介護のお役立ちコラム

「親の介護のために老人ホームを探しているけれど、部屋のタイプがいくつもあって選び方がわからない・・・」そんなお悩みをお持ちではないでしょうか。
老人ホームには主に4つの部屋タイプがあり、それぞれに特徴があります。また、費用面でも大きな差があるため、慎重に選ぶ必要があります。
この記事では、老人ホームの部屋タイプの特徴と費用相場をご紹介し、選び方のポイントを詳しく解説します。ご家族に最適な部屋タイプを見つけるためのガイドとしてご活用ください。
老人ホームの部屋タイプは4種類
老人ホームの部屋タイプは、大きく分けて従来型とユニット型の2種類があり、さらにそれぞれに個室と多床室があります。以下の表で、4つの部屋タイプの特徴を比較してみましょう。
部屋タイプ | 個室/ 多床室 |
主な特徴 |
従来型 個室 |
個室 | プライバシーを重視しており、 1人1部屋で生活する |
従来型 多床室 |
多床室 | 2〜4人で共同生活を送るため、 費用を抑えられる |
ユニット型 個室 |
個室 |
少人数で共同生活を行うので プライバシーと交流のバランスが保てる |
ユニット型 個室的多床室 |
多床室 |
パーテーションで区切られた空間で居住するため、 費用を抑えつつプライバシーにも配慮できる |
従来型個室
従来型個室は、完全な個室として1人1部屋が与えられる居室タイプです。最大の特徴は、プライバシーが十分に確保できる点です。持ち込み家具の配置も自由度が高く、これまでの生活スタイルを維持しやすいという利点があります。
一方で、居室とは別にリビングや食堂、浴室などの共用スペースが設けられているため、生活動線が長くなりがちです。また、介護スタッフの目が届きにくいというデメリットもあり、見守りが必要な方には注意が必要です。費用面では4つの部屋タイプの中で中程度の価格帯となっており、プライバシーを重視しつつも費用を抑えたい方に適しています。
従来型多床室
従来型多床室は、2〜4人ほどが1つの居室で生活する形態です。リビングや食堂、浴室などの共用スペースは別の場所に設置されており、「集団ケア」により介護サービスが効率的に提供されます。
費用面では4つの部屋タイプの中で最も安価であり、経済的な負担を抑えたい方に向いています。また、複数の入居者が同じ空間で生活するため、自然と会話が生まれやすく、孤独を感じにくいという利点もあります。ただし、プライバシーの確保が難しく、他の入居者との相性によっては生活しづらさを感じる可能性もあります。生活音や就寝時間の違いなどにも配慮が必要です。
ユニット型個室
ユニット型個室は、介護施設をより家庭的な環境に近づけた「ユニットケア」を採用したタイプです。通常10人程度の小規模なグループ(ユニット)を作り、それぞれのユニットにリビングダイニングを配置。その周りを個室が囲むような設計となっています。
最大の特徴は、完全個室でプライバシーを確保しながら、共用スペースでの交流も自然に生まれる点です。自宅のような環境で、必要に応じて他の入居者やスタッフと関わることができます。また、少人数単位でのケアのため、入居者一人一人の生活リズムや習慣に合わせたきめ細かいサービスを受けられます。ただし、4つの部屋タイプの中で最も費用が高くなる傾向にあります。
ユニット型個室的多床室
ユニット型個室的多床室は、大きな居室をパーテーションで区切り、個室空間を疑似的に作り出したタイプです。ユニットケアの考え方を取り入れながら、建築コストを抑えることで、比較的手頃な料金設定を実現しています。
仕切りによって一定のプライバシーは確保できますが、完全な個室ではないため、音や気配が伝わりやすいという特徴があります。また、パーテーションの配置によっては居室の形が不規則になったり、採光が十分でない場所が生じたりする可能性もあります。費用面ではユニット型個室より低めですが、従来型の2タイプより高めとなっています。
老人ホームの部屋タイプ別費用相場
老人ホームの費用体系は複雑で、多くの方が理解に苦慮されています。費用は大きく分けて、居住費、食費、介護サービス費の3つから構成されており、特に居住費は部屋タイプによって大きく変わります。
また、入居者の要介護度によっても総額が変動します。ここでは、各部屋タイプの費用について、要介護度別の詳細な内訳を見ていきましょう。
従来型個室は9.7万円~10.6万円
従来型個室は、プライバシーが確保できる一方で、比較的手頃な価格帯に設定されているのが特徴です。居住費は月額3万6,930円と、ユニット型と比べると低めです。以下が具体的な費用の内訳です。
費用項目 | 要介護度1 | 要介護度2 | 要介護度3 | 要介護度4 | 要介護度5 |
居住費 | 36,930円 | 36,930円 | 36,930円 | 36,930円 | 36,930円 |
食費 | 43,350円 | 43,350円 | 43,350円 | 43,350円 | 43,350円 |
介護サービス費 (1割) |
17,670円 | 19,770円 | 21,960円 | 24,060円 | 26,130円 |
合計 | 97,950円 | 100,050円 | 102,240円 | 104,340円 | 106,410円 |
従来型多床室は8.8万円~9.7万円
4つの部屋タイプの中で最も経済的なのが従来型多床室です。複数人での共同生活となりますが、その分居住費を抑えることができます。特に経済的な事情で施設選びを検討されている方におすすめのタイプです。
費用項目 | 要介護度1 | 要介護度2 | 要介護度3 | 要介護度4 | 要介護度5 |
居住費 | 27,450円 | 27,450円 | 27,450円 | 27,450円 | 27,450円 |
食費 | 43,350円 | 43,350円 | 43,350円 | 43,350円 | 43,350円 |
介護サービス費 (1割) |
17,670円 | 19,770円 | 21,960円 | 24,060円 | 26,130円 |
合計 | 88,470円 | 90,570円 | 92,760円 | 94,860円 | 96,930円 |
ユニット型個室は12.5万円~13.4万円
最も居住環境が充実しているユニット型個室は、費用も高額となる傾向があります。ただし、その分きめ細やかなケアと快適な居住環境が保証されます。以下が月額費用の内訳です。
費用項目 | 要介護度1 | 要介護度2 | 要介護度3 | 要介護度4 | 要介護度5 |
居住費 | 61,980円 | 61,980円 | 61,980円 | 61,980円 | 61,980円 |
食費 | 43,350円 | 43,350円 | 43,350円 | 43,350円 | 43,350円 |
介護サービス費 (1割) |
20,100円 | 22,200円 | 24,450円 | 26,580円 | 28,650円 |
合計 | 125,430円 | 127,530円 | 129,780円 | 131,910円 | 133,980円 |
ユニット型個室的多床室は11.5万円~12.3万円
ユニット型のケア環境を維持しながら、建築コストを抑えることで、標準的な価格帯を実現したのがこのタイプです。以下が具体的な費用の内訳となります。
費用項目 | 要介護度1 | 要介護度2 | 要介護度3 | 要介護度4 | 要介護度5 |
居住費 | 51,840円 | 51,840円 | 51,840円 | 51,840円 | 51,840円 |
食費 | 43,350円 | 43,350円 | 43,350円 | 43,350円 | 43,350円 |
介護サービス費 (1割) |
20,100円 | 22,200円 | 24,450円 | 26,580円 | 28,650円 |
合計 | 115,290円 | 117,390円 | 119,640円 | 121,770円 | 123,840円 |
このように、部屋タイプによって居住費に大きな差があることがわかります。
また、要介護度が上がるにつれて介護サービス費が増加し、それに伴い総額も上昇していきます。施設選びの際は、現在の要介護度だけでなく、将来的な介護度の変化も考慮に入れて検討することをおすすめします。

老人ホームの居室面積基準
快適な生活を送るためには、適切な居室面積の確保が不可欠です。各種老人ホームには、入居者の生活の質とケアの質を保証するため、法令で定められた最低限の居室面積基準があります。以下の表で、施設種別ごとの基準をご確認ください。
施設種別 | 居室面積基準 |
養護老人 ホーム |
1人当たり10.65㎡以上 |
軽費老人 ホーム |
個室21.6㎡以上 (有効面積14.85㎡以上) |
有料老人 ホーム |
1人当たり13㎡以上 |
サービス付き 高齢者向け住宅 |
25㎡以上 (共用部分がある場合18㎡以上) |
認知症高齢者 グループホーム |
7.43㎡以上 |
障害者 グループホーム |
7.43㎡以上 (収納設備等を除く) |
これらの基準はあくまでも最低限の要件であり、実際の施設ではより広い居室が提供されることも多くあります。特に有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、居住性の向上のために基準を大きく上回る広さを提供している施設も少なくありません。
老人ホームの部屋タイプで確認すべきポイント
老人ホームの部屋を選ぶ際は、さまざまな角度からの検討が必要です。入居者の身体状況や生活習慣はもちろん、介護のしやすさ、プライバシーの確保、設備の充実度など、確認すべきポイントは多岐にわたります。また、現在の状態だけでなく、将来的な身体状況の変化も考慮に入れる必要があります。
ここでは、老人ホームの部屋選びで特に重要となる以下の7つのポイントについて、詳しく解説していきます。
- ・居室の広さ
- ・居室設備
- ・居室内の動線
- ・日当たりや防音性
- ・ヘルパー・ナースコールの位置
- ・夫婦での入居
居室の広さ
居室の広さは入居後の生活の質を大きく左右する重要な要素です。広すぎても狭すぎても快適な生活は送りにくく、入居者の身体状況に合わせた適切な広さを選ぶことが重要です。
特に車いすを利用する方の場合、転回スペースとして直径1.5メートル程度の空間が必要となり、介助者が付き添うスペースも考慮しなければなりません。
また、介護ベッドなどの福祉用具の設置スペースや、収納スペースも必要です。一方で、歩行が不安定な方の場合、広すぎる居室は転倒リスクを高める可能性があります。福祉用具の手すりなどの設置が必要な状況も多いため、体の状態によっては広い部屋の場合に転倒リスクが高くなることもあります。
実際の見学時には、カタログやパンフレットに記載されている面積が実際の有効面積と異なる場合もあるため、家具のレイアウトをイメージしながら確認することをおすすめします。
居室設備
居室内の設備は、入居者の生活の質と安全性に直結する重要な要素です。特に以下のポイントを意識して確認しましょう。
- ・トイレや洗面所の有無と広さ
- ・エアコン等の空調設備
- ・収納スペースの容量
- ・緊急通報装置の設置位置
- ・照明の明るさと配置
- ・コンセントの数と位置
特にトイレの位置は重要です。居室内にトイレがある場合、夜間の移動負担が軽減され、プライバシーも保ちやすくなります。一方で、メンテナンスコストや緊急時の対応なども考慮が必要です。
収納スペースは、持ち込む荷物の量に応じて十分な容量があるか確認しましょう。緊急通報装置は、トイレ内や寝室など、複数箇所に設置されていることが望ましいです。
照明は、夜間でも安全に移動できる明るさが確保されているか、特にトイレ周りの照明配置に注意が必要です。コンセントの数と位置も、電動ベッドや医療機器の使用を考慮して確認しましょう。設備の使いやすさは、実際に現地で操作して確認することをおすすめします。
居室内の動線
高齢者が安全に移動できる動線設計になっているかの確認が重要です。特にチェックすべきポイントは以下の通りです。
- ・ベッドからトイレまでの距離と経路
- ・車いすでの転回スペース
- ・手すりの設置位置と数
- ・段差の有無
- ・扉の開閉方向と幅
- ・家具配置のしやすさ
まず重要なのが、ベッドからトイレまでの距離と経路です。夜間のトイレ利用時の安全性を考慮し、できるだけ短い距離で、かつ障害物のない経路が確保されているかを確認しましょう。
車いすを使用する場合は、各所に十分な転回スペースがあるかどうかが重要です。手すりは、歩行時の支えとなる位置に適切に設置されているか、連続性があるかを確認します。また、居室内の段差の有無、扉の開閉方向と幅なども重要なポイントです。
特に車いす使用時は、扉の開閉に必要なスペースも考慮に入れる必要があります。家具の配置によって動線が確保できるか、実際に歩いてみて確認することをおすすめします。入居者の身体状況の変化も考慮し、将来的な福祉用具の導入にも対応できる設計になっているかも重要なポイントです。
日当たりや防音性
日当たりの良さは、身体的にも精神的にも健康に影響を及ぼすため重要です。自然光には以下のような効果があります。
- ・体内時計の調整
- ・ビタミンDの生成促進
- ・気分の改善
- ・睡眠の質の向上
日当たりの良さは、体内時計の調整やビタミンDの生成を促進し、気分の改善や睡眠の質の向上にも寄与します。窓の向きや大きさ、カーテンの遮光性なども確認しましょう。
一方、防音性については、完全な防音は必ずしも望ましくありません。特に要介護度の高い方の場合、ある程度音が通る方が安全管理の面で適している場合もあります。
他の入居者の生活音が気になりすぎない程度の遮音性があるか確認が必要です。特に夜間の安眠のために、廊下やナースステーションからの音、エレベーターの音などにも注意を払いましょう。
また、季節による日照時間の変化や、周辺環境からの騒音なども考慮に入れて選択することが重要です。
ヘルパー・ナースコールの位置
緊急時の安全確保のため、ナースコールの設置位置は特に重要です。以下の状況でも確実に呼び出しができるか確認しましょう。
- ・ベッドに寝ている時
- ・トイレを使用している時
- ・居室内での転倒時
- ・車いす使用時
寝室はもちろん、トイレ内や浴室などは、居室内の複数の箇所に設置されているかどうかが重要です。特に注意すべきは、ベッドに寝た状態、トイレ使用中、居室内での転倒時など、さまざまな状況で確実に呼び出しができるかどうかです。
車いす使用者の場合は、座った状態での操作のしやすさも確認します。また、コールを押した後の職員の応答時間や、夜間の対応体制についても確認が必要です。
入居者の身体状況に応じて、押しボタン式以外のコール(引っ張り式、センサー式など)の導入が可能かどうかも確認しておくと良いでしょう。緊急時の迅速な対応のために、ナースステーションからの距離や見守りのしやすさも重要な選択基準となります。

夫婦での入居
夫婦での入居を希望する場合は、以下の点を事前に確認することが重要です。
- ・夫婦部屋の有無
- ・部屋の広さと設備
- ・追加費用の有無
- ・それぞれの介護度に対する対応
- ・一方の容態が変化した場合の対応方針
夫婦で入居する場合、それぞれの介護度や医療ニーズに応じた対応が可能かどうかの確認が重要です。また、将来的な状態変化に備えて、施設の対応方針を事前に確認しておくことをおすすめします。
近年は夫婦での入居ニーズが増加傾向にあり、施設側も柔軟な対応を検討しているケースが増えています。同じ施設内の別フロアや、近接する別施設の利用など、さまざまな選択肢を検討することも有効です。
まとめ
老人ホームの部屋を選ぶにあたっては、入居者の身体状況、生活習慣、経済状況など、さまざまな要素を総合的に考慮する必要があります。プライバシーを重視するなら個室タイプ、人との交流を大切にしたい場合は多床室タイプ、その両方のバランスを取りたい場合はユニット型が適しています。
また、現在の身体状況だけでなく、将来的な変化も見据えた選択が重要です。入居前には必ず実際に見学し、可能であれば体験入居も利用して、生活のイメージを具体的につかむことをおすすめします。
契約前には重要事項説明書をよく確認し、不明な点は施設のスタッフに積極的に質問することで、入居後のミスマッチを防ぐことができます。家族との話し合いを十分に行い、入居者本人の希望を最大限尊重した選択をすることが、快適な施設生活への第一歩となります。
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