介護のお役立ちコラム
不治の病とされる認知症。現在の医学では根本的に完治することは難しく、認知症高齢者と暮らす家族の多くは、介護が必要な場面のみならず、日々生活を共にすることさえ苦強いと感じられている方も多いのではないでしょうか。 しかし、認知症は薬でその症状を緩和できます。今回は、主にアルツハイマー型認知症に有効とされる薬について、その効果や副作用などを踏まえご紹介します。
認知症の進行を遅らせる効果が高い、「ドネペジル塩酸塩」
人間の脳内には、記憶に関連する「アセチルコリン」と呼ばれる神経伝達物質が存在し、このアセチルコリンの量によって、記憶、学習の能力、睡眠の質などが左右されます。アルツハイマー型認知症になると、このアセチルコリンが減少するために認知機能が低下し、記憶障害が起こると言われています。 このアセチルコリンを分解する酵素の働きを抑える効果があるのが、認知症の代表的な薬として知られるドネペジル塩酸塩です。特に認知症初期の段階で薬を摂取するとより効果を発揮し、アルツハイマー型認知症の症状が進行するのを大幅に遅らせられる場合があります。 また、近年では、アルツハイマー型認知症だけではなくレビー小体型認知症への効果も認められていて、ドネペジル塩酸塩は認知症治療の強い味方と言えるでしょう。
服用するときは気をつけたい、ドネペジル塩酸塩の副作用
ただし、認知症の薬を処方するときは、その副作用についても注意しなくてはいけません。一般的に、ドネペジル塩酸塩のおもな副作用として以下の症状が知られています。 ・食欲不振 ・嘔吐 ・下痢 ・便秘 また、そのほかにも、特に進行期のアルツハイマー型認知症の患者さんにおいては、 ・徘徊 ・幻覚 ・暴力といった周辺症状 ・落ち着かずに歩き回る ・攻撃的になる ・夜中に騒ぎ出すといった症状がより活発に ・筋肉のけいれん(転倒や転落による打撲・骨折のリスク高) など周辺症状が現れるケースも。 なお頻度は少ないですが重篤なものとして、 ・不整脈、心停止 ・心筋梗塞 など心臓の重大な副作用が知られており、特に心臓に持病のある方では要注意です。この他にも頻度の少ないものも含めると呼吸困難など重篤な副作用が出る可能性もあり、さらに、ほかの薬との併用によって副作用がより強く出る場合もあります。 さらに、ほかの薬との併用によってより副作用が強く出る場合もあります。年齢とともに肝機能、腎機能が弱まってくると、血液中の薬の成分を早く分解できないため、長時間体内に残りがちになり、体が受けるダメージも大きなものになります。医師の処方を守り、決められた量を服用するよう心がけましょう。
今ではいろいろな薬が選べる時代に。医師と相談しながら選択を
1999年から2010年まで、認知症の薬と言えば、エーザイ株式会社の「ドネペジル塩酸塩(商品名:アリセプト)」一択のような状況でした。 しかし近年はそのほかにも認知症の薬として「ガランタミン臭化水素酸塩(商品名:レミニール)」、「メマンチン塩酸塩(商品名:メマリー)」といった経口薬が登場し、パッチタイプ(貼り薬)の「リバスチグミン(商品名:イクセロン、リバスタッチ)」も発売されています。 また、2011年に「アリセプト」の特許が切れたため、ドネペジル塩酸塩のジェネリック医薬品が登場するようになりました。 さまざまな薬の中から、認知症の症状や進行具合、ほかの病気で処方されている薬との併用を考慮した上で、医師と相談しながら選択しましょう。
終わりに
以上ご紹介したように、認知症治療薬の登場によって、従来の認知症ケアと合わせていくつかの認知症緩和策が講じられるようになりました。しかし認知症治療薬も、認知症初期の段階では高い効果が見込めるものの、ある程度症状が進行した患者に投与した場合、かえって症状が悪化したり、副作用によって体に思わぬ危害が加わったり逆効果の可能性もあるので注意が必要です。 薬を服用する際は、必ず医師の処方を守ること。そして薬をうまく活用しながらも、認知症の進行を少しでも緩和させながら、本人にとって安心してストレスのない暮らしを提供してあげることが、家族にできる最善の認知症緩和策となるでしょう。
監修医 伊達悠岳 医師。専門は神経内科。済生会横浜市東部病院勤務。
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