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【医師監修】認知症と物忘れの見分け方|認知症のコラム

【医師監修】認知症と物忘れの見分け方|認知症のコラム

更新日:2016.10.18

動作の一つひとつが遅くなったり、人の名前を思い出せなくなったりと、人間は年をとると共にあらゆる機能に衰えが見えるようになります。しかし、一連の症状が年相応な衰えによるものなのか、それとも認知症を発症しているのか。そのどちらかで今後の対応は大きく変わってきます。

基本的に認知症は完全な治療法がありません。そのまま放置してしまうと、コミュニケーションを取ることが難しくなり、徘徊や暴力といった危険行為にまで発展する恐れがあります。

一方で、完治が困難ではあるものの、早期に認知症を発見し適切な処置をすることで認知症の進行を大きく遅らせることが可能です。今回は、認知症と疑わしい初期症状の特徴を取り上げるとともに、認知症の判定方法などについてもご紹介します。


【監修者】
木村 眞樹子医師

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医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。


認知症と似ているようで異なる?「物忘れ」や「軽度認知障害」

シニア世代の人ならば誰しもが敏感なテーマとなってきています。それゆえ日常生活の中で起こる「財布をしまった場所が思い出せない」「テレビに出ているタレントの名前が出てこない」といった「物忘れ」をした場合に、もしかしたら自分が認知症の初期症状では? と疑心暗鬼になる人もいるのではないでしょうか。

こういった物忘れは年齢を重ねてくれば誰しもに現れる現象ですので、心配する必要はありません。しかし、過去に体験した内容の一部分が思い出せないのではなく体験したこと自体を忘れてしまう場合や、現在進行形でおこなっている動作の目的そのものを思い出せなくなるようでは、認知症の予兆と言えます。

例えば......

夕食に何を食べたのかを思い出せない → 物忘れ
食事した事実を思い出せない → 認知症

買い物に出かけ、何を買うのかを忘れる → 物忘れ
買い物に出かけ、途中で外出した理由を忘れる、また自分の居場所がわからなくなる → 認知症

また物忘れが進んだ状態の「軽度認知障害(MCI)」に該当する高齢者も増えています。厚生労働省によると、軽度認知障害に該当する65歳以上の高齢者は400万人いると言われており、高齢者のうち約4人に1人がこの"認知症予備軍"に該当する計算になります。軽度認知障害を放置しておくと、将来的に症状が悪化する可能性が非常に高く、軽度認知障害と診断された高齢者のうち、約半分が認知症にエスカレートすると言われています。

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その認知症はまだ防げる! 「軽度認知障害」(MCI)の症状や診断方法とは?

こんな場合は要注意!代表的な認知症の初期症状

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認知症の早期発見には、周囲、特に家族の"気づき"がもっとも重要です。以下のような行動や言動が見られる場合は要注意です。

同じことを何度も繰り返し言う

脳の機能が衰えてくると、直前に起こったことや話した内容の記憶が難しくなり、同じ内容の発言を繰り返すようになります。独り言のようにつぶやくだけならまだよいかもしれませんが、「外の天気は雨かい?」「今日は仕事休みなのかい?」などと質問を繰り返すようにもなります。

食事したことを忘れる

認知症の人によく見られるのが、食事したことを忘れて「ご飯はまだ?」と聞いてくることです。「さっき食べたでしょ」と返答して納得してもらえるならばよいのですが、本人がどうしても腑に落ちない様子を見せるようであれば注意してみましょう。

感情の起伏が激しくなる

突然急に怒り出したり、逆に塞ぎ込んだりと感情の起伏が激しくなることがあります。例えば、今まで熱心に打ち込んでいた趣味に対して、急に無関心になるなどの兆候が見られる場合は注意が必要です。

外出しても自力で帰宅できない

散歩や買い物などで外出しても、自宅の場所が思い出せなくなり帰宅できなくなる場合、認知症を発症している確率が高いと言えます。このように日付、時間、場所などが認知できなくなる症状を「見当識障害」と呼びます

作業を完遂せず、やりかけのまま忘れてしまう

何かひとつの作業に没頭していても、別のことに関心が移ればやりかけのまま別の行動に移ってしまうなどが多い場合も認知症の疑いがあります。

部屋を散らかす

認知症が進行し記憶力が著しく低下すると、物をしまった場所が思い出せなくなります。そのため一度探し物を始めると、タンスの棚から押入れの中まで部屋の隅から隅までを探すようになります。探し物を見つけ出すまでは不安な気持ちでいるため、散らかした物を元に戻す、片づけるといった余裕はありません。

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代表的な認知症の種類

「認知症」と言っても、発症の原因または脳内のどの部分で異常が起こるかによって見られる症状や治療法が変わってきます。ここでは治癒が困難とされる4つの認知症について解説します。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、記憶を司る海馬や頭頂葉といった脳細胞が広範囲で委縮することで発症します。認知症患者でもっとも多いのがアルツハイマー型にあたります。主な症状としては物忘れ、同じことを何度も繰り返し発言するなどの中核症状に始まり、その病状はゆっくり進行していきます。症状が進んでくると人や物、時間、場所などの誤認識が始まり、人によっては妄想や徘徊が始まります。男性に比べ女性に多く発症するのが特徴です。

アルツハイマー型認知症とは?まず押さえたい基礎知識を網羅

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、大脳の皮質の神経細胞内に「レビー小体」と呼ばれるタンパク質が溜まることによって起こります。現在はアルツハイマー型認知症に次いで患者数が多く、男性に多く見られるのが特徴です。病状が進行してくると、幻覚(幻視)がはっきりと現れ、体の硬直が始まり動作全般が遅くなります。パーキンソン病の症状に類似しているのもレビー小体型の特徴の一つです。

幻視や記憶障害が見られたら要注意。レビー小体型認知症の症状とその特徴

脳血管性認知症

脳梗塞やくも膜下出血など、脳の血管障害によって起こる認知症で、病気や事故をきっかけに発症するのが、アルツハイマー型やレビー小体型と大きく異なる点です。脳血管障害にかかると、脳内に血栓ができその部分の脳細胞が死滅してしまいます。血栓ができる箇所によって失われる機能にも個人差があります。

生活習慣病と密接な関係!「脳血管性認知症」の症状と特徴

前頭側頭型認知症(ピック病)

主に人格を司る前頭葉と言語を司る側頭葉が委縮する病気で、怒りっぽくなるといった人格面での変化に始まり、最終的には重度の記憶障害を引き起こします。脳の神経細胞内に「ピック球」と呼ばれる物質が見られることから「ピック病」と総称されています。発症率は低いですが、多くの人が40~60代で罹患しており「若年性認知症」とも呼ばれています。

人間らしさ"が奪われる恐ろしい病気。「ピック病」を詳しく解説

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コロナ禍のいま、離れて暮らす家族のためにできること

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認知症の進行を食い止めるには早期発見がカギと言われていますが、離れて暮らしている場合、さらにパートナーや同居人のいない一人暮らしだとなかなか周囲の目が行き届かず、少しの体調変化を見逃してしまうことが考えられます。

追い打ちをかけるかのように、新型コロナウイルス感染の危険性があることから、安否確認するにも都道府県をまたいでの移動に制限がかかるケースや、家族がウイルスを持ち込んでしまうリスクも考えられます。

この場合できることは、定期的に連絡をとり、会話から心境や体調に変化がないかうかがうことです。電話で話すことがもっともオーソドックスな手法ですが、インターネット環境が整っている場合、Skype(スカイプ)やZoom(ズーム)などのビデオ通話も有効です。映像を通じたコミュニケーションは、声だけではわからない表情や生活空間の微妙な変化にも気づきやすいものです。同時にコミュニケーションを図ることは、気持ちや脳への刺激につながるため、家族とふれあう楽しみや気持ちのメリハリが生まれます。

定期的に介護サービスを利用している場合、担当のケアマネジャーやホームヘルパーから、体調や暮らしの中で生じた変化などについても報告してもらうようにしましょう。一緒に暮らしているからこそ気づくこと、離れて暮らしているからこそ気にかけなければいけないこと。各家庭によって事情は異なるでしょうが、高齢者を抱える家族にはさまざまな配慮が必要なのです。

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少しでも疑わしい場合は、早期の受診を

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認知症の疑いがあった場合は、まずは早急に病院で検査を受けましょう。その症状がただの加齢による物忘れなのか、それとも本当に認知症なのかは医師の診断を受けなければ正確にはわかりません。

認知症でもっとも多いアルツハイマー型認知症の場合、その進行は比較的ゆるやかですが、完全な治療が難しいことからも、できるだけ早期に発見して対策を打つ必要があります。まずは病院で診察してもらい、より詳細な検査が必要な場合は紹介状を書いてもらい大きな病院で診察を受けましょう。

認知症の診断には、一般的に「長谷川式認知症スケール」が用いられます。これは「あなたの年齢はいくつですか?」といった初歩的な質問に始まり、計算式や暗記などを回答していく知能評価テストです。30点満点で20点以下だと認知症の疑いがあるとされています。

認知症診断の礎となった「長谷川式簡易知能評価スケール」について

その他にも、最近では、CTやMRIで脳の形状を測ることが可能になり、脳の萎縮が見られるアルツハイマー型認知症の発見が容易になりました。同時に脳腫瘍や脳出血といった症状も発見できる為、認知症検査と併せて確認しておきたいところです。

また脳の血流を測る「SPECT」、脳の代謝を測る「PET」といった検査もあり、これらも認知症の早期発見につながります。 ただし、SPECTやPETは、保険適用(1割負担)の場合でも、個人負担額が1万円前後かかります。CTやMRIの費用も合わせ、検査にはそれなりの出費がかかることも頭に入れておきましょう。

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早期発見が家族の余生のあり方を決める

現在は薬により認知症の進行を遅らせることが可能になりました。また薬に頼るばかりでなく、テキストを用いた脳トレや、指先や全身を動かすことで老化の防止につなげるエクササイズなども登場しており、さまざまな面で認知症対策が講じられています。

認知症は早期発見が決め手となります。いつの間にか症状が著しく進んでいた......とならないためにも、普段から家族の様子に気を配るようにしましょう。

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