介護のお役立ちコラム
認知症の高齢者と接するにあたり、まずは認知症について正しく理解することが重要となります。近年は、認知症に関する書籍もたくさん見られるようになり、少しずつ社会への認知も高まってきていますが、一緒に暮らす家族や介護の世界で働くヘルパーならば、患者本人や周囲の人たちを安心させられる一定の知識は持っておきたいものです。今回は、そんな認知症に関する資格の一つ「認知症介助士」について取り上げていきます。
認知症という社会課題と向き合う「認知症介助士」
「認知症介助士」は公益財団法人日本ケアフィット共育機構が主催する2014年に創設された民間資格です。認知症患者に見られるさまざまな事例をもとに適切な対応方法を学び、家庭だけでなく、家の近所や公共の場などあらゆるシーンで困っている人の手助けをすることができます。資格名に「介助士」と付いていますが、決して介護の世界で働く人だけのための資格ではなく、誰でも受験することが可能です。
例えば、スーパーマーケットなどの商店で、一日に何度も買い物に来る、金額を伝えても計算ができない、会話のつじつまが合わないなどの客がいたとします。店員が認知症に対する知識がない場合、そのまま見過ごされるばかりか「迷惑な客だ」と偏見を持たれてしまいます。もし認知症に対する正しい知識があれば、いったん保護して家族に連絡を取るなどの対応策が取れるのです。
近年、認知症とみられる高齢者の痛ましい事故が頻発しています。特に踏切事故では、鉄道会社や乗客などに多大な迷惑と被害が及ぶことになり、場合によっては損害賠償を求められることだってあるのです。周囲の人間に認知症についての知識があれば、認知症患者特有の行動や言動から、危険を事前回避することにもつながるのです。
自分のペースで好きなときに勉強・受験できる
認知症介助士の資格取得方法は極めてシンプル。自宅学習のみで受験する方法と、日本ケアフィット共育機構が主催する認知症介助セミナーを受講し、講座が終わったあとに受験する方法があります。なお、学習用に同機構が監修したテキストが用意されていますが、購入はあくまで任意となります。
試験はマークシートまたはパソコン画面への直接入力による選択式で、計30の設問に対し、21点以上で合格となります。試験時間は45分です。場所については、東京と大阪にある同機構の会場か、全国にある提携先の試験会場で受験することができます。同機構の会場で受験する場合はマークシート方式で、提携先の試験会場で受験する場合は、室内に設置されたパソコンを用いて入力する方式(CBT方式)になります。
料金は一律3,300円(税込み)ですが、認知症介助セミナーを受講する場合、別途受講料金がかかります。同時に自宅学習用のテキストの購入も必須となります。また、提携している通信講座や教育機関(大学)を通じて学習・受験することも可能ですが、この場合、受験方法など諸条件が異なります。詳しくは公式ホームページでご確認ください。
地域で暮らすだれもが認知症で困っている人を助けることができる
認知症介助士の資格はどのような場面で生かされるのでしょうか?
まずは街中で困っている人を助けることができます。徘徊は認知症高齢者によく見られる行動ですが、事前に声かけができれば、自動車との接触事故や、高所からの転落など命にかかわるリスクも回避できます。
次に、駅や商業施設などで働く職員が資格取得することも有効です。認知症高齢者本人の安全確保も重要ですが、不審な行動や言動によって周囲の人に迷惑がかかったり、不安がらせたりすることにもなります。また、施設や店舗の資産を棄損することにもつながりかねないため、お互いの名誉を守る目的でも、素早く正しく行動に移すことが求められます。
地域住民やその土地で働く人が認知症への理解を深めるための「認知症サポーター」も広がりを見せています。活動が熱心な自治体では小学校から大学まで、学校教育の中で認知症への理解を促すカリキュラムが組まれています。スーパーや銀行などの職員が声がけから誘導、そして自宅が判明したあと、タクシー運転手が自宅まで送り届けるなど、認知症の高齢者を守る「サポーター」としてのネットワークが機能している自治体もあります。
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介護士が認知症について正しく学び直す機会にもなる
認知症を知るということは、介護の現場で働く人たちにとっても永遠の悩みであり課題です。今一度、認知症について基本を学び直し、正しい知識をおさらいする意味で、介護士の中にも認知症介助士の資格取得を目指す人もいるようです。また、履歴書の資格欄にも書けるので、転職する際や再就職希望ながらブランクがある人たちにとっても、認知症介助士の資格取得は有利に働きます。
最後に
2025年には認知症高齢者の数が700万人を突破すると予想されており、高齢者の約5人に1人は認知症という計算になります。このままでは元気に暮らす若い人たちでも、認知症の人との接点は避けられなくなることでしょう。「家族だから」「仕事だから」という視点ではなく、地域に住まい、働くすべての人が当事者となり、支え合う暮らしづくりが求められているのかもしれません。
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