介護のお役立ちコラム
認知症の進行を防ぎ、できるだけ能力を維持するために必要なリハビリテーション。リハビリは、病院やデイケアなどの施設に行かないとできない、難しいものと思っている方も多いのではないでしょうか。
実は、自宅でも簡単にできる認知症の方向けのリハビリの方法があります。今回は、その方法と自宅でリハビリを行う時の注意点をご紹介します。
認知症リハビリの基本的な考え方
具体的な方法をお伝えする前に、まずリハビリの基本的な考え方についてお話しましょう。 認知症の方が行うリハビリは、症状の進行を防ぐためです。リハビリをしたからといって、劇的に症状が改善されるわけではありません。リハビリが刺激となり、認知能力が改善する場合もありますが、あくまで症状の進行スピードを遅らせるものと考えた方がよいでしょう。
また、認知症のリハビリは認知能力の維持だけではなく、楽しみをつくり笑顔を生む効果もあります。認知症の方は活動意欲が低下して「アパシー」を起こし、閉じこもりがちになることが多いといわれています。リハビリをすると生活の楽しみにつながり、活動意欲向上の一助となるのです。笑顔で生き生きと暮らすことも、認知症リハビリの大事な目的であると知っておきましょう。
【関連記事】認知症高齢者に見られる「アパシー」。うつとの違いや対処法は?
認知症リハビリの具体的方法
では、自宅でできる認知症リハビリについて、具体的に説明していきます。すべてを毎日やる必要はありませんが、本人に合うやり方や頻度で取り入れてみてください。
昔のことを思い出す「回想法」
自宅で気軽にできるリハビリのひとつが、「回想法」です。やり方は、写真や思い出の品などを見ながら、昔のことについて語るだけ。「◯歳の頃は何をしていた?」「結婚したばかりの頃の思い出は?」など、昔のできごとを聞いてみましょう。
認知症の方は、最近のことは思い出せなくても、昔の記憶はしっかりと覚えている場合が少なくありません。昔の思い出を語ることは、精神面を安定させるほか、認知症の予防や改善にも効果があるといわれています。もし、間違ったことを語ったとしても訂正しないよう注意するのがポイントです。
日常生活動作や趣味の活動をする「作業療法」
みなさんは、手先を使う遊びや家事などの日常動作や趣味を通じておこなうリハビリ、「作業療法」をご存知でしょうか。病院や施設では国家資格をもつ作業療法士(OT)という専門資格を持ったスタッフが行っているものですが、実は自宅でもできます。
たとえば、簡単な家事(洗濯物を畳む、掃き掃除をする、テーブルを拭くなどなんでも)を一緒にやってみたり、好きな趣味の活動(編み物や塗り絵、折り紙、囲碁や将棋といったゲームなど)をしてみたりするなど、本人の能力や好みに合わせた作業にトライしてみましょう。
作業療法によって指先や体を動かすことは脳への刺激となり、認知症の抑制や発症予防に効果があるといわれています。しっかりと体を動かす畑作業や庭いじりなどにも積極的に取り組んでみるとよいでしょう。
好きな歌を聴いたり歌ったりする「音楽療法」
音楽療法は、歌を歌ったり楽器を演奏したり、あるいは音楽を聴いたりして、認知症の症状緩和を目指すもの。病院や施設などでも、複数人で集まって合唱をしたり、音楽鑑賞したりする場面がよく見られます。
自宅で音楽療法をやるのであれば、本人が好きだった曲をかけてみたり、一緒に歌ってみたりするとよいでしょう。思い出の曲を聴いたり歌ったりすることは、先ほどご紹介した回想法の役目も果たしてくれます。
音楽を楽しむことは気分の安定につながるほか、歌詞を思い出したり覚えたり、自ら歌うことにより脳の刺激になって症状の緩和が期待でき、発声や嚥下機能の改善にもつながるといわれています。
体力低下や不眠予防に「ラジオ体操」や「ストレッチ」
年齢を重ねると運動不足になりがちです。とくに認知症の方は引きこもりがちになるので運動量が極端に少なくなったり、日中に昼寝をしてしまったりすることで、夜間の不眠や昼夜逆転の原因となってしまいます。 それによって、徘徊や夜間せん妄(意識障害が起こり、頭が混乱した状態になること)が引き起こされることもあるのです。
予防のために有効なのが、ラジオ体操やストレッチなどの簡単な運動です。日中に体をしっかり動かすことで体力低下の防止になり、夜間眠りやすくなることも期待できます。椅子に腰掛けてできる、動きが簡易化されたラジオ体操第1、ラジオ体操第2、および「みんなの体操」は、動画やDVDでも紹介されています。
【テレビ体操】ラジオ体操第1|NHK(動画)
【テレビ体操】ラジオ体操第2|NHK(動画)
【テレビ体操】みんなの体操|NHK(動画)
コグニサイズも効果的
コグニサイズは、認知(Cognition)と運動(Exercise)を組み合わせた造語で、国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターが開発しました。体を動かすのと同時に計算などの認知トレーニングを行い、運動機能と脳の働きを活性化させることで認知症を予防します。認知症患者の大幅な減少につながると期待されているのです。コグニサイズに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】
運動と認知トレーニングを組み合わせた「コグニサイズ」。その方法と効果とは?|認知症のコラム
脳トレも認知症予防に期待できるリハビリ方法
2000年中盤にブームになった「脳トレ」。東北大学の川島隆太教授が監修した『脳を鍛える大人のDSトレーニング』が大ヒットしました。この脳トレが、再び盛り上がる兆しを見せています。2019年12月27日には最新作である『東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のNintendo Switchトレーニング』が発売されるなど、脳トレに注目が集まっているのです。
脳トレは、認知症の方にも効果が期待できるリハビリ方法です。上記のようなテレビゲームに限らず、ジグソーパズルや小学生向けの簡単なドリルを使った計算、字の書き取り、将棋や囲碁、オセロなどのボードゲームも立派な脳トレになります。 頭を使うことは脳へ刺激を与え、脳が刺激を受ければ血流が上がって、認知機能向上につながることが期待できるのです。
自宅でおこなう認知症リハビリの注意点
ここからは自宅でリハビリをおこなうときの注意点について説明していきます。
1. 無理をしないこと
まず気をつけたいことは、けっして無理にリハビリを行わないことです。体調が悪いときや本人が嫌がるときに無理しても上手くいかないどころか、リハビリは嫌なものという考えをもたせてしまいます。もし嫌がるようであれば、本人の好きな別の方法に変えたり、気持ちが向くまで待ったりなどしてみてください。
また、途中で体調が悪くなったときは無理をせずに中断し、気になるようであれば病院へ行くなどするようにしましょう。
2. プライドを傷つけない
もうひとつ大切なことが、本人のプライドを傷つけないことです。認知症になってできないことが増えてくると、介護者側がついつい子どものように接してしまうことがあります。 本人の意思を尊重し、やりたいことを楽しくやれるような環境づくりとコミュニケーションを心がけるとよいでしょう。
3. 「体」「頭」「心」を意識する
リハビリを行うときは、体・頭・心の3つへの刺激を心がけるようにすることが理想です。体を動かして体力の低下を予防し、頭への刺激で脳への血流改善を図り、家族とのコミュニケーションや好きなことをする楽しみで心を満たす、といった具合です。
それぞれにバランスよく働きかけるリハビリを心がけることで、より大きな効果も期待でき、本人の満足度も上がるでしょう。
本人・家族双方にメリットが大きいリハビリを楽しく
認知症は治すことが難しい病気ですが、働きかけ次第で進行スピードを遅らせることができます。リハビリは認知症発症の予防や、高齢者の生活レベルを保つことにつながり、本人にとっても家族にとっても良い効果となります。
症状の進行を防ぎ、本人の楽しみや生きがいづくりにもなるリハビリ。できる範囲で少しずつ取り入れてみましょう。
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