介護のお役立ちコラム
みなさんはターミナルケア(終末期医療)をご存知でしょうか?ターミナルケアとは、病気などで余命がわずかになった方に行う医療的ケアのこと。苦痛を緩和しながら、できるだけ生活の質(QOL=クオリティ・オブ・ライフ)を保つための医療や看護の方法です。
とても悲しいことではありますが、人にはいつか寿命が訪れ、お別れのときがきます。息をひきとる瞬間は、できるだけ安らかに逝ってほしいと願うのがご家族の思いではないでしょうか。ターミナルケアはその思いの実現をお手伝いしてくれるケアです。
今回は、ターミナルケアの内容や費用などについてまとめました。ターミナルケアがどのようなものかわからないという方、具体的な費用や注意点を知りたいという方はぜひ、参考にしてみてください。
看取りケア、緩和ケア、ホスピスケアとの違い
「ターミナルケア」と同じように、よく聞かれる言葉に「看取りケア」「緩和ケア」「ホスピスケア」などがあります。基本的には、死期が近くなった人のケアをするという意味ではほぼ同義語として用いられていますが、わずかながらに概念の違いがあります。
看取りケアは、主に在宅や介護施設で最期を迎える人に施すケアになります。安らぎを与え、たとえ意識がなくなった状態にあったとしても、最期まで人間の尊厳を守り身体介助や声かけをおこないます。看取りケアには何か特別な知識やテクニックが必要なわけではありません。残されたわずかな時間を、思い出話などに花を咲かせるだけでも本人にとってはかけがえのない大切な時間になります。"その人を思う気持ち"を持って接することが看取りケアにもっとも必要な心構えです。
緩和ケアは、末期がんや後天性免疫不全症候群(エイズ)といった不治の病を患っている人に対しておこなうケアで、病気による苦痛を除去することを目的としていることから、極めて医療的なアプローチと言えます。
ホスピスケアも緩和ケアと同様、病気による苦痛を取り除き最期を看取るものです。「ホスピス」とは、1967年にイギリス・ロンドンで末期がん患者の苦痛を取り除くために創設された施設で、専門家がチームを組んで患者の痛みを和らげるケアを実践してきました。その歴史はさらに古く、ホスピスは中世ヨーロッパでは貧民や巡礼中の旅人に食事や宿泊を提供する施設であり、貧しい人々の心の支えとして機能してきたようです。日本ではあまりなじみのない言葉かもしれませんが、キリスト教を信仰し慈善活動に熱心なヨーロッパにおいて、現在では緩和ケアをおこなう施設として広く認知されています。
どのようなケアをするの?ターミナルケアの内容について
まずは、ターミナルケアではどのようなケアが受けられるのか。おおまかな内容について説明していきましょう。
ターミナルケアの内容と施し方
ターミナルケアの開始時期に決まりはありませんが、病気の回復が見込めなくなるときなど、積極的な治療ができないと判断されたときがひとつのきっかけとなります。また、老衰や認知症の場合は、寝たきりになって食事が摂取できなくなったときが目安となることが多いようです。
ターミナルケアは、体の痛みなどを取り除く「身体面のケア」、患者の不安や恐怖を緩和する「精神面のケア」、費用などの負担を取り除く「社会面のケア」の3つに分けられます。通常の治療との違いは、延命を目的にしていないこと。ターミナルケアは患者に残された時間の苦痛をなくし、その人らしい生活を送ってもらうために行われるものなのです。
このうち、医療行為にあたる「身体面のケア」は医療従事者(医師・看護師)がおこなう必要がありますが、「精神面のケア」や「社会面のケア」はご家族やご友人などでもおこなえるものなので、必要に応じてケアをしてみましょう。
それでは3つのケアについて、それぞれ詳しく説明していきます。
①身体面のケア(主に、医療従事者がするもの)
がんをはじめ、病気の終末期には強い痛みが発生することが多いと言われています。この痛みで患者さんは眠れなかったり、体を動かせなくなったりするほか、精神面にも影響してしまうことがあるでしょう。この痛みを和らげるために投薬などをおこない、痛みを取り除くことが身体面のケアで主におこなわれることです。
また、だんだん食事や水分がとれなくなった際は、食べやすいように料理を細かくすりつぶして食べやすくしたり、チューブを通して食べ物を胃に送り込む「経管栄養」や、胃に小さな穴を開けて食べ物を注入する「胃ろう」による栄養補給をおこなうこともあります。
自力で動けなくなってきた場合には、褥瘡(じょくそう、床ずれのこと)の発生を防ぐためのケアや、褥瘡が発生してしまったときのケアも必要です。状態に応じて、酸素吸入や点滴などもおこなわれます。
②精神面のケア(医療従事者とご家族の両方ができるもの)
死を目前にした患者さんは、不安や恐怖、遺される家族への心配などで精神面が不安定になることがあります。そうした感情に寄り添い、安心して過ごせるようなケアも必要です。
特に、家庭を支える立場や、職場での重要なポジションなど、社会的責任の強い立ち位置にいた方は、周りに対して責任を感じてしまうことも多いことでしょう。患者のそういった思いに寄り添い、孤独感を持つことのないよう話をしたりするなど、ご家族や関係者が配慮をおこなう必要もあります。
具体的におこなうことは、患者さんの話を聞いたり、住環境を整えたり、家族や友人と過ごす時間を設けたりするなど。このケアはご家族ができるほか、ボランティアの方が援助してくれたりすることもあります。
③社会的ケア(ご家族や専門家ができるもの)
ターミナルケアを受けるうえでの心配事のひとつに費用の問題があります。この負担を減らすため、療養中の心理的・社会的援助をおこなってくれる「医療ソーシャルワーカー」などに関わってもらうことがあります。この社会的ケアには遺産相続や遺品整理のサポートも含まれます。
納得のいく最期を迎えるために、本人とご家族で話しておきたいこと
ターミナルケアを受ける際、いくつか考えておきたいことがあります。それは、患者本人とご家族が納得のいく最期を迎えられるかどうか。そのために、患者さん本人と可能なかぎり早めに話し合いをして、後悔のない意思決定をするよう心がけるとよいでしょう。
どこでターミナルケアをおこなうか
まず決めるべきことは、どこで最期の時を迎えるかということです。本人が意思決定できるのであれば、本人とご家族で相談して決めることが大切です。 考えることは、「本人がどこで過ごしたいのか」「一緒に過ごすご家族が対応できるかどうか」など。そのほか、本人の希望に沿う形で、受けられるサービスの種類や往診時にかかる時間などを十分に考えて決定するようにしましょう。 本人が意思決定をするのが難しい状況であれば、家族で上記のことを相談して決定するようにしましょう。
延命措置をするかどうか
ターミナルケアに移行する上で、医療方針や延命措置をどうするかを決めておくことも大切です。食事が難しくなったときの点滴や経管栄養、急変時の心肺蘇生をおこなうかどうか、また在宅の場合は緊急時に搬送するかどうかなど、本人が意思決定をできるうちに考えておくことが大切です。 もしそれが難しい場合は、これも家族で決定することになります。ご家族全員で十分に相談するほか、万が一の際に混乱することがないよう、意思決定の代表者を決めておいたほうがスムーズです。
ケアを受ける場所によるメリット・デメリット
ターミナルケアには、受ける場所によってメリットとデメリットがあります。どこでケアをするかを決めるために、その違いを知っておきましょう。
病院・介護施設でターミナルケアを受ける場合
病院や介護施設などでターミナルケアを受ける場合のメリットは、「何かあったときに医療従事者や介護スタッフがいつでもいる安心感」と、「ケアの負担が少なく済むこと」があげられるでしょう。在宅で、24時間体制で介護をする場合と比べれば負担は少ないですし、安心感も大きいと言えます。
デメリットは、常にご家族がそばにいることができないことがあげられます。容体が急変したときや臨終のときが近いときなどは別ですが、自宅のようにずっとそばにいることができないぶん、患者さん本人やご家族の不安につながることもあります。 また、治療内容によっては、費用がかさんでしまうことも考えられます。
在宅でターミナルケアを行う場合
在宅でターミナルケアを行うメリットは、「住み慣れた自宅で最期を迎えられること」「ご家族と常にそばにいられること」があげられます。患者さんが安心して過ごせるほか、ご家族も頻回に病院や介護施設へ行く負担がなく、常に様子を見ることができます。
デメリットは、24時間体制でケアをする必要があることと、往診が増えたときに金銭面の負担が増えることがあげられます。また、往診もすぐに来られるというわけではありません。 いつ急変するかわからない不安や、身辺の世話で休息を得にくいことから、ご家族の心身の負担は増えてしまいます。 ケアを受ける場所を決めるときには、メリット・デメリットを鑑みたうえで、本人とご家族が納得できる方法を探っていきましょう。
いくらかかるの?ターミナルケアにかかる費用について
ターミナルケアにかかる費用は、どこでケアを受けるかによって異なります。 ここでは、入院・自宅・老人ホームの3つに分けて考えてみましょう。
①入院してケアを受ける場合
厚生労働省から「緩和ケア病棟」として承認を受けた病棟で緩和ケアを受ける場合、入院費は治療内容にかかわらず一定額に決められています。
- ・30日以内...1日49,260円
- ・31日以上60日以内...1日44,000円
- ・61日以上...1日33,000円
※ここに1日3食分の食事医療費360円が加わります。
(平成28年現在) この費用には健康保険が適用されますので、それぞれの負担割合に応じた1〜3割の金額が実際に支払う金額です。また、個室を使う場合は別途料金が必要なこともあります。 ターミナルケアは、「高額療養費制度(医療費の家計負担が重くならないよう、1ヶ月の医療費上限額を超えた額を支給してもらえる制度)」の対象になるので、あらかじめ健康保険組合や協会けんぽの事務所で「限度額適用認定証」を取得しておくとよいでしょう。
②在宅療養をする場合
在宅療養でターミナルケアを受ける場合にかかる費用は、主に以下のようなものがあります。
- ・在宅医の往診費...1回2万円〜3万円前後
- ・訪問看護費...1回1万円前後
- ・介護に必要な費用(ベッドやポータブルトイレ、車イスなどのレンタル、訪問介護など)
在宅療養の場合は、使うサービスや医師・看護師の訪問回数によって費用が異なります。往診や訪問看護は医療保険が適用されるため負担は1〜3割で、こちらも高額療養費制度の対象です。そのほか、介護に必要な費用は介護保険が適用され、1~3割の負担になります。 利用する事業所によっては、訪問に必要な交通費や、各種書類の発行費なども必要になるので、利用前に確認するようにしましょう。
③その他の施設の場合
有料老人ホームなどでも、ターミナルケアを行っている施設があります。老人ホームでターミナルケアを受ける場合、費用は施設によって差がありますので、事前に確認してみましょう。
介護施設でターミナルケアを受ける場合、看取り介護加算(終末期加算)が発生します。医師が終末期ケアを必要と判断し家族が同意した場合、死亡日から30日間を限度として、4~30日=144点、死亡前日・前々日=680点、死亡当日1,280点が加算されます。やはり施設側としても、看取りの経験のあるスタッフが集中して一人の入居者のために持てる力を尽くすのですから、その分が事業者の介護報酬にプラスされる仕組みになっています。利用者の負担額としては、通常の介護保険サービスと同様1~3割負担となります。
誰にでも訪れるものだから、心構えは十分に
誰にでもいつか訪れる、最期の時。医療・介護サービスを十分に受けられる今の時代だからこそ、その人が望む形になるように、早めに考え始めることが大切です。 あまり考えたくはないことではありますが、大事なご家族のために、そして遺される側としても納得した形でそのときを迎えられるように、ひとつずつ話し合ってみましょう。
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