迫してしまう病気です。血腫が肥大化すると、傾眠傾向が見られるようになります。さらに1~2か月程度経過して、頭痛や手足のまひによる歩行障害、認知症と同様の知能障害が起こる可能性もあります。多くの場合、治療には外科手術が必要です。

内科的疾患

腎臓や肝臓などの代謝に関わる内臓の機能が衰えていたり(代謝異常)、発熱などで体が休息を必要としている場合に、傾眠傾向になることがあります。投薬や睡眠によって体調が回復すると、傾眠も改善されるケースが多いようです。

脱水症状

脱水症状も傾眠傾向になる原因の一つです。高齢者はのどの渇きを感じにくく、体内に水分を蓄える機能が低下しているため、とくに注意が必要です。汗をかきにくい冬場でも水の摂取を勧め、拒否するようならお茶(夜間はノンカフェインが望ましい)などを出して積極的に水分補給を促しましょう。

薬の副作用

脳の興奮状態を抑える「抗てんかん薬」や風邪薬に代表される「抗ヒスタミン薬」には眠気を誘う成分が含まれているため、傾眠傾向が強くなることがあります。傾眠が疑われる場合、まずは用法用量を守って服用するように促しましょう。

●食後の低血圧

食後に血圧が大きく下がる「食事性低血圧」が要因の可能性もあります。食事性低血圧の典型的な症状は、めまいやふらつきです。人によっては強い立ちくらみや傾眠傾向を起こします。

パーキンソン病や高血圧、糖尿病などが原因とされます。これらの治療のために血圧を下げる降圧薬や糖尿病の薬を服用している人にも多い傾向があります。

過眠症

傾眠とよく似た症状に「過眠症」があります。夜間十分に睡眠を取っているにもかかわらず、日中に眠気を感じて眠くなってしまうといった症状が見られます。原因がわからない場合は、早めに医師の診断を仰ぎましょう。

加齢による身体機能の低下

高齢者は体力が低下しているために疲れやすく、気づかないうちに眠っていることがあります。加齢から来る傾眠傾向は自然な現象なので、深刻に考え過ぎる必要はありません。一方で、夜間にしっかり睡眠を取っているにもかかわらず昼間に寝ている状態が目立つような場合は、傾眠を疑ってみると良いでしょう。

傾眠に潜むリスクとは?

様々な要因で引き起こされる傾眠傾向が高齢者に見られた場合、日常ではどういったリスクが考えられるのでしょうか。

転倒や転落などの事故

意識障害は、急なふらつきなどによる転倒や転落の事故に直結します。骨折やその後の寝たきりなど重度の身体機能障害につながる恐れもあるのです。

誤嚥

意識障害の出ている状態で食事を強いると、誤嚥(ごえん)をしやすくなります。誤嚥とは、飲み込んだものが気管に誤って入ってしまう状態です。誤嚥は肺炎につながるリスクもあり、注意が必要です。食事介助の際は、高齢者本人の意識がしっかりしているかをまず確認し、ペースを乱さないように根気強く行いましょう。

せん妄(妄想、幻覚、幻聴など)

せん妄とは認知症の周辺症状の一つで、妄想や幻覚、幻聴などの症状が見られます。意識障害が続くと、せん妄のような症状に見舞われることもあります。心配な場合は早めに医師の診断を仰ぐと良いでしょう。

傾眠を改善するために家族にできる5つのこと

それでは、傾眠の症状を改善するために家族はどうするべきなのか、具体的な対処の方法を解説していきます。

1.積極的に声をかける

なるべく定期的に話しかけ、コミュニケーションを取る機会を増やします。声かけによって目を覚ましてもらい、脳の働きを活性化して眠る時間を減らすことで、症状の改善が期待できるでしょう。

声かけで起きない場合は、肩を触って(優しく叩いて)刺激を与えるのがおすすめです。

2.水分補給のサポートをする

傾眠傾向になる原因の一つに脱水症状があるように、こまめな水分補給が重要になります。誤嚥防止のために、コップに飲み物を少量ずつ入れて上体を起こした状態で飲んでもらいましょう。

3.散歩などの軽い運動を促す

昼間に散歩などの軽い運動で体を動かし、全身を活性化するのも良いでしょう。適度な疲労感を覚えることで、夜間の睡眠の質も向上します。生活リズムの乱れを整えるのにも効果的です。

4.薬の処方内容を見直してもらう

風邪薬などの副作用を軽減するため、医師に相談して処方薬を見直してもらうのも一つの手段です。市販の薬を服用する場合は、眠くなる成分を抑えた商品を選ぶと良いでしょう。

5.時間を決めて昼寝してもらう

日中にうたた寝してしまう場合は、時間を決めて昼寝してもらいましょう。長時間寝ると夜間に寝つけなくなるため、最大30分を目安に睡眠時間を設けるようにしてください。

傾眠傾向には、治療が必要な病気が潜んでいる可能性も考えられます。独断で対処せず、なるべく早い段階でかかりつけ医などに診てもらいましょう。処方された薬で症状が改善されるケースもあります。

「傾眠」と診断された場合、家族が心得ておくべき3つのポイント

傾眠には少なからず加齢が関係しています。そのため、過剰に心配をして本人を不安にさせないよう、以下のポイントを意識しましょう。

1.傾眠の症状をよく理解する

高齢者の居眠りやうたた寝は、意識障害の可能性もあることを認識しておきましょう。そのうえで、その原因や対策など基本的な知識をもって、注意深く本人を見守るのが早期発見のために重要です。

2.少しずつ改善を目指す

医師に傾眠だと判断された場合、家族はとくに早期の改善を望みがちです。しかし、改善には時間がかかる可能性もあります。焦って本人の不安を煽らず、こまめな声かけや生活習慣の見直しのサポートから取り組み改善を目指しましょう。

3.介護を一人で抱え込まず、周囲を頼る

同居する家族がいる場合は、役割分担をして取り組みましょう。かかりつけ医に相談したり、介護サービスを適宜利用してレスパイトケアを取り入れたりするのも大事です。

傾眠傾向に気づいたら早めに医師の診断を

高齢者の傾眠は、それがただの眠気なのか意識障害なのかは一般の人には判断しにくい症状です。意識障害の疑いがあり不安に感じるのであれば、早めに医療機関を受診し、医師の判断を仰いでみると良いでしょう。

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