介護のお役立ちコラム
自宅で高齢者の介護をする場合、通所介護や訪問介護といったサービスを利用するのが一般的です。ただし、利用者本人の健康状態や家族の都合などによりサービス内容を変更したい場合、利用している介護サービス事業者が柔軟に対応してくれるとは限りません。そのような状況でも、既存の介護サービスを柔軟に組み合わせて提供される「小規模多機能型居宅介護」ならば、利用者側のニーズに応じた対応が幾分可能になります。今回は、小規模多機能型居宅介護の概要や費用などについて詳しく解説していきます。
通所・訪問・宿泊のサービスが受けられる「小規模多機能型居宅介護」とは
「小規模多機能型居宅介護」とは、従来の介護サービスである訪問介護(ホームヘルプサービス)、通所介護(デイサービス)、夜間宿泊(ショートステイ)を、利用者の都合に応じて選択ができる比較的新しい業態の介護サービスです。
「小規模」の名前のとおり、1事業所あたりの利用者定員(登録可能人数)は29名以下と決められています。デイサービスでの利用者定員は15名以下(ただし居室など共用スペースの面積が一定に達している場合は18名以下)、ショートステイでの定員は9名以下と定められています。
3種すべてのサービスが同一事業者によって提供されるため、事業者やヘルパー間による情報の行き違いや、サービス変更時の面倒な手続きも必要ありません。「最近体調が優れないので、通所から訪問に切り替えたい」「(家族が)出張が多い仕事なので、1日単位で面倒を見てほしい」といった細かなニーズにも対応可能となります。
料金は定額制。顔なじみのスタッフたちとアットホームな環境で過ごせる
ほかにはどのようなメリットがあるのでしょうか。小規模多機能型居宅介護は24時間365日開所しているため、事業者都合によって利用を断られることはありません。また、どのサービスを利用しても慣れ親しんだ空間やスタッフたちと時間を共にすることになるため、環境面において利用者の不安やストレスを大きく軽減してくれるはずです。
費用面においても、月額の利用料金が決まっているため、安心感があります。上記の利用者定員数を超えない範囲ならば、1か月の間に何度でも介護サービスを受けることができます。
その一方で、少なからずデメリットもあります。まずは従来利用していた介護保険による介護サービス(通所、訪問、訪問入浴など)は利用できなくなります。またサービスの変更にともない、担当の介護支援専門員(ケアマネジャー)も新しい事業所のケアマネジャーに変更しなくてはなりません。
定額制の安心感はあるものの、元から介護サービスの利用頻度が低い「要支援」に該当する高齢者の場合、毎月の個人負担費用の割高感は拭えません。このほか、年末年始やゴールデンウイークなどはショートステイの利用希望者は多くなる傾向があります。申し込んだ時点ですでに定員(9名)をオーバーしていた場合は利用を断られる場合があるので注意しましょう。
小規模多機能型居宅介護の料金体系について
次に小規模多機能型居宅介護の費用について見てみます。定額制である毎月の利用料金は利用者の要介護度によって異なります。この月額料金に加えて、より手厚いケアが必要な利用者にプラスされる加算費用と、食費、宿泊費、レクリエーション費用などが発生します。
このうち、利用料金は介護保険が適用されるため利用者負担額は1~3割となりますが、食事や宿泊のサービスは介護保険適用外のため、全額利用者負担となります。
利用料金(月額)
・要介護1:10,320単位/103,200円
・要介護2:15,167単位/151,670円
・要介護3:22,062単位/220,620円
・要介護4:24,350単位/243,500円
・要介護5:26,849単位/268,490円
※単位は事業所のある地域によって異なります。上記表は10円/単位で計算しています。
加算費用
・初期加算 30円/日
利用開始初めの1か月間に発生する費用です。
認知症加算 500~800円/月
認知症患者に対する生活支援、身体介助の費用です。
訪問体制強化加算 1,000円/月
訪問介護をおこなう常勤のヘルパーを2名以上配置している、または事業所の1か月あたりの延べ訪問回数が200回以上である場合に、利用者側が負担するものです。
看護職員配置加算 480~900円/月
事業所が1名以上の看護師を配置している場合に加算される料金です。在宅介護の場合、緊急時に看護師を派遣させるケースもあるため、その場合は加算費用が異なります。
総合マネジメント体制強化加算 1,000円/月
地域密着型サービスにおける多業種間の連携深化や、直接介護とは無関係なコストを見直すなど、介護サービスの充実と費用の適正化を図る事業者が導入する加算です。
介護職員処遇改善加算
介護職員の賃金改善のため、事業者が一定の条件を満たした場合に適用されます。介護サービスにおける単位に数%を乗じた金額が加算されます。
その他利用者負担
・食費 400~600円/食
・宿泊費 1,500~3,000円/日
・レクリエーション費 100~300円/回
・消耗品費(紙おむつなど) 150円/枚
小規模多機能型居宅介護の利用条件と申込みについて
小規模多機能型居宅介護の利用を希望するにあたり、利用したい本人が「要介護」または「要支援」の認定を受けていることが申込みの条件となります。利用を希望したい旨を担当のケアマネジャーに申し出てください。
小規模多機能型居宅介護は各自治体が管轄する「地域密着型サービス」に該当するため、原則、今現在住所のある市区町村の事業者の中から選ぶことになります。ある程度の目星が付いたら次は施設見学です。施設の雰囲気や職員の態度や働きぶりなどにも目を配り、信頼の置ける施設であるかきちんと確認しましょう。
また前出のとおり、サービスの利用が決まった時点で、ケアマネジャーは新しい事業所の職員と交代する決まりがあります。急いで決めたはいいが、やはり場の雰囲気になじめない、人間関係がうまくいかないなどの不満があっても簡単には元に戻せません。有料老人ホーム選びと同じように、注意深く吟味することが求められます。
終わりに
小規模多機能型居宅介護は健康状態が不安定な高齢者、また、スケジュールが定まらない多忙な家族と暮らす人には打ってつけの介護サービスと言えるでしょう。各サービスとも定員が決まっていますが、人の出入りが少なく、アットホームで落ち着いた雰囲気のもと有意義な時間が過ごせるのも小規模多機能型居宅介護の魅力の一つかもしれません。
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