介護のお役立ちコラム
【最終更新日:2025年4月23日】

「親の介護が必要になったけど、自己負担額はいくらになるのだろう」「老人ホームに入居させたいが、費用が心配」。
親の介護が必要になった時、多くの方がこのような悩みを抱えます。特に仕事を続けながら親の介護をするのは身体的にも精神的にも大きな負担となります。老人ホームへの入居を検討する際、最も気になるのが費用面で、特に自己負担額ではないでしょうか。
本記事では、
介護保険の自己負担割合は1〜3割
この負担割合の仕組みは、個人の経済状況に配慮しながら、制度を持続可能にし、負担の公平性を保つことを目的としています。
基本的には1割負担
介護保険サービスを利用するとき、原則として利用者は費用の1割を負担します。これは介護保険制度が始まったときからの基本的な枠組みであり、多くの利用者にとって標準的な割合です。 残りの9割は公費および、40歳以上の方が納める保険料でまかなわれます。
所得によっては2〜3割負担
一定以上の所得がある高齢者の場合、負担能力に応じて自己負担割合が上がります。具体的には、
所得による負担割合の区分
区分 | 本人の 合計所得金額 |
同一世帯の第1号被保険者の年金収入と その他の合計所得金額の合計 |
負担割合 |
一般 | 160万円未満 | - | 1割 |
一定以上 所得者 |
160万円以上 220万円未満 |
単身:280万円以上 2人以上:346万円以上 |
2割 |
一定以上 所得者 |
160万円以上 220万円未満 |
単身:280万円未満 2人以上:346万円未満 |
1割 |
一定以上 所得者 |
220万円以上 |
単身:340万円以上 2人以上:463万円以上 |
3割 |
一定以上 所得者 |
220万円以上 | 単身:340万円未満 2人以上:463万円未満 |
1割 |
自己負担割合は介護保険負担割合証の交付時に決まる
自己負担割合は市区町村が発行する「介護保険負担割合証」に記載されています。この証書には、その年度の利用者の自己負担割合が明記されており、サービスを利用するときに事業者に見せる必要があります。負担割合証は、前年の所得状況などをもとに毎年判定されます。
介護保険負担割合証は毎年7月下旬に自動更新される
介護保険負担割合証は、毎年7月下旬に自動的に更新されます。これは前年の所得情報が確定する時期に合わせたもので、新しい負担割合証は市区町村から直接送られてきます。有効期間は原則として8月1日から翌年7月31日までの1年間です。
介護保険における老人ホームの補助費用には上限がある
介護保険サービスを利用するときの月々の負担額には上限があります。この制度は「高額介護サービス費」と呼ばれ、自己負担額が一定の金額を超えると、超えた分が後日返ってくる仕組みになっています。この上限額は世帯の所得状況によって変わります。
高額介護サービス費の所得区分別上限額(月額)
所得区分 | 上限額(月額) |
生活保護受給者等 | 15,000円 |
市町村民税世帯非課税で 年金収入等が80万円以下等 |
15,000円 |
市町村民税世帯非課税で 年金収入等が80万円超等 |
24,600円 |
市町村民税課税世帯のうち 課税所得が145万円未満等 |
44,400円 |
市町村民税課税世帯のうち 課税所得が145万円以上等 |
93,000円 |
市町村民税課税世帯のうち 課税所得が690万円以上等 |
140,100円 |
参考:渋谷区ホームページ「高額介護サービス費の支給など | 助成・相談など | 渋谷区ポータル」
【施設種別】介護保険適用下での老人ホームの自己負担費用相場

老人ホームには様々な種類があり、それぞれ介護保険サービスの適用範囲や自己負担額が異なります。主な施設種別ごとの月額平均費用(1割負担の場合)をご紹介します。
施設種別 | 月額費用相場 (1割負担) |
特徴 |
特別養護老人ホーム (特養) |
8~14万円 | 要介護3以上、待機者が多いが比較的安価 |
介護老人保健施設 (老健) |
8~14万円 | リハビリ中心、在宅復帰を目指す |
介護医療院 介護療養型医療施設 |
8~14万円 | 医療ケアが充実、長期療養向け |
有料老人ホーム (介護付) |
23万円前後 | 居室の広さや設備により費用差が大きい |
サービス付き 高齢者向け住宅 |
12万円前後 | 生活支援サービス付き、自立から要介護まで対応 |
グループホーム | 14万円前後 | 認知症専門、家庭的な環境 |
住宅型 有料老人ホーム |
14万円前後 | 自立している、要介護度の低い方向け、 食事や掃除などの生活支援サービスが受けられる |
※上記金額は目安であり、地域や施設の設備・サービス内容により異なります。また、居住費・食費・日常生活費などは別途必要となる場合があります。
認知症の方には家庭的な環境のグループホーム、医療ケアが必要な方には介護医療院が適しています。リハビリに力を入れて在宅復帰を目指す場合は介護老人保健施設が選択肢となるでしょう。
これらの金額はあくまで目安であり、地域や施設の設備、サービス内容によって異なります。また、上記の金額に加えて、居住費、食費、日常生活費などが別途必要となる場合が多いため、入居を検討する際は詳細な費用内訳を確認することをおすすめします。
老人ホームの自己負担費用を軽減できる制度
介護費用の負担を軽減するため制度には様々なものがあります。ご自身の状況に合わせて、活用できる制度をチェックしましょう。
- ・高額介護サービス費
- ・高額医療・高額介護合算制度
- ・負担限度額認定制度
- ・特定入所者介護サービス費
- ・医療費控除
高額介護サービス費
介護サービスの1か月の利用者負担が上限額を超えた場合、超えた分が「高額介護サービス費」として払い戻される制度です。
前述の所得区分ごとの上限額が適用され、申請により還付を受けられます。
申請する際は、初回のみ市区町村の介護保険窓口で「高額介護サービス費支給申請書」を提出する必要があります。申請時には、介護保険証、振込先の口座情報、印鑑が必要です。
一度申請すると、翌月以降は自動的に指定口座に振り込まれるようになります。
参考:渋谷区ホームページ「高額介護サービス費の支給など | 助成・相談など | 渋谷区ポータル」
【高額介護サービス費に関連する記事はこちら】:高額介護サービス費とは?有料老人ホームの負担上限額や申請方法を徹底解説!
高額医療・高額介護合算制度
医療と介護の両方のサービスを利用している場合、両方の自己負担額を合算して一定額を超えた分が払い戻される制度です。
申請は毎年必要で、合算対象期間終了後(8月以降)に行います。加入している医療保険の窓口(国民健康保険なら市区町村、後期高齢者医療制度なら広域連合など)に申請書を提出します。申請には、介護保険の自己負担額証明書(市区町村から送付されます)や健康保険証、印鑑などが必要です。医療保険の種類が変わった場合は、それぞれの保険者に申請が必要です。
負担限度額認定制度
介護保険施設などの居住費(滞在費)と食費の負担を軽減する制度です。
この制度は
申請するには市区町村の介護保険窓口で「介護保険負担限度額認定申請書」を提出します。申請には、介護保険証、本人・配偶者の預貯金通帳のコピー、マイナンバーカードまたは通知カード、印鑑などが必要です。認定されると「介護保険負担限度額認定証」が交付されますので、これを施設に提示します。認定期間は申請月から1年間で、毎年更新申請が必要です。
参考:大田区ホームページ「居住費(滞在費)と食費の負担限度額認定制度」
特定入所者介護サービス費
負担限度額認定制度とも呼ばれる制度で、低所得者を対象に施設入所時の居住費および食費を軽減します。
申請は市区町村の介護保険窓口で行います。申請書の他に、資産状況を証明する書類(預貯金通帳のコピー、有価証券の残高証明書など)の提出が必要です。認定されると「介護保険負担限度額認定証」が交付され、施設に提示することで減額が適用されます。認定期間は基本的に8月1日から翌年7月31日までで、毎年更新が必要です。
参考:厚生労働省「令和6年8月からの 特定入所者介護(予防)サービス費の見直しに係る周知への協力依頼について」
医療費控除
介護保険サービスの自己負担額の一部は、確定申告の際に医療費控除の対象となります。
申請するには毎年1月1日から12月31日までの医療費をまとめ、翌年の2月16日から3月15日までの確定申告期間に申告します。税務署または電子申告(e-Tax)で「確定申告書B」と「医療費控除の明細書」を提出します。領収書の提出は原則不要になりましたが、5年間保管する必要があります。介護保険サービスの領収書には「医療費控除の対象となる金額」が記載されているので、これを参考に申告します。
これらの制度をうまく活用することで、老人ホームや介護サービスの自己負担額を大幅に軽減できる可能性があります。各制度の詳細や最新情報については、お住まいの市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターに相談することをおすすめします。制度は年度によって変更されることもありますので、最新情報の確認が大切です。
参考:国税庁「医療費控除を受ける方へ|令和6年分 確定申告特集」
まとめ

介護保険における自己負担額は、所得に応じて1〜3割と設定されており、様々な負担軽減制度が用意されています。老人ホームへの入居を検討する際は、まず介護保険負担割合証で自己負担割合を確認し、施設種別ごとの費用相場を把握することが重要です。
また、高額介護サービス費や特定入所者介護サービス費などの軽減制度を活用することで、負担を抑えることも可能です。将来の介護に備え、早めに情報収集し、ご家族で話し合いながら計画的に準備を進めることをおすすめします。
親の介護は誰もが直面する可能性がある課題です。費用面での不安を解消し、ご家族にとって最適な介護環境を整えるために、本記事の情報が少しでもお役に立てば幸いです。
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