どの施設が自分に適しているのかを
知っておきましょう。
シニア向け分譲マンションとは?サ高住との違いも
自宅で生活を続けることに不安を感じる高齢者の方に向けた、次の住まいの候補のひとつとして「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」や「シニア向け分譲マンション」などがあります。
このうちシニア向け分譲マンションは、一般的なマンションのように売買が可能な不動産物件です。購入すれば月々の家賃を支払うことなく、悠々自適な生活を送れます。
「老人ホームに入居するのは少し気が引ける」「安全・安心の環境で、これまで通りアクティブな生活を送りたい」という方にとって、シニア向け分譲マンションは理想的な選択肢となるでしょう。
こちらの記事では、シニア向け分譲マンションの入居条件や費用の相場ついて詳しく解説します。
目次
シニア向け分譲マンションとは
「老人ホームは聞いたことがあるけど、シニア向け分譲マンションは初めて知った」という方も多いのではないでしょうか。そこで、まずは基本的な事項としてシニア向け分譲マンションの特徴と入居条件について詳しくご紹介しましょう。
特徴
シニア向け分譲マンションの最も大きな特徴は、賃貸契約ではなく購入する点です。介護保険施設や有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは異なり、シニア向け分譲マンションは物件自体を購入するので家賃が発生しません。
さらに、購入後は資産として残すことができ、譲渡や相続もできますし、賃貸物件として貸し出すことも可能です。
「シニア向け」という名前の通り、高齢者の方が生活しやすい住環境が整っています。バリアフリー設計で、部屋のなかには緊急通報装置などが設置されています。介護が必要な方は、訪問介護・通所介護などを利用して必要なケアを受けられます。
また、併設施設が充実しているのもシニア向け分譲マンションの大きな特徴です。
館内にレストランや図書館、スポーツジム、シアタールーム、温泉、ドラッグストア、コンビニなどを併設しているマンションが多くあります。併設施設の内容はマンションによって異なるので、物件探しの際はご自身が利用したい施設があるかチェックしましょう。
入居条件
シニア向け分譲マンションの入居条件について、特に制度上の規定などはありませんが、基本的には自立した生活を送ることができる高齢者が対象となっています。マンションのスタッフは生活のサポートをしますが、介護サービスを提供するわけではないので、要介護度が高い方には不向きといえます。
マンションによっては、入居対象者の年齢制限を設定していたり、ある程度自立した生活を送れることを入居条件として明記していたりします。物件探しの際は入居条件もよく確認しておきましょう。
シニア向け分譲マンションに入居するメリット・デメリット
ほかの有料老人ホームやサ高住などと比べた場合、シニア向け分譲マンションには、どのようなメリット・デメリットがあるでしょうか。
メリット
まずメリットとして、物件を借りるのではなく購入するため、リフォームや売却を自由に行える点が挙げられます。
有料老人ホームやサ高住では、入居一時金・家賃などを支払って居住する権利を得るだけです。居室には自宅から家具や家電を持参して設置できますが、リフォームまでは行えないところがほとんどです。また、物件の所有権がないので売買などはできません。
一方、シニア向け分譲マンションは購入後に自分の所有物となるので、室内のリフォームを自由に行えます。「壁に穴をあけて絵画などの大きな装飾物を飾る」「壁を取り払ってリビングを広くする」といった、老人ホームでは原則として行えないことがシニア向け分譲マンションでは実現できます。
自分の物件となるので売買も自由です。賃貸物件として貸し出し、家賃収入を得ることもできるでしょう。
デメリット
一方で、デメリットとして、まとまったお金が必要となる点が挙げられます。有料老人ホームでも一時入居金が高額になるケースはありますが、平均額を比較すれば、シニア向け分譲マンションの購入費用はそれらを大きく上回ります。
また、不動産を所有するため固定資産税が発生します。
さらに、要介護度が上がったり認知症が悪化すると、転居の必要が生じる場合があります。シニア向け分譲マンションは要介護者向けの住まいではないため、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームほどの介護・看護体制が整っていないところが多いようです。そのため物件によっては身体の状態が変化した際に、より適切な介護を受けられる施設への転居(住み替え)が必要となってきます。
シニア向け分譲マンションの費用相場
では実際にシニア向け分譲マンションを購入する場合、どのくらい費用がかかるのでしょうか。以下では初期費用、月額費用に分けて、具体的な相場をご紹介します。
初期費用
シニア向け分譲マンションにおける初期費用とは、物件の購入費用のことです。
購入費用の相場は、数千万~数億円。立地条件や館内設備・併設する施設の充実度などによって、金額は大きく変わってきます。現金での一括購入でなく住宅ローンを組む場合は、契約できる年齢が65~70歳以下など、金融機関によって年齢制限の規約がある点に注意しましょう。
▼参考資料はコチラ
りそなグループ『住宅ローンを組めるのは何歳まで?5つのポイントも解説!』
また、不動産を担保に融資を受けられる「リバースモーゲージ」の利用を検討しても良いでしょう。
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分譲マンションであるため不動産会社と売買契約を行いますが、物件の情報はネット上や専門誌でも集められます。購入したい物件を見つけたら、その物件を取り扱っている不動産会社に連絡するのが基本的な購入プロセスです。もちろん、不動産会社に直接出向いて、その場で探すこともできます。
月額費用
シニア向け分譲マンションの月額費用の相場は、居住費や食費込みで10~30万円ほどです。
物件を購入することになるため、入居後は毎月の家賃は必要ありません。しかし、ローンを組んでいる場合は毎月の返済が発生します。
また、通常のマンションと同様に、管理費や修繕積立金の支払いが必要になります。食事サービスや見守りサービス、フロント・コンシェルジュサービスなどを利用している場合、その費用も別途かかります。
シニア向け分譲マンションで介護サービスを利用する場合、訪問介護といった利用量に応じて料金が変わるサービスと、小規模多機能型居宅介護のような月額定額料金となるサービスの2種類があります。
どちらのサービスを利用するかで毎月の介護費用は変わるため、近隣・併設の介護サービス事業所でどのようなサービスを利用できるのか、入居前にチェックしておくことをおすすめします。
シニア向け分譲マンションの設備
シニア向け分譲マンションは、高齢者の方が安全に生活できるように全館バリアフリー設計となっています。階段や廊下など各所に手すりが取り付けられ、床には転倒の原因となるような段差はありません。
また、娯楽設備が充実しています。温泉・大浴場やレストラン、図書館、シアタールーム、カラオケルーム、スポーツジム、プールなどが館内に併設されている物件が多く、日々楽しく生活できます。
マンションによっては病院や訪問介護、訪問看護事業所などが併設されています。そのような物件であれば、健康・介護面での必要なケアを受けながら暮らせます。
購入物件となるため、一般的に居室面積は35〜100㎡ほどもあり、平均的な有料老人ホームやサ高住よりもかなり広めです。室内にはキッチン、トイレ、浴室、洗面台など生活に必要な設備はすべてそろっています。食事は館内併設のレストラン・食堂で食べることもできますが、ご自身で調理ができる場合は、近隣のスーパーで食材を購入して、自室で作ることも可能です。
注意すべき点として、マンションによって併設する施設、設備の内容は異なります。
とくに気を付けたいのは、持病のある方です。
医療機関が併設されているか、持病のケアが行えるかは重要なチェック事項です。館内に併設されていない場合は、近隣に病院・クリニックがあるかを確認しておきましょう。
受けられるサービスの内容とは
提供されるサービスについては、とくに制度上の規定はないため、施設ごとに内容が変わってきます。
ただし、ほとんどのシニア向け分譲マンションではコンシェルジュが配置され、日常生活上で困りごとがあったときの相談対応が可能です。家事・買い物代行、郵便・宅配物の取り次ぎ、来客者への応接、緊急時の救急車・タクシーの手配などのサービスを提供するところも多く見られます。さらにマンションによっては、見守りサービス、健康管理サービスなどを行うケースもあります。
病院や介護サービス事業所が館内に併設されている場合は、対応する診療科の医療ケア・介護サービスを利用できます。ただし、これらのサービスはマンション側が直接提供するわけではないため、利用する場合は個人での診療の申し込みやサービス利用の契約締結が必要です。併設の医療機関・事業所で受けられるケアの内容を事前に確認しておきましょう。
なお、夜間はスタッフが常駐しないマンションもありますが、警備会社と提携を結び、緊急時に駆けつける体制を取っているところも多くあります。
実際にシニア向け分譲マンションを探す際は、どのようなサービスを利用できるのか、どこまでが無償で、どこからが有償なのかを必ずチェックしましょう。
有料老人ホームとの違い
シニア向け分譲マンションと有料老人ホームは、高齢者向けの住まいという点では共通していますが、「所有権の有無」と、「受けられるサービスの内容」の2点において大きく異なります。
所有権の有無
有料老人ホームとの大きな違いの一つが、所有権の有無です。
有料老人ホームの場合、施設側と締結する入居契約の形態は「利用権方式」となります。利用権方式とは、入居一時金・月額利用料を施設側に支払うことにより、施設を利用できる権利を得る契約方式のことです。入居者が負担する料金は、あくまで利用権を得るために支払われるのであって、居室などの所有権を得ることはありません。
入居者に所有権がないため、もし居室内の壁や設備を破損した場合は、施設側に修繕費用を支払う必要があります。
一方、シニア向け分譲マンションの場合、入居にあたって締結するのは「所有権方式」の契約です。
所有権方式とは売買取引を通して、売り手から買い手に所有権が移る契約のことです。買い手=入居者に居室の所有権が移るため、居室はどのように扱おうと入居者の自由です。売却も可能であり、不動産として相続の対象にもなります。
もし居室内の壁や設備を破損しても、自分の所有物なので誰かに弁償する必要はありません。ただし、居室内の修繕をする場合は、業者への依頼から費用負担まですべて自分で行う必要があります。また、室内の傷みが大きいと、物件の売却時に不利になるので注意が必要です。
受けられるサービス内容
受けられるサービス内容にも違いがあります。
富裕層向けのシニア向け分譲マンションでは、コンシェルジュサービスをはじめ各種生活支援サービス、娯楽サービスを受けられるところが多くあります。有料老人ホームの場合、とくに料金の安さを売りにしている施設などでは、シニア向け分譲マンションほどの生活支援サービスは受けられない傾向にあります。
一方で、介護付き有料老人ホームの場合は、月額定額で施設側が提供する手厚い介護サービスを受けられますが、シニア向け分譲マンションでは介護サービスは提供されません。介護サービスを受ける場合は、自分で訪問介護、通所介護などの各種介護サービス事業所と契約を結ぶ必要があります。
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シニア向け分譲マンションの入居手続き
シニア向け分譲マンションの入居手続きは、基本的には一般的なマンション購入の場合と同じです。物件を扱っている不動産会社に内覧を申し込み、気に入ったら入居申込書を提出し、入居者と不動産会社との面談が実施されます。
その後、所得証明書や住民票、健康診断書などを提出し、マンション側は提出された書類を基に審査を実施。とくにローンを組む場合は、収入や資産を含めた支払い能力がチェックされます。
施設によっては入居条件として年齢制限や伝染病に感染していないこと、身元保証人が必要であることを定めているので、その点も確かめられます。
審査の結果、入居が決まれば、売買契約を取り交わして物件が引き渡されます。
シニア向け分譲マンションの購入は将来を考えて検討を
経済的にある程度余裕のあるアクティブシニアにとって、シニア向け分譲マンションは老後を過ごす場所として理想的な住まいです。娯楽設備が多く、生活支援サービスを多数受けられるので、これまでの住まいよりも快適に生活できるという声も多く聞かれます。
ただ、シニア向け分譲マンションは物件にもよりますが、要介護度が高くなって寝たきりになった場合や医療依存度が高くなった際に、必要な介護・医療ケアを受けられる体制が整っていないことがあります。また、自室で看取りケアを受けることが難しいケースも考えられます。
そのため、シニア向け分譲マンションを購入する場合は、将来の要介護度が高くなったとき、あるいは終末期を迎えたときにどのような対応をするのかについても、前もって検討しておくとよいでしょう。