介護のお役立ちコラム
認知症とは、これまで記憶していたものが思い出せなくなったり、日常生活の簡単な動作が今までどおりにできなくなったりする症状を指します。老化とともに人間の体と脳の機能は衰えていきますので、現在の医療技術では認知症を完全に防ぐことは不可能です。
家電製品などであれば、故障しても部品を交換することで新品同様に機能を取り戻せますが、脳の部品を交換することはできません。私たちにできるのは、日ごろの生活の中で認知症にならないよう規則正しい生活習慣や適度な運動などを取り入れ、健康に気を配り生活していくことなのです。
今回は日常生活で実践できる認知症予防法についてご紹介します。
認知症と生活習慣の関係性
認知症の予防、治療に関しては世界中で研究が進んでいますが、先述のとおり決定的な答えは見つかっていません。また確実に効果がある、と言えるものもまだまだ検証中という段階です。
とは言え、認知症で最も多いアルツハイマー型認知症は、生活環境や生活習慣と大きく関係していることが判明してきています。規則正しい生活や、食生活、適度な運動に加え、脳に刺激を与えたり、活性化をうながす行動が効果的と言われています。決定的な方法がないからこそ、日々の習慣を心がけることが大事になってきます。
日々の生活で実践できる認知症予防の取り組み
まずは日常生活の中で認知症予防ができる6つの取り組みを紹介します。
1.知的トレーニング
知的トレーニングとは、パズル、計算、暗記、間違い探しなど、脳を使うトレーニングのことです。これらのテキストは書店でも購入できますし、ゲーム感覚で楽しめるものが多いので取り入れやすくなっています。スマートフォンやタブレット用の脳トレアプリも多くリリースされていますので、自宅や電車での移動中などちょっとした空き時間にも利用できます。最近では、脳トレアプリをダウンロードして提供しているデイサービスも見かけます。
2.筋力トレーニング
国の疫学研究では、週3回30分以上の運動をおこなっている人は、おこなっていない人と比べ、認知症発症のリスクが40~50%下がっていると報告されています。 運動メニューは、散歩やストレッチなど定番のものの他にほかに、太極拳やヨガ教室、スイミングプールなど趣味と兼ねてできるものでも良いでしょう。最近は、トレーニングジムでもシニア向けのコースが設けられていたりします。また国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターが開発した運動と認知トレーニングを組み合わせた「コグニサイズ™」もおすすめです。
◎運動と認知トレーニングを組み合わせた「コグニサイズ™」。その方法と効果とは?
3.デュアルタスク(ながら運動)
デュアルタスクとは、同時に2つの動作をするトレーニング方法です。例えば、「テレビを観ながら洗濯物をたたむ」といった動作もデュアルタスクにあたります。このように同時に二つの動作をすることで、脳の前頭葉の血流が活発になり、脳機能の低下を予防することができると言われています。他にはほかには、指揮者のように片手で3拍子、もう片方の手で4拍子を振るというトレーニングがあります。これは一見簡単そうに思えますが、実際にやってみると意外に難しいので、ぜひチャレンジしてみてください!
4.五感を刺激する
人間の五感(触覚、嗅覚、視覚、味覚、聴覚)を刺激することも認知症予防に良いとされています。例えば、アロマセラピーは、良い香りを嗅ぐことで心身をリラックスさせたり、リフレッシュさせたりする効果がありますが、このとき同時に脳細胞も刺激を受けていることをご存知でしたか? 懐かしい匂いにより過去の記憶が戻ることもあるそうです。 また、介護の現場ではハンドセラピーを取り入れているところもあります。手のひらから伝わるぬくもりを通したケアで、直接触れることで安心感を相手に与えることができます。介護の現場のみならず、災害で傷ついた人たちを癒やすものとしても知られています。
5.食生活の見直し
脂分の多い食材は血栓や動脈硬化の原因となり、心筋梗塞や脳梗塞を発症することがあります。脳梗塞の後遺症である「脳血管性認知症」は、おもに不健全な食生活が原因となっています。ビタミンEを豊富に含むオリーブ油は動脈硬化防止に効果があることが証明されており、例えば日本のオリーブの産地として有名な小豆島(香川県)では、オリーブを食生活に取り入れた健康長寿のプロジェクトを推進しています。 また、サバなどの青魚も血液をサラサラにする効果があります。動物性の脂は冷えると白く凝固する性質がありますが魚の油は常温では固まりません。長い目で見れば、肉食よりも魚と野菜の食生活に切り替えた方が健康に良いと言えそうです。 さらに、気を配るのは食材ばかりではありません。しっかりと咀嚼(そしゃく)して食べることも認知症予防には効果的です。なぜなら、食べ物を細かく噛み砕くことで胃の中の消化を助けるほか、噛むときの振動が脳を刺激するためです。
◎ 【原因別】認知症の方に食事を拒否されないための5つのコツ
6.回想法
回想法とは1960年代にアメリカの精神科医ロバート・バトラーが提唱した心理療法です。現在では、思い出話をしたり写真を見せたりすることで過去の記憶を呼び戻させる手法として応用されています。 たとえ、誰ともしゃべらず話しかけても返事もしないような重度の記憶障害になったとしても、過去の記憶を思い出してもらうことで心情に変化が起こり、人とコミュニケーションを図る意欲が生まれてくると言います。実際に、認知症予防のプログラムとしてもすでに実践されています。
認知症発症者の家族ができること
認知症患者は、これまで当たり前にできていたことができなくなり、戸惑いを感じています。家族ができることは、不安を抱えている高齢者に寄り添うことです。
時に介護を拒否するようなことがあるかもしれませんが、そのような時は、無理に介護を強制することなく、本人の気持ちを尊重してあげましょう。決してプライドを傷つけるような言動や振る舞いをすることにないようにしてください。
(参考)認知症薬の効果と思わぬ副作用
ちなみに、認知症に効果のある薬は存在します。 1999年に国内初の認知症薬「アリセプト(ドネペジル塩酸塩)」が発売され、認知症の進行を抑える薬としてあらゆる病院で処方されてきました。
しかし、その症状緩和の効果は決して大きなものではなく、吐き気や下痢、さらには手足の震えや筋肉の硬化といった副作用も報告されました。また、それまで穏やかおだやかだった人が急に怒りっぽくなったなどの事例も報告されています。
本当に投薬による処置が適切なのか、診察を受ける本人と家族、薬を処方する医師との間でしっかりと相談して決める必要があります。
できることから始めることが未病につながる
今回ご紹介した取り組みはいずれもその効果が実証されているものです。もちろんすべてのメソッドを実践していくのは難しいことかもしれませんが、気になったものだけでも毎日の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか? 認知症は完治が難しいものではありますが、毎日の生活習慣を見直し"未病"に努めていくことを心がけたいものです。
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