介護のお役立ちコラム
年を取ると記憶力が低下し、物事を思い出せなくなってしまうのは避けられないものです。高齢者の家族と暮らしている人は、その異変にすぐに気づくことでしょう。 「このままでは認知症になってしまうかもしれない」「でもどこに行って検査してもらえばいいのかわからない」。そんな心配をする人のために、病院などの医療機関には「物忘れ外来」が併設されています。「物忘れ外来」とは、問診や検査などによる認知症の診断をおこなう専門外来です。 今回は、この「物忘れ外来」について説明していきます。
「物忘れ外来」では、認知症の専門家がしっかり診断
認知症の予兆が見られる場合、まずは、かかりつけ医や自治体の福祉課、地域包括支援センターなどの窓口に相談してみましょう。こういった窓口では、地域にある物忘れ外来を紹介してくれます。 物忘れ外来は、主に大きな総合病院に併設されています。神経内科または精神科の医師が担当することが多く、段階によっては臨床心理士が対応するケースもあります。特に認知症分野を専門に扱ってきた経験豊富な医師が在籍していることが多く、初めて病院を訪れる方には非常に頼りになる存在となることでしょう。また、医療機関によっては「認知症外来」など名称が異なる場合もあります。
問診から再来院まで。「物忘れ外来」受診の流れ
次に診療の流れについて説明します。病院によってその内容に多少差がありますが、基本的に以下のような流れになります。予約が必要となるので注意しましょう。
問診
担当医から、体調や症状、家族構成、既往歴、定期的に服用している薬の有無などについて質問されます。このとき、必ず家族の付き添いが必要となります。患者本人が質問に答えられない場合、代わりに説明しなくてはなりません。また、家族による客観的な見解も必要となってきます。
神経心理学検査
知的機能、認知機能、記憶、実行機能を確認するため、より詳細なテストをおこないます。プライバシーが確保された静かな部屋で、臨床心理士と患者による1対1でおこなわれます。所要時間は、約1時間程度とやや長丁場になります。
画像診断
MRIによる脳の画像診断をおこないます。同時に、血液検査、胸部レントゲン、脳波測定なども行います。
再来院
以上の診断と検査結果を踏まえ、認知症または認知症の疑いのある人は、今後の治療法などについて医師から説明があります。また検査結果が不明瞭だった場合、再検査となる場合も出てきます。
来院の際の注意点
来院の際は、患者の直近の容態、そして生活習慣や行動について医師の質問に答えられるように、付き添う家族はしっかりと把握しておく必要があります。 また、患者本人がいつもどおり、リラックスした状態で問診にのぞめるかも重要なポイント。慣れない医師の前で張り切ってしまい、普段よりじょう舌になる高齢者もいれば、逆に緊張してしまい、覚えているはずの事なのにうまく言葉にできない高齢者もいるようです。
物忘れが激しいからといって、認知症とは限らない
もちろん、物忘れが目立つようになったからといって、必ずしも認知症を発症しているわけではありません。例えば、以下のような物忘れのケースが考えられます。
加齢にともなう物忘れ
誰しも、一時的に物を思い出せなくなるといった経験をしたことがあると思います。この場合、事実やヒントを教えてあげると「ああ、そうだった」と思い出すことができます。年を取るごとにその回数は増えてきますが、これは年相応であり、医学的には"正常な物忘れ"と言われています。
軽度認知機能障害
認知症までといかないものの、物忘れの頻度がより著しくなった状態を指します。いわば正常の状態と認知症の中間。しかし加齢にともなう物忘れに比べ、将来的に認知症を発症する確率は高くなります。
疾病による物忘れ
硬膜下血腫や正常水頭症など、血液や髄液が脳を圧迫することによって一時的に起こる物忘れです。認知症と間違われるケースが多いのですが、適切な処置をすることによって回復する(物忘れが改善される)点が大きく異なります。 診断の結果にも関わるので、患者の緊張をできる限り解いてあげて、もし本人が事実と異なることを言ったら、訂正することも必要です。
早期の検査が認知症の進行を食い止める
物忘れ外来は認知症の早期発見に大きく役立ちます。認知症と診断されなかった人も、近い将来、物忘れの症状を頻発することも考えられるため、定期的に受診することが大切です。 いずれにしても、認知症は早期発見によって適切な処置をすれば、その進行を大幅にゆるやかなものにできます。そのためには、家族による高齢者へのちょっとした"気づき"と、認知症対策のために設けられた相談窓口や医療機関の存在を知ることが大切なのです。
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