介護のお役立ちコラム
皆さんは、通所介護(デイサービス)や有料老人ホームといった介護サービスを選ぶ際に何を重視されますか? 自宅からの距離、かかる費用、職員の対応などいろいろな要素が考えられます。 その中で、とくにサービスを受ける高齢者本人にとって重要なことでありながら、家族がつい見落としてしまいがちなのが「レクリエーション」です。 デイサービスや有料老人ホームでは、同じ建物の中で1日の大半の時間を過ごすため、レクリエーションのバリエーションや質は、利用者が充実した時間を過ごすために非常に重要なポイントとなります。 今回はレクリエーションが認知症に及ぼす効果をおさらいするとともに、現在、介護の現場で実践されているユニークなレクリエーションの紹介やサービス選びの際の注意点について触れてみたいと思います。
レクリエーションは、身体・脳・心の健康によい影響を与える
介護の現場で実践されているレクリエーションにはさまざまなタイプのものがあります。それでは、実際にどのような効果が望めるのでしょうか? 第一に、体を動かすことによる筋力強化・運動機能維持です。たとえば病気による体調不良や、定年退職を機にこれまでより外出する機会が減ったという人は多いですが、日課となっていた歩行(通勤や買い物などの外出)を止めただけでも筋力は徐々に衰えていきます。 現在は、自治体が取り組む「介護予防・日常生活支援総合事業」などでも、簡単なエクササイズを受けられることもあり、初期の要支援・要介護状態からの運動機能維持による、介護予防、寝たきり防止に国を挙げて注力しています。 ふたつめの効果は、レクリエーションを通じた脳の活性化です。最近では、簡単な計算やパズルが掲載された高齢者向けのいわゆる"脳トレ本"を、レクリエーションの一環として導入しているデイサービスもあります。こういった作業やゲームは、常に「考える」「判断する」「序列をつける」といったことが求められるため、認知症予防にも効果があるとされています。 そして3つめの効果が、ほかの利用者とコミュニケーションをとり、協働することによって得られる満足感や達成感です。ひとりで黙々とトレーニングに打ち込むのもいいですが、気の合う仲間を見つけ、一緒になって楽しくレクリエーションに参加するのもQOL ( 生活の質)に大きく影響します 。
介護の現場で実践されている代表的なレクリエーション
施設などの見学の際に、実際のレクリエーションを目にする機会があることかと思います。傍目には娯楽のように映るかもしれませんが、いずれも心身両面での機能を保つことを考えたプログラムで、認知症の予防を念頭に置き、考案・開発されているのです。
ボール(風船)を使った運動
運動機能維持のための、ボールを使ったレクリエーション。ビーチボールのような軟らかく安全な素材を使用したものもあれば、風船を利用したものもあります。 最も代表的なものが「風船バレー」と呼ばれるもので、複数人で円形状に座り、膨らませた風船を地面に落とさないよう手ではたいて、参加者でつないでいく運動です。風船は滞空時間も長く、反射神経と判断力が衰えた高齢者でも扱いやすいことから用いられています。また、うちわをラケット代わりに使った「風船テニス」など独自のアレンジを加え実践している施設もあるようです。
指先を使った「作業」
ほとんどのデイサービスや有料老人ホームで取り入れられているのが指先を使うレクリエーションです。具体的には、切り絵、貼り絵、編み物やお菓子づくりなどが挙げられます。 指先を使っての作業は脳の活性化につながるため、認知症予防に効果があるとされています。これらは一般的に「作業療法」と呼ばれ、ほかにも楽器の演奏や庭仕事なども、運動機能を保ちながら、脳への効果も望めます。
頭を使うゲームなどのレクリエーション
トランプや将棋、オセロといったゲームは頭を使うレクリエーションです。とくに一対一での勝負事で長時間やりこめる将棋や囲碁は、男性利用者に重宝されます。 一方で男女問わず大人数で参加できるクイズ(なぞなぞ)も人気を集めています。 また、そのほかにも季節柄、節分の日には豆まきをしたり、桃の節句のときには甘酒やひなあられを軽食として提供したりすることも慣習となっています。特に入所系のサービスでは外出する機会が限られることから、このような季節を感じてもらえるようなレクリエーションは必要だと考えられているのです。
レクリエーションの種類は、施設の立地が関係することも
施設を選ぶ際に、どのようなレクリエーションが提供されるのかは、各事業所の見学時にスタッフに確認してみましょう。レクリエーションは、事業所の立地条件や建物の構造(居室の広さ)などによって、そのサービス内容は変わってきます。 たとえば都心部のデイサービスでは、マンションや雑居ビルの1階に事業所を構えているところが多くあります。ただ、閑静な住宅地では、大人数で合唱したり音楽をかけたりすることが騒音問題としてNGなケースも。 逆に郊外では、住宅地にある一軒家を改修した事業所が多い傾向にあります。庭先での農作業や草花を育てるなど自然と触れ合うレクリエーションを売りのひとつにしている施設が多いようです。
利用拒否にならないためには、家族と介護スタッフとの連携が必要
事業者側の都合ではなく、利用者一人ひとりにも、それぞれ向き・不向きのレクリエーションもあります。 たとえば大人数でおこなう合唱やクイズなどに難色を示す人も少なくありません。もともと人見知りが激しくなかなか人の輪に溶け込めない人もいれば、「あんな幼稚なことはしたくない!」と露骨に拒否する人、クイズで間違えることに恥を感じて参加したがらない人もいます。 このような場合、家族もスタッフも、決してレクリエーションへの参加を無理強いしてはいけません。まずは話の合いそうな利用者と親しくなることからはじめ、徐々に輪の中に入り込めるような環境を作ってあげることが重要です。 利用者が溶け込めるようにするために、まずは介護スタッフがその人のことを深く知ることが必要ですが、そのヒントである過去の経験などを介護スタッフに提供できるのは家族のみ。介護スタッフには、惜しまず情報提供をしましょう。
施設選びの際はレクリエーションを吟味することも大切
デイサービスや有料老人ホームで提供されるレクリエーションは、認知症の緩和だけでなく、利用者の生きがいを見つける可能性も秘めています。それぞれの事業者、施設で提供されるサービスの内容は千差万別で、利用する本人の意思も含めた検討が必要です。 「レクリエーションなんてどれも同じ」「結局は娯楽の延長」と軽く考えるのではなく、レクリエーションの内容にも十分に気を遣ってサービスを選ぶようにしましょう。
参考文献 『介護の現場で使える会話の引き出し便利帖』布施克彦著 翔泳社
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