介護のお役立ちコラム
暑い季節になると増えてくる熱中症。毎年熱中症で亡くなる方は高齢者が多く、特に注意が必要です。 そこで、この記事では熱中症の一般的な症状や予防方法と、もし熱中症になってしまった場合の対処方法についてまとめました。この夏の熱中症対策にぜひお役立てください。
【監修者】
木村 眞樹子医師
医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。
「暑いからかかる」わけではない?熱中症の症状や原因
熱中症の症状とは?
熱中症とは、高い気温や湿度が原因で起こるさまざまな症状のこと。暑いからといって全員が熱中症にかかるわけではなく、その人の体の状態などによっても、症状の有無や程度が変わります。
症状は軽いものだと、めまいや顔のほてり、体のだるさなど。ひどくなってくると、吐き気、頭痛や筋肉痛などを起こします。異常に汗をかいたり、皮膚が熱くなったり赤くなっている状態も熱中症の症状です。
熱中症は、重症になると自力で水分摂取をできなくなったり、意識障害や全身のけいれんなどを起こしたりしてしまい、最悪の場合は命を落としてしまうこともあります。
熱中症の種類について
熱中症の具体的な症状として以下のものがあります。
●熱失神
皮膚血管の拡張によって血圧が低下し、脳への血流が悪くなり発症します。主な症状はめまい、失神、呼吸や脈拍数の増加などです。
●熱けいれん
汗をかいた後、血液中の塩分濃度が低下することによって起こります。主な症状は筋肉痛、手足がつる、筋肉のけいれんなどです。熱けいれんで全身のけいれんに及ぶことはなく、全身のけいれんはさらに重症であることを示します。水分補給した場合でも、塩化ナトリウムなどを含まない水道水を飲んだ後に起こることもあります。
●熱疲労
汗をかいた後で水分の補給を怠ると、体が脱水状態になり全身の脱力感、倦怠感、悪心、めまいなどの熱疲労の症状がみられます。
●熱射病
体温が上昇し中枢機能に異常をきたした状態です。意識障害のほか頭痛、吐き気、めまいなどもみられます。また、臓器の血管が詰まることによって起こる臓器障害を合併する可能性もあります。
熱中症は重症度により3段階に分類され、熱けいれんはⅠ度、熱疲労はⅡ度、熱射病はⅢ度と重症といえます。熱射病ともよばれるⅢ度は意識障害や全身のけいれん、ショック状態など命にかかわる危険な状態です。近年は異常気象の影響もあり、真夏日(日中の最高気温が30℃以上)や熱帯夜(夜間の最低気温が25℃以下)が増えていることから、これからの季節、油断は大敵です。
熱中症の原因とは?
熱中症を引き起こす3つの要因は「環境」「からだ」「行動」です。通常、私たちの体は体温が上昇すると汗をかき、熱を発散することで、気温や湿度の上昇に対応しています。
しかし、あまりに気温や湿度が高かったり、部屋を閉め切っていたりといった環境だと、体がうまく対応できずに熱中症を起こしてしまうのです。 同じ環境や条件でも「子どもや高齢者、体調がもともとよくない人」などは、体温調節機能が低く、熱中症にかかりやすくなります。健康な人でも寝不足や二日酔いといった体調不良のときには注意が必要です。
また、炎天下での運動や作業、水分補給の不足なども熱中症を引き起こす原因です。 高齢者の場合、もともと熱中症になりやすいうえに、病気や体調不良になっても人に話さず我慢しようとする人もいらっしゃいます。
また、エアコンなども「もったいない」といって使いたがらない人もおり、そのような傾向がよけいに熱中症を重症化させる原因となってしまうのです。予防対策には早めの対応をおこなうことが、非常に重要になります。
熱中症になりやすい時期と場所
熱中症は気温や日差しが強い7~8月にかけて多く、この時期は病院へ緊急搬送される人も増えます。しかし、徐々に気温が上がり始める梅雨(6月)の時期も要注意です。梅雨の合間の晴れの日や梅雨明け直後に、まだ体が暑さに慣れていないことから熱中症を発症するケースも考えられます。
また真夏の時期でも、「直射日光が当たらない夜ならば安心」と考えるのは大変危険です。夜でも気温の高い熱帯夜に熱中症を発症することもおおいに考えられるからです。寝ている間、無意識のうちに体調を崩すこともあるため、就寝前に部屋の通気を確保する、エアコンのタイマーをセットしておくなどの環境管理に努めるようにしてください。
アスファルトやコンクリートで囲まれた場所は、地面からの輻射熱が強く、アスファルトが熱を溜め込むことから日が落ちた夜でも気温が下がりにくいため、より熱中症のリスクが高まります。風通しの悪い場所も注意が必要です。エアコンの室外機の周囲も温度が高くなることから、狭い場所で作業や庭仕事をする場合は十分に対策してからおこなうようにしてください。
熱中症には気温、湿度、輻射熱、大気の流れなどが関係していますが、これらを総合的に考慮した「暑さ指数」(WBGT:湿球黒球温度)というものがあります。この指標の数値が上がり熱中症のリスクが高まる場合には、自治体の防災無線で警告したり、インターネットを介してスマートフォンで知らせたりしてくれます。これから暑くなる季節、周囲の情報をキャッチして熱中症予防に役立ててください。
最悪の事態を避けるために、熱中症を予防する方法
重症になると意識障害などを起こし、取り返しのつかない事態になってしまう可能性もある熱中症。予防するためにはどのような対策をしたらよいのでしょうか。
計画的な水分・塩分の補給
汗をかきすぎて脱水状態になると、熱中症を起こしやすくなってしまいます。特に高齢の方はもともと体の水分が少なく脱水症状になりやすいため、喉が乾いたと感じる前に、工夫してこまめに水分をとるように促しましょう。
こまめに水分をとるには、1日のスケジュールの中で水を飲む時間を決め、習慣化するとよいでしょう。「起床時、食事の前後、おやつの時間、入浴の前後、就寝前などにコップ1杯ずつ」と決めれば、家族もご本人も水分をとりやすくなります。 水分をとるときは、塩分も一緒にとることが大切です。
実は、体の水分が汗として排出されるときには、塩分も一緒に排出されています。体内の塩分量が低くなると体の機能が低下しますので、塩分などが調整された経口補水液を飲んだり、梅干しや塩分補給用の塩飴を食べるなど、塩分を補給する工夫をしてみましょう。
ただし持病を持つ方は、水分や塩分のとりすぎを控えたほうがよい場合があります。摂取量は主治医と相談してから決めるようにしましょう。
涼しく過ごせるよう環境を整える
熱中症を防ぐためには、まわりの環境を整えることも大切です。高齢者のなかにはエアコンを使いたがらない方もいらっしゃいますが、「熱中症を防止するため」という目的を伝え、エアコンや扇風機をうまく利用して27〜28℃前後に室温を管理しましょう。
室内に温度・湿度計を置いて、どのくらいの気温なのかが一目でわかるようにしておくのもよい方法です。 また、テレビなどの天気予報では暑さ指数が発表されています。暑さ指数は指数によって、それぞれ以下のように行動が推奨されていますので、指数を参考にしてみましょう。
・「25〜28℃」で、運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる。
・「28〜31℃」で、外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。
・「31℃以上」では、高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きく、外出はなるべく避けて涼しい室内に移動する。
体に熱がこもると熱中症になりやすくなりますので、体温を下げるために風通しのよい素材の衣類を着ること、直射日光を避けるために、出かけるときは帽子や日傘を利用することも心がけます。
また近年では、外出時に使えるスカーフなどの冷却グッズも増えているので利用を検討してみてください。
日中の外出や屋外の作業は控えめに
日差しが強い時間帯に外出をしたり、庭仕事などの屋外の作業をすると体温が上昇し、熱中症のリスクが高まります。外出するなら気温がまだ上がり切っていない午前中や、気温が下がってきた夕方などにしたほうがよいでしょう。 また、外へ出るときは日陰を歩いたり、日傘などを使ったりして直射日光を避け、いつもよりこまめに水分をとるようにするなどの工夫も大切です。
体調管理につとめる
熱中症を防ぐためには、普段から体調管理につとめておくことも大切です。体調が悪くなると体温調節機能がうまく働かずに、熱中症にかかりやすくなってしまいます。十分な睡眠をとり、栄養をしっかりととって体調を崩さないように注意しましょう。
熱中症になってしまったらするべき「4つ」のこと
かからないよう気をつけていたつもりでも、熱中症になってしまうことがあるかもしれません。もし熱中症かなと思うような症状があれば、以下の手順に沿って早めに対策をしましょう。
①意識の有無の確認
まずは意識の有無を確認しましょう。気づいた時点で意識がなければ、すぐに救急車を呼びます。意識はあるようだけれど、「反応がいつもと違う」「話し方がおかしい」といった場合は、なるべく早く病院に向かいましょう。
②涼しい場所に移動させる
次に、本人を涼しい場所に移動させます。室内ならば冷房の効いた場所に、屋外ならば日陰などに移動させてください。可能であれば、衣類をゆるめたり脱がしたりして、体にこもった熱を逃がしてあげましょう。 もし手元に冷却材や氷があれば、首や脇の下、足の付け根などを冷やします。なければ水を皮膚にかけて、うちわなどであおいでもよいでしょう。
③水分の補給
涼しい場所に移動ができたら、水分を補給させます。このとき、汗をかいたときに失われる塩分を同時に補給するため、ミネラルウォーターなどではなく、スポーツドリンクや経口補水液を飲ませてください。咳きこむことを防ぐため、水分は少しずつ飲ませましょう。吐き気や嘔吐を訴えている場合は無理に飲ませてはいけません。
④症状がひどい場合は医療機関に
水分を自力で飲むことが難しい場合は、内科などの医療機関を受診しましょう。医療機関では、点滴で水分を補うなどの処置をしてもらうことができます。医療機関の受診は救急車の要請でもいいですし、救急外来などを受診してもかまいません。 熱中症にかかった後に、対応の間違いや遅れが出ると、取り返しのつかない事態になってしまうことがあります。「もしかして」と思ったときは速やかに対応し、できれば病院へ行くようにしましょう。
熱中症は防ぐことができる
熱中症は工夫次第で防ぐことができ、もし発症してしまっても早めに対応することで最悪の事態を避けることができます。 ご紹介した予防方法や対処方法をぜひ家族全員で共有してください。家族全員で熱中症に気をつけながら、暑い夏を乗り切っていきましょう。
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