介護のお役立ちコラム
AI(人工知能)の普及、発展によって、産業や商業のマネジメントにおいて、あらゆる効率化が図られるようになりました。そしていま介護の分野でも、機械学習によるデータベースへの蓄積を充実させることで、正確かつ効率的な介護サービスの提供を目指すようになりました。今回は、厚生労働省が導入した科学的介護情報システム「LIFE(ライフ)」をもとに、今後の介護を展望します。
より良い介護につなげるため、指標となるものが必要
「十人十色」という言葉が示すとおり、高齢者一人ひとりに見合った介護があります。具体的な介助アプローチはもちろん、接し方や声かけ一つとってもマニュアルというようなものはなく、被介護者に関わるすべての人が、日常生活を通じてその人の特徴をとらえて日々の介護につなげていきます。
しかし、介護施設などで働く人も大勢の利用者を抱えていることや、人材育成が追いつかず介護サービスの質の低下を招くことも問題視されています。加えて、利用者側も認知症の進行や健康面での衰え、心情の変化など、その人を取り巻く環境は日々変化していきます。こういった"不確かさ"が常に取り巻く介護の世界において、介護サービスを提供する上での"指標"が求められていました。
科学的介護を実現する介護情報新システム「LIFE」
客観的事実に基づいた科学的な情報を介護の世界で発展していく目的で、厚生労働省は2017年に、通所・訪問リハビリテーション事業所のデータを蓄積させた「VISIT」の運用を開始。2020年には、利用者に提供したケアなど、より詳細な情報を網羅した「CHASE」を開発しました。
そしてこのたび、「VISIT」と「CHASE」を組み合わせた、より強力で恒久的に使用していけるデータベースとして「LIFE」(ライフ:Long-term care Information system For Evidence)が開発され、正式に運用されることとなりました。
こういったデータの重要性は、医療の世界では当たり前の存在として認識されていました。さまざまな患者や病気の例などを集めて、世界規模の医療関係者でその情報を共有する。そして、蓄積された科学的根拠(エビデンス)を元に、安全かつ適切に、もっとも治癒する可能性の高いアプローチが選択され"信頼される医療"が確立されてきました。介護の世界でもエビデンス、つまり「科学的介護」を有効活用していくための母体となるのがLIFEなのです。
「LIFE」が介護報酬加算に認定される
2021年度の介護報酬改定で、LIFEの運用を算定要件に含む加算が新設されました。これにより、LIFEを介護で活用することで、事業者側への報酬がプラスされることになります。具体的には、利用者の介護情報をLIFEへ提供すること。そして今度は逆に、データベースから得た情報を活用し、各事業所でPDCAサイクル(計画→実行→評価→改善の繰り返し)を回していくことが求められます。
全国の介護事業者は、無料でLIFEのデータベースへのアクセスが可能です。続いて、各利用者の情報入力が必要となります。なかなか骨の折れる作業になるかもしれませんが、大規模な施設ではすでに介護記録ソフトを導入していることでしょう。その場合、既存のソフトとLIFEを連携させることで、情報を一括入力することも可能なので、日々の仕事に影響を与えることなくLIFEを導入することができるはずです。
科学的介護の今後の展望
LIFEの運用によって、介護はどのような変化が期待できるのでしょうか。
① 介護の質の均一化
データベース内の情報を全国の事業者間で共有できるため、介護事業者によって異なる介護の質の差を均一にすることが可能です。一定の質が担保されることで、利用者は施設選びの面で余計な不安を払拭できます。
② 人材育成
さまざまな業界で「技は見て盗め」という考え方が定着していますが、各場面におけるケアにはどうしてもばらつきが生じるもので、仕事を覚える側としても、個人の能力差やそのときの体調や心理状態などによって、体得できるレベルにも差が出てくるものです。LIFEによって必要な情報を可視化できるため、新人や転職してきたばかりの人でも従来よりも早く、現場になじむことができるはずです。
③ 重症化の防止
寝たきりなど重度の要介護度になるのを防ぐ可能性もあります。もしかしたらいま現在、被介護者本人が幸せと感じない不適切なケアが提供されている可能性もあります。科学的根拠に基づいた介護が提供されることで、残存している能力を末永く維持することができるため、自立支援と介護者へのストレス軽減を両立します。
終わりに
産声を上げたばかりの「LIFE」ですが、全国の介護の現場での事例がいくつも積み重なることで、やがて強力なデータベースへと成長していきます。医療がエビデンスを元に発展してきたことを考えると、介護の世界もさらに充実したケアが提供されることでしょう。ITの力を存分に発揮した未来の介護への期待は、ますます高まるばかりです。
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