介護のお役立ちコラム
地域包括ケアシステムの重要性が説かれて久しいですが、年々老いを感じる中、自宅にいながらいつまでも健康に過ごすことは決して簡単なことではありません。そのような状況でも、第三者の力を借りながら充実した暮らしを実現することも可能です。今回は、さまざまな専門家が高齢者をサポートする「居宅療養管理指導」について解説していきます。
介護保険サービスで実施する「居宅療養管理指導」
「居宅療養管理指導」とは、通院などを含めて外出が難しい要介護の高齢者に対して、医師や管理栄養士などの専門家が自宅を訪問し、状況の改善や生活に必要な事項をアドバイスするサービスの一種です。介護保険サービスに含まれるため、ほかの介護サービスと同様に利用者は1割(高額所得者の場合は2または3割)の自己負担額で利用できます。
専門家による指導の結果、生活状況が改善することで、利用者本人のQOL(生活の質)が向上するだけでなく、身の回りの世話に手がかからなくなることから、同居する家族の負担も減ることにもつながります。定期的に自宅に来訪してくれることから、独居高齢者に対する安否確認の側面もあると言えます。
また、介護保険サービスで実施されることから、専門家がおこなった助言や指導の内容は担当の介護支援専門員(ケアマネジャー)にフィードバックされることになります。集まった情報をもとに、より緻密で充実したケアプランを組み立てていくことも可能となります。
居宅療養管理指導の専門家たち
それでは、実際にどのような職種の専門家が助言・指導をおこなうのでしょうか。
●医師または歯科医師
医学的知見に基づいた、療養上必要な健康管理や指導。使用している薬の服薬管理。そして、医療器具を使用している利用者に対しては、これらが正しく使われているか確認します。
●薬剤師
医師または歯科医師の指示に基づいた服薬管理をおこないます。利用者の自宅に薬を届けるところから始まり、副作用を含めた薬の説明、用量・用法が守られているか確認をします。特に認知症がみられる独居高齢者の場合、服薬管理は難しくなる傾向にあります。
●管理栄養士
医師または歯科医師の指示のもと、利用者の健康状況を維持するための栄養摂取に関するアドバイスや、具体的なメニューの提案などをおこないます。口腔機能の低下により嚥下障害がみられる高齢者に対しては、きざみ食、とろみ食にするなど、調理法や食べ方に対するアドバイスもおこないます。
●歯科衛生士
歯科医師の指示に基づいた口腔ケアの助言をおこないます。特に口腔内は雑菌が溜まりやすく、あらゆる病気の温床となります。基本的な歯みがきの指導に始まり、入れ歯使用者へは洗浄、管理の助言をおこないます。口腔内が清潔になることで誤嚥防止はもちろん、食事の質が大幅に改善されます。
費用と利用限度回数について
次に具体的な費用を見ていきましょう。
単一建物居住者 1人 |
単一建物居住者 2~9人 |
単一建物居住者 10人以上 |
利用限度 |
|
医師Ⅰ |
509円 |
485円 |
444円 |
月2回 |
医師Ⅱ※ |
295円 |
285円 |
261円 |
月2回 |
歯科医師 |
509円 |
485円 |
444円 |
月2回 |
薬剤師(病院) |
560円 |
415円 |
379円 |
月2回 |
薬剤師(薬局) |
509円 |
377円 |
345円 |
月4回 |
管理栄養士 |
539円 |
485円 |
444円 |
月2回 |
歯科衛生士 |
356円 |
324円 |
296円 |
月4回 |
※ 通院困難な利用者(患者)に対して、診療報酬における所定の管理料が算定されている場合
表からもわかるとおり、利用する職種によって費用にばらつきがあるのは注意したいポイントです。自己負担が1割の場合、どの職種を利用してもさほど費用に大きな開きはありませんが、特に2~3割負担の高齢者の場合、利用が長期化することで個人負担額も徐々に膨れ上がります。
さらに、単一建物居住者人数(一つの建物の中に実際に暮らしている人数)によって料金が変動します。規定では、独居高齢者が支払う費用は、配偶者や家族と暮らすケースの費用より、わずかではありますが高額に設定されています。利用できる回数も、月に2~4回と上限があり、これを超える利用は認められません。居宅療養管理指導は、特に一人暮らし高齢者にとって頼もしいサービスであるだけに、些細な条件で料金に違いが出てしまうのは、利用者の立場としてはデメリットと言えるかもしれません。
医療行為は含まれず。あくまで介護予防を目的としたサービス
ここまで説明したとおり、居宅療養管理指導は介護予防と同時に、将来的に重い病気にかからないための「未病」に一役買っています。医師などの専門家が定期的に来訪してくれる、心強いサービスではありますが、あくまで介護保険給付で賄われるサービスのため、医療行為は一切含まれませんので注意しましょう。
実際のところ、訪問医療や訪問看護と並行して利用している人も見受けられますが、この場合、訪問医療と訪問看護で発生する費用はすべて国民健康保険や社会保険が適用になるため、介護保険サービスで実施される居宅療養管理指導とは分けて考える必要があります。
申込みは担当のケアマネジャーまで
居宅療養管理指導の利用を希望する場合は、担当のケアマネジャーに申し込むことになります。その後、ケアマネジャーがかかりつけ医に相談する流れとなりますが、医師(歯科医師)・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士いずれの職種を希望する場合でも、医師が必要だと判断した場合のみサービスの提供が認められます。利用者やケアマネジャーの希望だけではサービスが提供されないため注意しましょう。
終わりに
軽度の要介護でも、自宅で暮らしていて、ある程度自身で意思決定ができる場合、居宅療養管理指導はぜひ利用を検討したい介護サービスです。第三者の手を借りながらも、生活習慣を見直し自らを律することは、最期まで自分らしく生きるために重要な要素なのです。
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