さまざまな介護サービスを、1~3割の自己負担で受ける
ことができるのが「介護保険」です。
介護保険で医療費が控除されるサービスや条件とは?
介護保険で医療費控除が適用できるサービスがあることを、皆さんはご存知でしょうか。健康保険で医療費が1~3割負担となるのは常識と言えますが、介護保険については意外と知られていません。今回の記事では、介護保険で医療費控除の対象となるサービスやその条件について詳しく解説します。介護保険についての理解を深め、上手に利用しましょう。
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目次
医療費控除とは
そもそも「医療費控除」とは、本人または生計をともにしている配偶者、そのほかの親族のために支払った医療費が一定額を超えるとき、「所得控除」を受けられる制度です。「所得控除」とは、課税対象の所得金額を減らせるということです。
控除の対象となる医療費の要件は、以下の通りです。
(1)納税者が、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であること。
(2)その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること(未払いの医療費は、実際に支払った年の医療費控除の対象となります)。
出典:国税庁『No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)』
介護保険で医療費控除が適応される条件
介護保険制度下で医療費控除の対象になるのは、すでに支払いを済ませた医療費です。加えて、医療費の自己負担費が10万~200万円となる方のみが、介護保険における医療費控除の対象となります。
まとめると、「1月1日~12月31日の間」に「支払いを済ませた医療費」が「10万円以上200万円以下」であれば、控除の対象になるというわけです。
また、所得が200万円以下の方は、医療費の自己負担額が所得の5%以上であれば控除の対象となります。たとえば、所得が180万円の場合に医療費の自己負担額が9万円を超えていれば、超えた分の金額について介護保険で医療費控除が受けられるのです。
介護保険の医療費控除の対象サービス
介護保険のサービスは、大きく「施設」と「居宅」の2つに分けられ、さらにそこから「医療系」か「福祉系」かによって計4つに分類されます。
・医療系施設のサービス
・福祉系施設のサービス
・医療系の居宅サービス
・福祉系の居宅サービス
それぞれのサービスで、介護保険の医療費控除が受けられます。
具体的にどのようなサービスなのか、チェックしていきましょう。
施設サービス
老人ホームやそのほかの医療施設など、施設を利用することで受けられるサービスです。前述の通り、施設サービスは医療施設(医療系)と福祉施設(福祉系)の2つに分けられます。福祉施設の場合、医療費の2分の1が控除され、医療施設の場合は原則として全額控除となります。
●医療系施設のサービス
医療系サービスで利用できる入居施設には、指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム/特養)、指定地域密着型介護老人福祉施設、介護老人保健施設(老健)、指定介護療養型医療施設(療養型医病床郡)、介護医療院などがあります。
具体的な控除対象は、下記の通りです。
施設名 | 医療費控除の対象 | 医療費控除の対象外 |
---|---|---|
■指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム/特養) ■指定地域密着型介護老人福祉施設 |
施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額の2分の1に相当する金額 | ・日常生活費 ・特別なサービス費用 |
■介護老人保健施設 | 施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額 | ・日常生活費 ・特別なサービス費用 |
■指定介護療養型医療施設(療養型病床群等) | 施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額 | ・日常生活費 ・特別なサービス費用 |
■介護医療院 | 施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額 | ・日常生活費 ・特別なサービス費用 |
出典:国税庁『No.1125 医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価』
●福祉系施設のサービス
福祉系サービスが提供している入居施設は、指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム/特養)や指定地域密着型介護老人福祉施設です。この施設の利用に際して支払う居住費や介護費、食費などは、その2分の1が控除対象になります。
居宅サービス
居宅サービスとは、実際に介護職員がホームヘルパーとして家に訪ねて提供されるサービスです。こちらも医療系と福祉系のサービスがあり、医療系は単体で医療費控除が受けられますが、福祉系は2つを併用した場合にのみ適用されます。
●医療系の居宅サービス
単体で医療費控除の対象となる医療系の居宅サービスは以下の通りです。
・訪問看護
・介護予防訪問看護
・訪問リハビリテーション
・介護予防訪問リハビリテーション
・居宅療養管理指導(医師等による管理・指導)
・介護予防居宅療養管理指導
・通所リハビリテーション(医療機関でのデイサービス)
・介護予防通所リハビリテーション
・短期入所療養介護(ショートステイ)
・介護予防短期入所療養介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護※一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限る
・看護・小規模多機能型居宅介護※上記の居宅サービスを含む組み合わせにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除く)に限る
出典:国税庁『No.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価』
●福祉系の居宅サービス
前述の医療系の居宅サービスと併用することで医療費控除の対象になる、福祉系の居宅サービスは以下の通りです。
・訪問介護(ホームヘルプサービス)※生活援助(調理、洗濯、掃除等の家事の援助)中心型を除く
・夜間対応型訪問介護
・訪問入浴介護
・介護予防訪問入浴介護
・通所介護(デイサービス)
・地域密着型通所介護
・認知症対応型通所介護
・小規模多機能型居宅介護
・介護予防認知症対応型通所介護
・介護予防小規模多機能型居宅介護
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・介護予防短期入所生活介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護※一体型事業所で訪問看護を利用しない場合および連携型事業所に限る
・看護・小規模多機能型居宅介護※前述の「医療系の居宅サービス」を含まない組み合わせにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除く)に限る
・地域支援事業の訪問型サービス※生活援助中心のサービスを除く
・地域支援事業の通所型サービス※生活援助中心のサービスを除く
出典:国税庁『No.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価』
これらのサービスを医療費控除の対象として申請するには、確定申告を行う必要があります。電子申告(e-Tax)を利用するか、必要事項を記入した確定申告書を所轄税務署長に提出して申告を行いましょう。
確定申告の期間は、翌年の2月16日~3月15日までです。該当期間での手続きが間に合わなかった場合でも期限後申告として取り扱ってもらえますが、早めに行いましょう。
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医療費控除を受けるときに考えるべきポイント
介護保険制度下で医療費控除を受ける際には、意識するべきポイントがあります。
医療系サービスと福祉系サービスを併用するかどうか
医療費控除の割合は、福祉系の居宅サービスを医療系の居宅サービスと併用するかどうか、さらに介護福祉に喀痰吸引(自力で痰を吐けない人に吸引機を用いて痰を吸引させる)の料金が含まれているかどうかで変わります。
医療系の居宅サービスを併用しない場合、利用した介護保険サービスの費用に喀痰吸引などの料金が含まれていれば、すべての医療費が10%の負担になります。含まれていない場合には、福祉系の居宅サービスは全額自己負担になるのでよく注意しましょう。
その他のサービスが対象になる可能性も
今回ご紹介したサービス以外でも、条件を満たせば、おむつ代や交通費に介護保険の医療費控除を適用できます。具体的な条件などを確認するため、居住する市区町村の制度を一度調べてみるとよいでしょう。
▼参考資料はコチラ
国税庁『No.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価』
介護保険制度の医療費控除をうまく活用しましょう
本記事では、一定の条件を満たすことで、介護保険を適用して医療費控除が受けられるサービスがあることを説明しました。医療と介護分野の居宅系から施設系サービスまで、幅広く適応できるものとなっています。これらの医療費控除を必要に応じて活用できるよう、制度への理解をこの機会に深めておきましょう。