介護のお役立ちコラム
高齢化が進む日本では、認知症高齢者の数が2025年には700万人を突破すると言われています。
現在、アルツハイマーや認知症予防のためにあらゆる予防プログラムが推奨されていますが、今回はその代表的な一つである「コグニサイズ」について、その方法と効果をご紹介します。
個人のペースで無理なく続けられる内容のため、認知症が心配という方は今日からでも始めてみましょう。
コグニサイズについての基礎知識
「コグニサイズ」は、国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターが開発した運動と認知トレーニングを組み合わせて、認知症予防を目的とした取り組みの総称です。
認知(Cognition)と運動(Exercise)を組み合わせた造語で「Cognicise(コグニサイズ)」と命名されました。
その名前のとおり、体を動かしながら筋力の強化や機能維持をはかると同時に計算やしりとりといった認知トレーニングも行い、脳の働きを活性化させて認知症の発症を遅らせるメソッドです。
認知症患者の半数以上がアルツハイマー型の認知症。その危険因子のトップが身体的不活動であることからも、多くの人が早い段階で「コグニサイズ」を実践していけば、認知症患者の大幅な減少につながると見られています。
運動の種類によって「コグニステップ」「コグニダンス」「コグニウォーキング」「コグニバイク」などいくつか種類はありますが、今回は一人で家庭でもできるベーシックな「コグニステップ」について取り上げます。
無理なくケガなくトレーニングするための注意点
誰にでも無理なく始められる「コグニサイズ」ですが、運動である以上、入念なウォーミングアップは必要です。特にしばらく運動から遠ざかっていた人が急に始めると筋や関節を痛める傾向があるので、安全かつ効果的に行うためにも以下の10カ条を守るようにしましょう。
1.無理はしないで徐々に行う
ペースをつかめず頑張ってしまうと体を痛めてしまったり、エクササイズが長続きしないと考えられます。まずは回数を少なめに設定し無理のない範囲で始めましょう。
2.ストレッチしてから開始する
すべての運動に共通して言えることですが、エクササイズの前に入念に準備運動をしましょう。体を暖めておけばケガのリスクを軽減できます。
3.水分を補給する
閉め切った室内だと室温が急上昇し、脱水症状に陥ることがあります。屋外の場合、直射日光が照りつけるような場所では真夏でなくても熱中症への注意が必要です。必ず水やスポーツドリンクを準備しこまめに水分補給しましょう。
4.痛みが起きたら休息を取る
「コグニサイズ」の最中に少しでも体に違和感を覚えたら、すぐに中止して休息を取りましょう。
5.トレーニング中の転倒に注意
足腰の弱い高齢者にとって、立った状態でのトレーニングは常に転倒の危険が伴います。緩衝性の高い転倒防止のマットを足元に敷くことや、手すりがある場所ではそれにつかまりながら行うようにしましょう。
6.少しの時間でもできるだけ毎日行う
運動習慣をつけるためには毎日の継続が重要です。1回の実施の目安は、まず10分。時間が短くても、決まった時間に実施する習慣を身につけることで高い効果を期待できます。
また、行ったトレーニングの内容を手帳や日記に記録するのも重要で、書いて記憶すると認知症予防につながります。
7.適正な強度で運動を行う
1や4の項目と矛盾するようですが、運動中にラクと感じるようでは効果的なトレーニングとは言えません。もちろん無理は禁物ですが、体の部位に負荷を感じるくらいの強度で行うのが理想的です。強度は、目標心拍数を求めて、運動時に自分で脈を取りながら適正かどうかを判断しましょう。下段の表を参考してください。
8.慣れてきたら次の課題に移る
毎日同じメニューを繰り返し、慣れてきたら少しレベルアップして体にかける負担を大きくしてみましょう。自分の体の具合と相談しながら、回数や時間を増やしていくのが得策です。
9.トレーニング内容は複数の種目を行う
同じ内容のトレーニングを続けていても、決まった部位の筋力アップしか望めません。足、腕、肩、背中など体のいろいろな箇所に負荷がかかるよう、ストレットや軽い筋トレなど複数のエクササイズを1日のトレーニングへ取り入れるようにしましょう。
10.継続がもっとも大切
せっかく始めたトレーニングも三日坊主で諦めてしまう人も多くいます。1日の中で実施する時間帯を決めることや、夫婦で一緒に取り組むことによって、サボらず長続きできるようになります。
コグニステップを実践してみよう!
それでは「コグニサイズ」の一つである「コグニステップ」を実践してみましょう。自宅のわずかなスペースでも椅子に座ってでもできるので、まずはこのエクササイズから始めてみましょう。
【STEP1】コグニッション(認知トレーニング)課題
画像:「国立長寿医療研究センター 『認知症予防に向けたプログラムコグニサイズ』のパンフレットより引用」
1から順に声を出して数字を数えていきます。ただし3の倍数のときに手を叩くようにします。
【STEP2】エクササイズ課題
画像:「国立長寿医療研究センター 『認知症予防に向けたプログラムコグニサイズ』のパンフレットより引用」
両足で立つ、もしくは椅子に座って、数字のカウントに合わせ、①で右足を右側に踏み出し、②で右足を戻します。今度は③で左足を左側に踏み出し、④で戻します。これを繰り返します。
【STEP3】STEP1と2を組み合わせて運動
画像:「国立長寿医療研究センター 『認知症予防に向けたプログラムコグニサイズ』のパンフレットより引用」
足のステップが4カウントで1サイクルになっているのに対し、拍手は3カウントで1サイクルになっています。
音楽に例えるのならば、指揮者が3拍子と4拍子を同時に刻む形になります。手と足の動きが決まったパターンで動かないため、最初はぎこちなく感じるかもしれませんが、まずはこのサイクルを10分間、毎日繰り返すようにしましょう。
ある程度慣れてきたら、時間を長くしたり、3以外の数字の倍数にしてみたり、足のステップに左右だけでなく前後の動きも加えてみたりするなど、難易度を上げ脳の働きを活性化しましょう。
適正な強度を設定しましょう
効果的な運動をするには、強度と頻度が大切になります。まずは下記の計算式から目標心拍数を求め、早見表で自身の目標心拍数を確認しましょう。
目標心拍数の求め方
① あなたの安静時心拍数(※10分以上安静状態にした後の1分間の脈拍数)
② あなたの最大心拍数(心拍数の上限値)
207-(年齢✕0.7)=最大心拍数
③ あなたの予備心拍数(最大心拍数から安静時心拍数を引いた値)
②−①=予備心拍数
目標心拍数=0.7(※)✕③+①
※目標数値が70%の場合
画像:「国立長寿医療研究センター 『認知症予防に向けたプログラムコグニサイズ』のパンフレットより引用」
70歳で安静時心拍数が70の方が、強度70%の運動をした場合、運動時の心拍数が132前後だと目標どおりの運動ができたことになります。
心拍数がそれより上だと、その運動は負荷がかかりすぎている可能性があります。このように強度を調整しながら、無理なくステップしましょう。
体と脳、両方の機能維持が期待できる「コグニサイズ」
現在「脳トレ」に代表されるような、アルツハイマー病や認知症予防のためのテキストブックや携帯ゲームソフト、アプリなどが多数見受けられるようになりました。それだけ世の中の認知症予防に対する関心が高まっているとも言えます。
今回ご紹介した「コグニサイズ」は、運動と認知トレーニングを同時進行で行うスタイルのため、体と脳の両面での機能維持が期待できます。
早い段階からの予防トレーニングも含め、きちんとした食生活の心がけ、睡眠時間の確保、趣味に打ち込む時間をもつなど、総合的な視点から健康的に老後を暮らすための計画を立てていくことが認知症予防には大切なことなのです。
※「コグニサイズ」を事業所(企業、病院、施設など各種団体)で行う場合には、指導員が、国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターの主催する2種の指導者養成研修(「コグニサイズ指導者研修(2日間)」と「コグニサイズ実践者研修(1日間)」)を受講し、「コグニサイズ™」の商標を用いた催事としなければなりません。また、同センターの内容を参考に運動説明書などの印刷物を制作する際は、利用登録ののち「コグニサイズ™」と記載するよう要請されています。
■参考と問い合せ先:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターホームページ
出典:「国立長寿医療研究センター 「認知症予防に向けたプログラムコグニサイズ」のパンフレットより引用」
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