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老人ホームの基礎知識。
老人ホームの体験入居完全ガイド|良い施設のチェックポイントを徹底解説
更新日:2025/03/07
「一人暮らしの父親の介護が大変なので有料老人ホームに入居させたいが、本人に合った施設かどうか不安である」「入居後に後悔しないよう、事前に施設の様子を知っておきたい」といった悩みや考えをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
老人ホームの施設選びを誤ると、本人の不適応などの理由で予期せぬ転居の必要性が生じ、家族の負担がさらに増えてしまう可能性があります。
そこで本記事では、より良い施設選びに役立つ「体験入居」について、そのメリットや確認すべきポイント、費用や期間などをわかりやすく解説していきます。老人ホーム選びに悩まれている方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
老人ホームに体験入居する前にしておくこと4ステップ
老人ホームの体験入居は言わば、入居前の最終確認です。老人ホームに体験入居をする前に確認すべき4つのステップについて説明します。
- ① 資料を取り寄せて検討する
- ② 体験入居前に施設を見学する
- ③ 費用を確認する
- ④ 提携医療機関を確認する
ステップ①資料を取り寄せて検討する
老人ホーム選びの基本ですが、まず資料を取り寄せるところから始めましょう。ここで確認することは、料金体系や受けられるサービス、そして体験入居できる期間などです。また、外出や食事、生活上のルールなども確認しておくと良いでしょう。
ステップ②体験入居前に施設を見学する
資料で基本情報が掴めたら、次は施設見学です。資料から見学する施設を最低でも3つは選んでおき、それぞれに足を運んで検討していきましょう。
ステップ③費用を確認する
多くの方が気になるポイントですが、体験入居の費用を今一度確認しましょう。受けられるサービスによって費用が変わってきますので、体験入居の前に支払う必要のある料金をはっきりさせておきましょう。
ステップ④提携医療機関を確認する
老人ホーム選びで最も重要な要素の1つが、提携医療機関の確認です。老人ホームで働く看護師が行える医療行為には限界があり、専門性を要する診療・治療や緊急時の対応は提携する医療機関が行います。そのため、提携医療機関が対応する医療サービスが入居希望者に適しているかどうかを確認する必要があります。入居希望者が必要とする医療サービスを提供できない場合、ホーム側から入居を拒否されることもあります。
老人ホームを体験入居するメリット5つ
体験入居は、本入居を決定する前の重要なステップといえます。パンフレットや短時間の見学だけではわからない、施設での実際の生活を体験できる貴重な機会です。体験入居を通じて、施設の設備やサービスの質を理解することで、より良い入居先の選択につながります。
- ・事前に施設内の雰囲気がわかる
- ・サービスの質を事前に把握できる
- ・施設の設備や生活スペースを把握できる
- ・施設に実際に入居している方の話を聞ける
- ・立地やアクセスなどを詳細に把握できる
それぞれのメリットを詳細に見ていきましょう。
事前に施設内の雰囲気がわかる
施設の雰囲気は、入居者の生活の質に大きく影響を与える重要な要素です。体験入居では、パンフレットや短時間の見学だけでは分からない、実際の生活環境を入居者本人が体感することができます。
特に重要なのは、他の入居者とスタッフとの関係性です。職員の声かけの頻度や態度、入居者同士のコミュニケーションの様子など、実際の人間関係を観察できます。また、1日のスケジュールに沿って生活することで、食事の時間や入浴の時間などが自分のペースに合っているかも確認できます。
レクリエーションやイベントに参加することができれば、施設の活気や社交の機会についても実感することができます。さらに、夜間の様子や早朝の雰囲気など、日中の見学だけでは把握できない時間帯の状況も体感できるのが大きな利点です。これらの体験は、入居後の生活をイメージする上で非常に貴重な情報となります。
サービスの質を事前に把握できる
サービスの質は、施設選びの重要なポイントです。体験入居することで、実際に提供される介護サービスや生活支援の質を体験入居をしている本人が身をもって確認できます。
介護スタッフの対応力や専門性は、日々の生活の中で実感できます。食事介助や入浴介助、排泄介助などの基本的なケアがどの程度丁寧に行われているか、また、個々の状態や要望にどこまで対応してもらえるかを把握できます。
リハビリプログラムについても、実際に参加することで内容や効果を判断できます。また、緊急時の対応体制や、医療面でのケアについても、具体的な状況を把握することが可能です。さらに、生活支援サービス(洗濯、掃除、買い物支援など)の質や頻度についても、体験入居の実体験を通じて評価することができます。
施設の設備や生活スペースを把握できる
入居後の生活の質は、施設の設備や生活空間の使いやすさに大きく左右されます。体験入居では、実際に生活することで、設備の使い勝手や空間の快適さを確認できます。
居室については、広さや収納スペースの充実度、空調設備の効き具合など、実際に生活してみないとわからない要素が多くあります。また、ベッドの位置や家具の配置はどうか、車いすでの移動がスムーズにできるかなども、体験を通じて確認できます。
共用スペースについても、実際の使用感を把握することが重要です。食堂やリビング、浴室などの配置が適切か、移動の際の動線に無理がないかなども、日常生活の中でわかります。特に、トイレや浴室などの水回り設備は、実際に使用することで安全性や使いやすさを確認できます。
施設に実際に入居している方の話を聞ける
体験入居中は、すでに入居されている方々との交流を通じて、貴重な生の声を聞くことができます。すでに入居されている方の生の声は施設選びにおいて非常に重要な情報源です。
入居者からは、スタッフの日常的な対応の様子、食事の内容や味、レクリエーションの充実度など、実体験に基づく具体的な情報を得られます。また、施設での生活に慣れるまでの過程や、実際に感じる課題点なども、率直に教えてもらえるかもしれません。
特に、似た境遇や同じ要介護度の方の体験談は、Webサイトやスタッフからは得られない貴重な情報であり、老人ホームを選ぶうえでの重要な判断材料になるでしょう。
立地やアクセスなどを詳細に把握できる
施設の立地環境は、入居後の生活の質や家族の面会のしやすさに大きく影響します。体験入居では、実際に数日間過ごすことで、立地の利点や課題を具体的に把握することができます。
最寄りの医療機関までの距離や通院時の交通手段、買い物などの生活施設へのアクセスなど、実際の便利さを体感できます。また、家族が面会に来る際の交通の便や所要時間も、実地で確認することができます。
周辺環境の安全性も重要なポイントです。散歩コースの整備状況、坂道や段差の有無、交通量、街灯の設置状況なども、実際に過ごすことでわかります。さらに、季節や時間帯による環境の変化、例えば日当たりや騒音レベル、防犯面での安全性なども確認することができます。
老人ホームに体験入居する際の6つのチェックポイント
実際に体験入居をする際の留意点について解説します。ポイントとなるのは以下の6つです。
- ① 生活空間
- ② 介護・リハビリの対応
- ③ 生活支援
- ④ 食事
- ⑤ 生活が快適かどうか
- ⑥ 介護スタッフの対応
これらの項目は実際にそこで生活してみないと掴めない情報です。体験入居をする際は常にこれのポイントに着目してください。
体験入居でのチェックポイント①生活空間
生活空間に関しては資料の写真などだけでは実態が分からず、実際に生活してみないとわかりません。体験入居時にチェック漏れがないよう、最低でも以下の点は欠かさず確認しましょう。
●セキュリティ
老人ホームに限らず、入居施設選びの際に最優先でチェックしなければならないのがセキュリティです。ホームの開門時間が厳格に守られていることや、スタッフが24時間常駐していること、その他災害時の避難経路が設定されていることなど、入居者の安全がしっかりと確保されているかを欠かさず確認してください。
●衛生面
介護を受ける人にとって、衛生面の良し悪しは心身の健康に非常に大きく関わってきます。部屋やトイレが綺麗かに加え、分煙が徹底されているかについてもしっかりと確認しておきましょう。
●広さ
体験入居ですので、部屋の広さも確認した方が良いでしょう。狭すぎる部屋は閉塞感を与え、広すぎる部屋はもの寂しさを与えますので、入居する部屋が適切な広さであるかどうかを確認しましょう。また、家族が定期的に宿泊を希望するのであれば、対応可能な広さかどうかもチェックすべきポイントです。
体験入居でのチェックポイント②介護・リハビリの対応
トイレの介助、食事のサポート、リハビリの対応などがしっかりと行われているかも体験入居でチェックできる項目です。
●トイレの介助
排泄は1日に何度も繰り返し行います。介助が必要な入居者にとって、トイレへの対応は非常に重要な項目です。
●入浴のサポート
体験入居でももちろん、他の入居者と同様に入浴が可能です。入浴に補助が必要な場合は、丁寧な対応かどうかよく確認しましょう。
●リハビリの対応
生活面の介助をしてもらうだけでは施設の良し悪しは決まりません。要介護者が自立した生活ができるように、良質な施設ではリハビリの対応も充実させています。
体験入居でのチェックポイント③生活支援
洗濯や居室の清掃をスタッフが行ってくれるかどうかも確認すべき項目です。
●洗濯などのサービス
居住者の中には、洗濯など生活に欠かせない家事を一人で行えない人もいます。洗濯などのサービスはこのような施設には不可欠なサービスです。洗濯から異臭がしないか、たたみ方まで気を配れているかをよく確認しましょう。
●居室の清掃
居室の清掃は衛生面の管理にも関わってきます。ホコリがたまっていないか、ゴミは決められた場所へ捨てられているかなど、居室の清掃がしっかり行われているかも欠かさず確認しましょう。
体験入居でのチェックポイント④食事
食事でチェックする項目は献立と調理場所です。また試食できるかどうかも確認しておきましょう。
●個々に割り当てられた献立かどうか
良質な老人ホームだと、入居者に合った献立がそれぞれ設定されます。栄養バランスはもちろんですが、アレルギーなども配慮した献立になっているか確認しましょう。
●調理場所
調理場所が清潔に保たれているかも確認しましょう。体の弱い人にとっては、健常者以上に調理場所の衛生面の良し悪しが体調に関わってきます。
●試食できるホームでは試食をしましょう
ホームによっては試食できるところもあるので、その場合は積極的に試食を行いましょう。料理の味もホーム選びの重要な要素です。
体験入居でのチェックポイント⑤生活が快適かどうか
入浴や生活の雰囲気などは、実際に住んでみないとわかりません。体験入居は、実際の生活が快適かどうかを見極めましょう。
●程よい活気があるか
老人ホームという限られた空間の中で生活するには、静かすぎると逆に窮屈さを感じてしまう場合があります。生活音程度の活気が常にあるか、寂しい思いをしなくて済むかなどを確認しましょう。
●プライバシーの配慮がされているか
中には、個人の空間や時間を重視される方もいらっしゃるでしょう。老人ホームは集団生活ですが、プライバシーに気を配っている施設もあります。感覚とマッチするかをチェックしましょう。
●他の入居者の雰囲気
生活の快適さをチェックするのに、他の入居者の雰囲気は大切な判断材料です。ケアをしっかり受けているかなど、生活の質を確認するだけではなく、仲良く生活が送れそうかなど、楽しいホーム生活のイメージを描けるかチェックしましょう。
体験入居でのチェックポイント⑥介護スタッフの対応
介護スタッフの対応も重要な着眼点です。スタッフ1人の対応次第で生活の快適さが大幅に変わってきます。こちらも体験入居でないとチェックできない項目です。
●他の入居者への接し方
他の入居者が受けている対応が、自分がいずれ受けるサービスだと思いましょう。丁寧な仕事ぶりは他の入居者の表情にも表れます。入居者も介護スタッフも和やかな雰囲気かどうかを確認しましょう。
●介護スタッフ同士の会話や態度
スタッフ同士の会話や態度は本当の姿が現れる場所です。言葉遣いが適切かどうかなど、さりげなくチェックしましょう。介護スタッフの雰囲気が施設の印象を大きく左右すると言っても過言ではありません。
老人ホームを体験入居する際の流れ
老人ホームの体験入居は、以下4つのステップで進んでいきます。
- ・施設見学
- ・体験入居申込み
- ・面談・入居審査
- ・体験入居
まず、希望する施設の見学を行います。体験入居には費用が発生するため、事前の見学で施設の雰囲気や設備を確認し、体験入居する施設を慎重に選定することが重要です。
施設の見学を終え体験入居を決めたら、申し込み手続きに入ります。施設によって必要書類、申込金が異なるため、手続きについては希望する施設に直接問い合わせましょう。
その後、面談と入居審査が行われます。ここでは、体験入居される方の健康状態や生活習慣について詳しく確認がされます。また、体験入居中に特別な配慮が必要な点があれば、この段階で施設側に伝えましょう。
入居審査を経たら、実際の体験入居になります。衣類や洗面用具などの日用品、健康保険証などの必要書類を用意し、施設に訪れましょう。体験入居を通じて施設との相性が良いと判断できれば、本契約へと進みます。
老人ホームの体験入居をする際の注意点
老人ホームの体験入居を検討する際は、以下の2点に注意してください。
- ・体験入居は本入居の意思があることが前提である
- ・満床が続いている施設は体験入居できないケースが多い
体験入居は本入居の意思があることが前提である
老人ホームの体験入居は、本入居を前提とした確認の機会で、多くの施設では入居検討者が本入居を具体的に考えている段階で体験入居を受け入れています。そのため、複数の施設を比較検討するための手段としてではなく、候補をある程度絞り込んだ後の最終判断のために活用しましょう。
体験入居先を選定する手順としては、まず施設の種類や立地、費用、介護・医療体制、入退去条件などの条件を確認し、入居者本人と家族の希望に合う施設を数か所に絞ることが大切です。
その上で、最終候補となった施設で体験入居を行い、実際の生活を通して入居の決断に必要な情報を収集しましょう。
満床が続いている施設は体験入居できないケースが多い
老人ホームが満床の状態にある場合、体験入居の受け入れが困難となるケースが多く見られます。施設側に新たな入居者を受け入れる余裕がない状況では、体験入居のためのスペースや人員の確保が難しいためです。
体験入居の目的は、実際の入居生活を想定した体験を通じて、その施設が入居者に適しているかを確認することにあります。しかし、満床状態の施設では、仮に体験入居を通じて入居を希望する判断に至ったとしても、実際の入居までに相当の待機期間が必要となり、体験入居での経験が活かせない可能性が高くなってしまいます。
そのため、体験入居を検討する際は、事前に空室状況を確認しておくことが重要です。
老人ホームに体験入居する際の費用は?
老人ホームの体験入居にかかる費用は、1泊4,000円〜5,000円程度が一般的です。この費用には、宿泊費や1日3食の食事代、生活サービス費などが含まれています。
体験入居の期間や具体的な費用は施設によって異なり、1か月の長期体験入居を受け入れている施設もあります。ただし、施設での生活リズムや雰囲気、サービス内容など、入居後の生活をイメージするには1週間から数週間程度の体験で十分です。必要以上に長期の体験入居を行う必要はありません。
また、体験入居中に施設との相性が合わないと感じた場合は、予定期間の途中でも中止することが可能です。体験入居は実際の入居を決める前の重要な判断材料となるため、無理に期間を延ばすのではなく、ご本人の様子や感想を踏まえて柔軟に対応することが大切です。
老人ホームを体験入居する際に必要な持ち物
体験入居の際は、普段の生活に必要な身の回り品を持参する必要があります。以下の表に基本的な持ち物をまとめたので、ご参考にしてください。
分類 | 持ち物 |
衣類 | 普段着、パジャマ、下着類 |
履物 | 外履き、室内履き(滑りにくいもの) |
洗面用具 | 歯ブラシ、歯磨き粉、入れ歯ケース(必要な場合) |
入浴用品 | タオル類、シャンプー、ボディソープ |
消耗品 | ティッシュペーパー、おむつ(必要な場合) |
医療関連 | 服用中の薬、お薬手帳、医療器具 |
なお、これらは新しく購入する必要はなく、普段から使い慣れているものを持参するとよいでしょう。慣れない環境でも、いつもの物を使用することで安心感が得やすくなるためです。
また、持ち物の詳細は施設によって異なる場合があり、特に施設で用意している物品については、二重に持参する必要がありません。そのため、必要な持ち物を入居前に施設に確認するのが確実です。
まとめ
老人ホームへの体験入居を検討する際は、まず資料を取り寄せ、施設を見学することから始めます。複数施設の比較検討を経て、実際に体験入居をする際には、生活空間の快適さや、介護・リハビリの対応、生活支援サービス、食事の質、そして介護スタッフの対応をチェックしましょう。
これらを総合的に判断することで、入居者に合った施設かどうかを判断でき、納得感の高い入居ができるようになります。
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