介護のお役立ちコラム
私たちが介護サービスに支払う料金(自己負担)は、かつては医療保険と同じ1割負担に統一されていました。しかし、3年に一度見直される介護保険法の改正を経て、一部の高齢者の負担割合が増えてきました。今回は、介護保険における自己負担額の決定基準をおさらいしてみます。
被保険者の所得に応じて、自己負担は1~3割に拡大
ひと昔前まで、介護保険サービス利用時に支払う自己負担の金額は1割に固定されていました。ところが2015年の介護保険法改正時に、一定以上の所得がある高齢者の負担割合が2割に引き上げられ、その次の2018年の改正時には、より多くの所得がある高齢者の負担割合が3割に引き上げられました。
段階的に介護保険の利用者負担割合が引き上げられた背景には、少子高齢化にともない介護保険財源がひっ迫してきたことが挙げられます。2015年時の引き上げについては、やみくもに高額所得者から搾取する目的ではなく、介護サービス利用者の中から所得の多い上位20%の人に多めに負担してもらう目的でした。ところが2018年時の引き上げでは、"現役世代並み"の収入がある高齢者に対して一様に負担してもらおうというスタンスになりました。
引き上げは公平性を守るため
ここで言う「所得」とは、大きくは年金収入とその他の所得になります。年金収入については、単身者の場合と、配偶者(65歳以上)を含めた場合とでは世帯年収が異なってきます。
その他の所得は、不動産など保有している資産や株の配当金などの、いわゆる"不労収入分"になります。特に、アパート、農地、駐車場の賃貸から得られる収益は決して小さな金額でなく、個人差はあるものの、一般的な会社勤めをしていた高齢者との差は極めて大きなものです。
自己負担割合が最大3割に引き上げられた際、「老人いじめ」とマスコミで取り沙汰されました。それでも、社会福祉は全国民が享受できる最低限の権利であり、近い将来、介護を受ける可能性は誰にでもあることを考えると、やはり自己負担額の引き上げは避けられなかったと考えるべきでしょう。
自己負担額の決定基準
それでは、どのような基準で1~3割の負担が決定するのでしょうか? 介護サービス利用時の自己負担額は以下の条件で決まります。
1割負担(据え置き)となるケース
・本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満。かつ年金収入とその他の所得金額の合計が、単身世帯で280万円未満、2人以上の世帯で346万円未満
・本人の合計所得金額が160万円未満
2割負担となるケース
・本人の合計所得金額が220万円以上。かつ年金収入とその他の所得金額の合計が、単身世帯で280万円以上340万円未満、2人以上の世帯で346万円以上463万円未満
・本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満。かつ年金収入とその他の所得金額の合計が、単身世帯で280万円以上、2人以上の世帯で346万円以上
3割負担となるケース
・本人の合計所得金額が220万円以上。かつ年金収入とその他の所得金額の合計が、単身世帯で340万円以上、2人以上の世帯で463万円以上
このほか、介護保険第二号被保険者(40~64歳)、住民税非課税者、生活保護受給者は所得に関係なく1割負担と定められています。
介護保険が適用される施設やサービスについて
介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保険施設、介護療養院 の3施設)
介護付き有料老人ホーム
認知症グループホーム
小規模多機能型居宅介護
通所介護(デイサービス)
短期入所生活介護(ショートステイ)
訪問介護
訪問入浴サービス など
以上が、主に生活支援や身体介助を受ける介護サービスになります。これ以外にも、昇降機能のある電動ベッドや歩行器、褥瘡予防のマットといった介護用品をレンタルできる福祉器具貸与サービスや、自宅をバリアフリー改修できる住宅改修も介護保険の適用範囲となっています。一方で、早朝・深夜帯の訪問介護(または看護)、デイサービス事業者が提供する宿泊サービス(お泊りデイ)、行楽や買い物目的での介護タクシーの利用などは、現在のところ介護保険サービスの対象外となっています。
住宅改修の場合、上限が20万円に定められているため、自己負担額は1割負担の場合、わずか2万円で済みます。なお住宅改修は、手すり、スロープの取り付けに始まり、浴室暖房機の導入や、便器を和式から洋式に換えるなど、どうしても大がかりになってしまいます。こういったバリアフリー改修については、介護保険とは別に自治体が独自で補助金を支給するケースもあります。詳しくは住まいのある市区町村の福祉課に問い合わせてみてください。
利用限度額と自己負担額について
介護保険には利用限度額が定められており、その金額は要介護(または要支援)度によって上下します。基本的には介護支援専門員(ケアマネジャー)との話し合いでケアプランが組まれることになります。この金額を上回るサービスを希望する場合は、全額10割自己負担となります。
要支援1 5,032単位 50,320円
要支援2 10,531単位 105,310円
要介護1 16,765単位 167,650円
要介護2 19,705単位 197,050円
要介護3 27,048単位 270,480円
要介護4 30,938単位 309,380円
要介護5 36,217単位 362,170円
※東京都文京区の場合。単位と金額は地域により変動することがあります。
次に具体的な自己負担額を見てみます。例えばデイサービスの場合、1回の利用料金が1万5,000円(※)だったとします。このとき1割だと自己負担額は1,500円。3割負担では4,500円になるため、その開きは決して小さくありません。これがより要介護度の高い特別養護老人ホームなどの居住者になると、介護サービスに対する月間の自己負担額が2万円(※)と仮定した場合、3割負担では6万円。年間にして48万円の差になります。
※介護保険適用となるのは利用料金と認知症対応などの加算料金のみです。居住費や食費、レクリエーション費用などの費用は全額利用者側の自己負担となります。
終わりに
将来、介護にかかるお金を考えるにしても、いま元気な時点では想像することは難しいでしょう。それでも来たる時に備えて、ある程度の費用感やキャッシュフローの仕組みは掴んでおきたいところです。今後、介護保険を取り巻く環境は一変するかもしれませんが、収支の確認や貯蓄などできる限りの準備は早い段階で済ませておくようにしましょう。
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