介護のお役立ちコラム
様々な介護サービスが存在する中、高齢者が気軽に集える「認知症カフェ」が注目を集めています。「カフェということはお茶を提供してくれる喫茶店みたいな場所なの?」「一般の人は入れないの?」と、その名前からつい疑問を持ってしまいそうですが、決して飲食だけの場とは限りません。今回は、全国各地で広がる認知症カフェの取り組みについて紹介します。
認知症カフェについて
認知症カフェとは、認知症高齢者とその家族が集える場所です。名前の通りお茶や軽食を楽しみながら参加者同士が交流を図り、介護にまつわる専門家が情報提供をしてくれます。必ずしも当事者だけではなく、地域の住民や大学などに通うボランティアサークルの学生といった一般の人の参加も可能で、肩肘張らずにコミュニケーションを楽しむ場として機能しています。
認知症カフェは、福祉先進国であるオランダの「アルツハイマーカフェ」をモデルに誕生しました。2015年(平成27)に厚生労働省が定めた認知症施策推進総合戦略(通称:新オレンジプラン)で認知症地域支援推進員の役割として明記されたことで、その数を増やすと共に認知症高齢者とその家族にも広く知られるようになりました。
「カフェ」という名前が付いていますが、主催者は社会福祉法人や医療法人、自治体、NPO団体、個人の有志者など様々で、会場も介護施設の共有スペースから公民館、個人宅、レストランやカフェなど実に多岐にわたります。飲食店でなくてはダメといった決まったルールはありません。参加費用も1人につき100円程度で、これに飲食費・材料費などがプラスされるくらいなので個人負担が非常に少ないのもうれしいポイントです。
これまで介護事業者やボランティアなど公益性の高い団体によって発展してきた認知症カフェですが、社会の関心の高まりと共に企業が慈善事業の一環として取り入れるケースもみられる様になりました。2019年4月、町田市(東京都)は大手コーヒーチェーンのスターバックスコーヒージャパンと連携協定を結び、市内の同店舗で定期的に出張認知症カフェを開いています。この協定締結によって、同社は従業員に認知症サポーター養成講座の受検を推進し、認知症カフェのほか高齢者の見守りや来店する客への普及啓発を進めるとしています。
認知症カフェの参加方法
認知症カフェが毎日開催されていることは稀で、中には月に1回程度の頻度というところもめずらしくありません。そのため、主催団体のホームページや市区町村が発行する広報誌、町内の掲示板などで気になる認知症カフェのスケジュールを把握しておく様にしましょう。
満員でない限り飛び込み参加が可能なところも多いようですが、事前に電話やメールできちんと予約しておく方が無難です。中には道具を使い、ものづくりをするプログラムもあるため、材料や機材が足りなくなるケースも往々にして考えられます。
認知症カフェの活動内容とは?
続いて認知症カフェの具体的な取り組みを見てみます。社会福祉法人東北福祉会 認知症介護研究・研修仙台センターが作成した報告書によると、活動内容で最も多いのが「カフェタイム」で、「介護相談」「アクティビティ」と続きます。
カフェタイムでは主催者がお茶やお菓子を用意して、喫食しながら参加者同士が会話を楽しむ場を提供するものです。オープン時間は会場によって異なりますが、参加者の行動は自由で途中入退室も可能です。おしゃべりが大好きな人も多く、つい長居してしまう高齢者も少なくありません。家族にとっても相手の家族と情報交換できるメリットもあります。
介護相談については、介護福祉士や看護師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)といった専門家が介護についての悩みを聞いたりアドバイスをしたりします。参加する専門家たちも、地域との連携や多職種間連携を図り自らの知見を広げられるといったメリットもあります。
アクティビティについては、上記専門家やボランティアの性質により会場ごとに内容は異なってきますが、認知症予防のための脳トレーニング、ロコモティブシンドローム解消のための簡単なエクササイズ、料理・手芸・ガーデニングのレクチャーや囲碁・将棋サロン、パソコン・タブレット教室など多岐にわたります。
独居高齢者の場合、終日家に引きこもり誰とも会話をしないというケースも多く、感情に抑揚が生まれない生活を続けていれば認知症が悪化する可能性も高くなります。「要支援」の高齢者の多くが利用していたデイサービス(通所介護)などが介護保険の適用から外された今、新たな福祉サービスの利用を希望していた人たちにとって認知症カフェは必要とされていくことでしょう。
認知症カフェが抱える課題
全国の自治体では、認知症カフェを始める団体に対して補助金を支給するなどの支援をしています。しかし、課題が少なくないのも事実です。
まずは自治体によって温度差があること。高齢者救済の福祉サービスは認知症カフェ以外にもあるため、すでに他の施策を試みている自治体では、認知症カフェへの理解が乏しくあまり力を入れていないところもあります。
続いて、企業や個人経営者が参画しにくいという点。企業や個人経営者による認知症カフェが成功し軌道に乗っている事例が少なく、いざ始めたはいいが赤字になるリスクも考えられます。特に飲食を提供するところは、お店独自の個性豊かなおいしいメニューが一つの集客ポイントになりますが、参入者が少ないため確固たるノウハウがなく、認知症カフェに興味があっても二の足を踏む人も多くいるはずです。
また「認知症カフェ」という名前が偏見を持たれてしまうこともあるようです。年齢や認知症の有無を問わず多くの人が集まる場所であるはずなのに、認知症の人しか入れないという誤解も生まれ、地域住民など一般の人が参加することへの障壁になってしまいます。
最後に、衛生面とセキュリティの問題があります。インフルエンザが流行する冬場は、手洗いやうがい、食器など使用する道具の消毒を徹底しなければ、一気に感染が広がってしまいます。特にデイサービスの一室などを会場に利用している認知症カフェは要注意です。
「誰でも参加できる」とこが認知症カフェの大きな特長ではありますが、出入り自由の環境にはやはりリスクが伴います。2016年に相模原市の障がい者施設で起きた殺傷事件を機に、各福祉施設では門扉の施錠や監視カメラの設置を徹底する動きがみられましたが、ガードを徹底したことによって外部との交流が弱まってしまったという施設職員の意見も聞かれました。安全を確保しつつ開かれた場であることを両立していくのは今後の大きな課題と言えそうです。
近所の認知症カフェを調べてみては
ここまでご紹介したとおり、認知症カフェは主催者と参加者、そして活動を後押しする自治体のアイデアを柔軟に取り入れることが可能です。ちょっとしたおしゃべりやアクティビティの場に始まり、個性豊かな活動だって実現可能なのです。今後高齢化が進む地域の社会を支える認知症カフェについて、まずは住まいのある地域でどのような取り組みがあるのか調べるところから始めてみましょう。
■参考文献
・認知症支援で連携 町田市とスタバが協定_東京新聞
・認知症カフェの実態に関する調査研究事業 報告書_社会福祉法人 東北福祉会 認知症介護研究・研修仙台センター
・認知症カフェとは_介護ガイド【有料老人ホーム情報館
・【コラム】認知症カフェ「ラウレア」(東京都江東区)_介護タクシー案内所
■参考記事
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