介護のお役立ちコラム
自宅で暮らす高齢者が利用する介護サービスのひとつに通所介護(デイサービス)があります。日中、家族に代わり身の回りの世話をおこなうサービスですが、長い時間、暇を持て余さないよう、各所ともレクリエーションの内容には力を入れています。そんなレクリエーションについて、介護士たちの手によりその質を高めて利用者に提供する「レクリエーション介護士」という資格があることをご存じでしょうか?
デイサービスの質を左右するレクリエーションの重要性
「レクリエーション介護士」は一般社団法人日本アクティブコミュニティ協会が主催する民間資格で2014年に創設されました。介護士が自らの経験や知識を生かして、高齢者に喜ばれるレクリエーションを考案・提供するための資格です。さまざまなレクリエーションを通じて高齢者とふれあい、喜びや楽しみを共有することで生きがいを感じてもらう目的があります。
「介護」と聞くと、どうしても身体介助やリハビリといったイメージが先行するかもしれませんが、一般的なデイサービスでは入浴や食事以外の時間はレクリエーションが大半を占めています。ちょっとした世間話など介護士と利用者との間で交わされるコミュニケーションは、お互いの信頼を築く上でとても重要で、安心かつ満足してサービスを利用してもらうためには必要不可欠なものです。
こういったコミュニケーションの重要性は事業主も理解しているようで、実際、多くのデイサービス職員が資格を取得するようになりました。現在2万7千人がレクリエーション介護士の資格を取得しています。
通信でマイペースか、通学で迅速に学ぶか。資格取得方法について
レクリエーション介護士には、介護士以外の一般の人でも受験できる2級と、施設で働く現場統括者向けの1級があります。これからボランティアで高齢者と接していきたいという人は、まずは2級が入口となります。1級を受験するには、2級をすでに取得していることが条件となります。
受講方法についてですが、通信と通学から選ぶことができます。通信の場合は所定のホームページから申し込みをして受講料を入金します。その後テキストなど教材一式が送られてくるので、案内に従って学習を進めます。最後は筆記試験(選択50問式)と添削課題を提出して終了です。平均学習時間は3か月で、合格の目安は試験で60点以上です。自宅や職場・学校の近くに教室を開催している場所がある場合、通学での受講も可能です。カリキュラムは6時間の授業を2日間に分けて実施するため、短期集中で資格取得したい人には向いていると言えます。
ボランティアでもレクリエーション介護士の資格が生きる
デイサービスなどで働く介護士は、自らの知識や経験に加え、学習した内容をもとに利用者一人ひとりに合ったレクリエーションを考案し、提供することが可能です。また、ボランティアなど介護士以外で資格取得した人でも、介護サービス事業所の内外でスキルを展開できます。「あるある探検隊」でおなじみの、吉本興業所属のお笑いコンビ「レギュラー」の2人も資格を取得し、老人ホームなどへの慰問活動で笑いとレクリエーションを提供する活動をしています。
ここ数年、天災などにより一時的に避難所や仮設住宅暮らしを強いられる人が増えてきています。限られた空間の中、プライバシーも保たれない環境にストレスを感じ、肉体的な疲労もすぐにピークに達します。そのような状況下で、レクリエーション介護士の資格を生かし、高齢者を対象にしたボランティア活動ができれば、たいへん重宝されること間違いありません。
人には好みがある。レクリエーションの押し売りはNG!
持てるさまざまなアイデアを提供していくことは、非常にクリエイティブなことと言えます。しかしその反面、介護サービスを受ける利用者すべてに適合するとはかぎりません。
レクリエーションは集団でおこなうものが多いのですが、例えば合唱は、自分の歌声を聞かれたくないというシャイな人には不向きです。高齢者の表情が少しでも曇るようならば、そっと輪の中から外れてもらうよう促しましょう。レクリエーションの定番である塗り絵や切り絵も、「女性じみている」という理由で嫌悪感を示す男性高齢者もいるので注意が必要です。
レクの前に心得ておかなければならない、コミュニケーションの注意点
会話の入口でも注意するべきポイントはあります。フレンドリーにふるまうことは大切ですが、特にプライドの高い男性利用者に対する馴れ馴れしい言葉遣いは禁物です。同時に子ども扱いするような態度を取ることも慎みましょう。
ありふれた会話の内容である、家族(子どもや孫)についての発言も注意が必要です。昔は仲睦まじくても、時間を経て家族との仲が悪化している家庭もあるからです。私たちが抱く「孫はかわいい存在」という先入観は捨てるようにしましょう。
利用者を知る上で、昔の話をその人から聞き出す必要も出てきます。その昔話も、どの時代に少年・少女時代を過ごし、仕事や子育てといった人生繁忙期を過ごしたかによって切り口やテーマも変わってきます。生まれ育った場所やその土地特有の気質、戦争の記憶の有無などによっても接し方は変わってくるものなので、むやみな質問攻めは止めましょう。
会話の基本は何気ない日常会話から切り出すのが理想的です。初対面の高齢者同士でいきなり会話が弾むケースはあまりなく、介護士と利用者1人がマンツーマンで話をしていくうちに場の空気がなごみ、そこにほかの利用者が加わることで、徐々に利用者同士による横のコミュニケーションが図れるようになります。
最後に
介護サービスの利用を始めたばかりの高齢者にとって、そこは経験したことのない新しい社会の入口であり、誰でも不安は覚えるものです。しかし、レクリエーション介護士のアイデアによって楽しく充実した時間を提供できるのならば、その不安はすぐに解消します。明るく楽しいシニアライフを一人でも多く体験してもらうためにも、レクリエーション介護士の需要はこれからも続くことでしょう。
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