介護のお役立ちコラム
日本での認知症患者数は、2012年約462万人。2025年には約700万人に増加すると言われています(※1)。超高齢化社会が進行するに従って「両親が認知症になったら」「自分が認知症になったら」という不安は、若い世代にも広がりつつあります。
認知症を発症すると、配偶者や子どもによる在宅介護や、老人ホームなどの施設へ入居するなどのケースが考えられますが、介護をする側の大きな悩みのひとつに「経済的負担」があります。
「認知症を発症したら家族に迷惑をかけたくない」と多くの人が考えていることでしょう。そんな時代背景もあり、2016年に民間で初めて認知症に対する保障に特化した「認知症保険」が発売されました。この「認知症保険」は一体どのようなものなのでしょうか?
いま民間の「認知症保険」が求められる理由
日本では高齢者の介護や認知症に対する保険に公的な「介護保険」があります。40歳以上になると誰もが自動的に加入する保険であり、要介護認定がされるとそのランクに応じて、様々な介護サービスが受けられるものです。
・「介護保険」を詳しく知るにはこちら
公的な「介護保険」は、訪問介護やデイサービス、ショートステイなど様々なサービスを受けることができますが、現金が給付されることはありません。
また2015年の「介護保険制度改正」により自己負担が増加しました。高齢者のサービス負担額が一律で1割だったのが所得に応じて最大2割負担になり、特別養護老人ホームの入居も要介護度3以上に引き上げられたのです。
また在宅介護でかかる費用は、月々約6万9千円、特別養護老人ホームで平均7〜15万円。有料老人ホームで平均20〜25万円かかると言われています。
・「介護にかかる費用はいくら?」
さらに認知症が発症していた場合、発症していない場合より介護費用が高くなることも指摘されています。(※2・※3)。 そのような背景もあり、厚生年金や国民年金だけでは経済的に不安だという方から、一時金や介護年金が給付される「認知症保険」が注目を浴びていると言えるでしょう。
「認知症保険」の特徴とメリット
では、民間の「認知症保険」にはどのような商品があるのでしょうか。認知症に特化したものから、介護保険に認知症の特約が付加されたものまで実に様々な商品が保険会社より発売されています。その特徴について見ていきたいと思います。
保険金が現金で受け取ることができる
公的な介護保険と異なり、民間の「認知症保険」は現金が給付されるのが最大の特徴です。一時金支払いや年金型など違いはありますが、万が一のときに現金が給付されるのは大きな助けとなります。一時金に加えて毎年年金が給付される複合型タイプもありますし、年金型では10年などの有効期限のものから終身のものなど様々なタイプがあります。
「認知症保険」の支払基準について
民間の「認知症保険」は、支払基準は大きく分けて3つの種類に分けることができます。
「連動型」...公的な介護認定基準に則って支払われる
「一部連動型」...基本的には公的な介護認定と連動するが、一部保険会社独自の判定基準がある
「非連動型」...公的な介護認定ではなく、保険会社の基準によって支払われる
「連動型」は、公的な介護認定基準に則していますので、例えば「要介護度2以上」など分かりやすいものが多くなっています。「一部連動型」「非連動型」の特徴としては、「認知症と初めて診断され、その状態が180日継続したとき」などの定義されることが多いです。こういった基準は、認知症は日が経たないと物忘れと判別しにくいという理由が挙げられます。診断された際にすぐに保険金が給付されるわけではないので、どのタイミングで受け取ることができるのか、確認しておくことが必要です。
保険加入できる年齢が幅広い
15歳から加入できる商品もあり、若い頃に契約をすることで保険料を安くすることができます。また加入の年齢上限が85歳に定められている商品もあるので、「子どもが独り立ちして余裕ができたから」といったタイミングで加入することも可能。認知症は年齢を重ねるごとに、発症のリスクが高まりますので、ライフプランの変化に合わせて加入することができるのは、大きな魅力です。しかし、高年齢での加入は、その分だけ毎月の保険料が高くなることは忘れないでください。
保障内容が幅広く自由度が高い
保障内容も各社によって大きな違いがあります。認知症以外にガンや糖尿病など高齢者がかかりやすい7大生活習慣病に対応している商品や、骨折や入院の一時金が給付されるタイプなど、認知症に特化しながらも高齢者が起こりやすい病気や怪我に対応しているものが多くなっています。また通常の終身保険に特約として、介護・認知症に対する保障が付加されるタイプも存在します。保障内容を手厚くすればするほど安心は増しますが、毎月の保険料は高くなります。またほとんどの「認知症保険」に解約払戻金がないので、注意が必要です。
「認知症保険」のメリットは現金を給付される点です。老後の蓄えや年金生活の経済的な不安を元気なうちから準備をできることは、大きな安心につながります。しかし、保障内容、支払基準は多様で複雑ですので、複数の商品を比較検討して、自身の老後のプランに沿った商品を見つけるのが大切です。
「認知症保険」加入前に気をつけたいこと
若い頃から準備ができ、現金給付を受けられる「認知症保険」ですが、もちろん注意しなくてはいけない点もあります。総合的にメリット・デメリットを判断して、老後の安心の道を探ってみてください。
保険料の金額と払込期間・保障内容をしっかり把握する
とりあえず「認知症保険」に入ったから安心、という考え方は禁物です。若いうちに加入して、当初の保険料が低く抑えられたとしても、退職後に将来的に家計を圧迫することもありえます。年金だけの生活になったときに払い続けられるのか?という将来設計も必要です。その観点から保障内容を負担が少ないように選択するのが現実的でしょう。多くの「認知症保険」には、解約払戻金がありませんので、しっかりと計画を立てるのが大事です。
また実際に何歳で発症して、一時金がいくらで、介護年金が何年支払われるのか?という計算を商品別、保障内容別に導き出して、メリット・デメリットを判断するのも良いかもしれません。
あくまで万が一の備えであることを忘れない
認知症患者も年々増加していますが、厚生労働省のデータでは高齢者における認知症患者の割合は以下のようになっています。
年齢階級 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
65-69歳 | 1.94% | 2.42% |
70-74歳 | 4.30% | 5.38% |
75-79歳 | 9.55% | 11.95% |
80-84歳 | 21.21% | 26.52% |
85歳以上 | 47.09% | 58.88% |
(厚生労働科学研究成果データベース「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」より) 80歳を越えてから、認知症の発症率が急激に高くなっていることがわかります。長生きをすればするほど認知症になるリスクは高まるので、終身タイプの保険だと安心できるかもしれません。
一方で、すべての高齢者が認知症になるというわけでもありません。将来のことは誰にも分かりませんが、「認知症保険」は万が一のための備えであるという認識は必要です。
加入したら、必ず家族に知らせる
「認知症保険」に加入したら、必ず家族に知らせるようにしましょう。実際にご自身が認知症になってしまったときに、保険に加入していること自体を忘れてしまうことも考えられます。
まとめ
老後の生活を誰にも迷惑をかけずに安心して過ごしたい、とは誰もが願うことでしょう。「認知症保険」は、万が一認知症を発症したときに手助けになってくれるものです。
認知症の介護は、介護者の精神的なストレスや経済的な負担が問題視されているので、自身が元気なうちに準備をしておくことは大切です。また30〜40代の働き盛りの方々は、両親を被保険者にして契約して将来に備えるという方法もあるでしょう。
とは言え、毎月の保険料を数十年にわたり、支払い続ける必要がありますので、加入にあたっては慎重な検討が必要です。公的介護保険の不足分をどのように補うかの選択肢として、「認知症保険」の知識を持っておくと良いでしょう。
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※1内閣府「平成28年度版高齢化社会白書」
※2慶應義塾大学医学部「認知症の社会的費用を推計」
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